随意契約とプロポーザル方式-入札制度の話(1)

 今回の議会では契約案件が2件。

議案54号 工事請負契約の締結
議案55号 物品購入契約の締結

 これらはいずれも「丹波市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」に基づいて提案されるものです。
 以前「議会に付さなくてはならない事件たち-事故繰越しの話も少し-」で紹介したように、市が以下の行為を行うにあたっては議会の議決が必要と条例で定めています。

  • 1億5,000万円以上の請負契約
  • 2,000万円以上の財産取得

 議案54号は市立北小学校の北校舎長寿命化改良工事で3億6,250万円の請負契約、議案55号は情報系パソコン等の購入で2,180万円ということで、それぞれ議決対象になっているものです。

そもそも入札制度とは

 地方自治体が何かの契約を締結をするとき、どのようなルールがあるのでしょうか。

 大原則は、地方自治法第2条の14項です。

第2条 地方公共団体は、法人とする。
(中略)
14 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

 その上で、契約について次のように定められています。

第234条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札指名競争入札随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
(以下略)

 せり売りは例えば公用車の買い替えによって不要な車が出てきたらオークションにかけたりするようなケースですね。
 なので、市から仕事を発注するときは、次の3種類の方法のいずれかによります。

  • 一般競争入札
    条件に合うすべての事業者が参加できる形式。
  • 指名競争入札
    丹波市が指定した事業者だけが参加できる形式。
  • 随意契約
    入札によらずに事業者と契約する形式。

 先に紹介した地方自治法234条の条第2項を読む限り、通常は一般競争入札によるという前提で、政令で定めた場合に該当するときは指名競争入札や随意契約によることができると。
 じゃあ、どのような場合に指名競争入札や随意契約が認められているのか。

 それを明らかにする政令が、「地方自治法施行令」です。
 長くなりますが、細かに規定されているので、引用します。

指名競争入札
第167条 地方自治法第234条第2項の規定により指名競争入札によることができる場合は、次の各号に掲げる場合とする。
一 工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適しないものをするとき。
二 その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき。
三 一般競争入札に付することが不利と認められるとき。
随意契約
第167条の2 地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
一 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。
二 不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
三 (障がい者支援施設やシルバー人材センター等列記)
四 新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところにより普通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品として生産する物品を当該認定を受けた者から普通地方公共団体の規則で定める手続により買い入れ若しくは借り入れる契約又は新役務の提供により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところにより普通地方公共団体の長の認定を受けた者から普通地方公共団体の規則で定める手続により新役務の提供を受ける契約をするとき。
五 緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
六 競争入札に付することが不利と認められるとき。
七 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
八 競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。
九 落札者が契約を締結しないとき。

 なお、国による契約の場合は、「予算決算及び会計令」第99条で随意契約ができる場合の金額を定めており、地方自治体の場合と根拠法が異なります。

随意契約に関する規定

 さて。入札制度について整理するにあたって、先に例外である「随意契約」を片付けておきましょう。

 民間企業の場合だと、複数社から相見積を徴取して、その中から最も安い事業者と契約したり、あるいは複数社から提案を受けてもっとも内容が優れた事業者と契約したりしますね。
 こうした手法を「随意契約」と言います。

 入札と比べて事務は軽減されますし、メリットのある方法ではあります。しかし一方で、契約の透明性の確保が課題になる。
 先に紹介した地方自治法施行令第167条の2に該当するものであれば随意契約が可能ですが、原則は一般競争入札。例外として認める場合を列記したのが、この条文です。

 丹波市の場合、「丹波市財務規則」第7章が契約についての諸規定です。その中で随意契約ができる場合を定めています。
 前述の地方自治法施行令で随意契約について「普通地方公共団体の規則で定める額を超えないもの」と規定がありましたが、これを受けた規則です。

第88条 政令第167条の2第1項第1号に規定する随意契約を行う場合の予定価格の限度額は、次の各号に掲げる契約の種類に応じて、当該各号に定める額とする。
(1) 工事又は製造の請負 130万円
(2) 財産の買入れ 80万円
(3) 物件の借入れ 40万円
(4) 財産の売払い 30万円
(5) 物件の貸付け 30万円
(6) 前各号に掲げるもの以外のもの 50万円

  少額の場合は随意契約を可能としているわけですね。なのでこれに基づく契約は、少額随意契約と呼ばれます。

 ただし、「丹波市随意契約取扱要綱」において、この金額を超える場合でも、「丹波市工事事業者等入札参加者審査会」の審査を受ければ、随意契約が可能としています(「丹波市工事業者等入札参加者審査会設置要綱」参照)。

 その上で、「丹波市随意契約取扱要領」において、審査会の必要が無い随意契約の種類が列記されています。
 たとえば国や他の自治体との契約とか、法律で決められた公益法人等との契約とか、土地や美術品の買い入れとか、情報機器の保守管理など、相手方が1者に限定されるような場合がそれです。
 こうした相手方が1者しかないものは、特命随意契約と呼ばれます。

 そのほか、物品の購入については「丹波市物品購入事務取扱要綱」において随意契約の基準が示されています。
 相手方が公共団体の場合とか、独占販売されている場合とか、書籍のように定価が決まっている場合とか、5万円以下のものとかですね。

 ちなみに、そもそも「物品」って何、なんて疑問を持たれた方は、以前のエントリー「電子マネーは物品か?論争」を読んでみていただければ。

随意契約ってどんなときに利用されている?

 丹波市がどのような随意契約をどの事業者と行っているかは、ホームぺージ「随意契約の状況」にて月ごとに公表されています。

 令和5年度だと、4月72件、5月14件、6月13件、7月7件、8月11件。
 思ったより多いですね。随意契約の理由についても記されています。

 例えば「地方自治法施行令第167条の2第1項第5号」としてデマンド型乗合タクシーの車両を購入されています。第5号といえば「緊急の必要により」ですね。
 事故でもあって買い替えを迫られたというなら分かりやすいですが、3台の購入となっています。さて、どんな緊急性だったのかな。

 ほか、「地方自治法施行令第167条の2第1項第2号」を理由とするものが多いです。「性質又は目的が競争入札に適しない」ものですね。いくつか拾ってみましょうか。

  • 産業交流市の開催を「丹波GOGOフェスタ実行委員会」に委託
  • 基幹系システム機器更新に伴うデータ移行を、基となるシステムを導入した業者に頼む
  • Jクレジットプロジェクト計画書の作成を「ひょうご森林林業協同組合連合会」に頼む
  • 古文書調査を神戸大学に委託する

 などなど。
 あと、4月は飛びぬけて多いですよね。

 これ、システムの保守とか、施設の運営管理とか、4月1日ピッタリから始めなくてはならないものが多いからです。
 1者随契も多いですが、中には相見積されているものもありますね。

 自治体の会計年度は4月1日から。といって、そこから入札手続きをしていたのでは、4月1日からスタートできない。
 そういうものについては、相見積など準備行為は先にしておいて、4月1日に随意契約によってスタートするってことになってるんですね。

 まあ、本来的には、「繰越明許費そして債務負担行為」で紹介した「債務負担」によって先に予算を確保しておけば、年度が始まる前に入札行為をできるのですけどね。

プロポーザル方式という随意契約

 また、さらに特殊な手法として、「プロポーザル方式(企画競争入札)」という方法があります。
 これは、業務委託契約において用いられるもの。

 プロポーザル方式というのは、複数の事業者から、当該委託契約についてのヒアリングまたはプレゼンテーションを求め、提案された内容を審査・評価し、最終的に金額の安さではなく提案の質で事業者を選定する方法です。
 従って、募集にあたって、あらかじめ委託上限額を示し、その金額の範囲内で提案を求めるケースがほとんどです。たとえば今年度募集されている「丹波市公式ホームページリニューアル業務」の公募型プロポーザルだと、税込1,600万円の委託上限額を示し、仕様や評価基準を示した上で公募されています。

 先ほども述べましたが、プロポーザル方式を採用できるのは業務委託契約のみ。いわゆる工事等の請負は含みません。
 ただし、建物の場合も、基本設計から入る場合、その部分は業務委託契約となります。従って、建物の基本設計についてのプロポーザルを求めることは可能です。

 「丹波市プロポーザル方式実施取扱要綱」に次のような業務を対象とすることが定められています。

第3条 プロポーザル方式の対象となる業務は、次に掲げる業務のうち受託候補者の能力、技術、実績等により履行内容、履行方法等に顕著な差異が現れる業務又は仕様書で具体的な契約内容を規定することが困難な業務を対象とする。
(1) 高度又は専門的な技術が求められる業務
(2) 専門的な知識又は経験が求められる業務
(3) 大規模かつ複雑で複数の分野に及ぶ業務
(4) 象徴性、記念性、芸術性又は創造性が求められる業務
(5) その他プロポーザル方式により受託候補者を特定することが適当と認める業務

 市を取り巻く課題が複雑化し、民間の知恵を取り入れなくてはならない現在において、このプロポーザル方式が果たす役割は大きさを増していると言えます。

 入札制度の話、競争入札については「予定価格と最低制限価格を決める-入札制度の話(2)」に続きます。

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