新実存主義

 ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエルの著作。『なぜ世界は存在しないのか』で一躍有名になりました。  前著で「世界」をとりあげたガブリエルが『新実存主義』で取り上げるのは「心」。正直、ぼくにとって彼の文章はすっきり筋が通っているとは思えず難渋しました。  それ 続き …

暇と退屈の倫理学

 コロナ禍。  ステイ・ホームに伴い自由にできる時間が増えたと感じていらっしゃる人も多いのではないか。 暇はある。それを退屈と感じる人もいるだろう。気晴らしにゲームということで、関連企業の株価はあがっている。  全国的な自粛期間中、自殺者数が減ったという統計も 続き …

多数決を疑う

 社会的選択理論という学問分野があります。何かを決定しようとするとき、どのような決定方法がいいかということを研究する分野です。  ABCの3人から1人を選ぶとします。どんな方法をとりますか?  簡単なのは1名だけ書いて投票してもらう方法。10人が投票してAさん 続き …

誰も農業を知らない

 本書を通してあらためて考えるようになったのは次のようなことだ。 有機農業はライフスタイルとしてとらえた方がいい 家族農業を応援することも農業の効率化に欠かせない  詳細は後ほど述べるとして、この二点は丹波市の現状に即しても深めていけそうなポイントである。   続き …

ポピュリズムとは何か

 ポピュリズムとは何かと聞かれて、どう答えよう?  大衆の人気をとる政治家といった印象でしか答えられない。大衆の声を反映するのであれば、それもまた民主主義といえるだろうか。  本書においてヤン=ベルナー・ミュラーは、それを真っ向から否定している。ポピュリズムは 続き …

共同体の基礎理論―自然と人間の基層から―

近代化のなかで「共同体」は解体すべき対象であったという、「まえがき」でも述べられている視座が、本書の確かな土台となっている。 その「共同体」が今、あらためて未来へ向けた可能性として期待されている。この期待を語るとき、ぼくたちは安易に「人間関係(縁)」「思いやり 続き …

20世紀ファッションの文化史―時代をつくった10人

楽しく、かつ刺激的な一冊。 ファッション業界に限らず、およそクリエイティブに関わっている人であれば、インスパイアされる箇所が多いことだろう。 あるものごとの歴史を取り上げるにあたって、人に焦点をあてるアプローチがある。このコーナーでとりあげてきた本の中でなら、 続き …

第三の消費文化論―モダンでもポストモダンでもなく

ポストモダン消費論、というのがあった。 1980年代から盛んに言われるようになった。当時日本でもブームになった記号論など、ポストモダン思想の見方を用いて消費を分析する見方だ。 間々田さんは、ポストモダン的文化の内容について、その特徴を次の3点にまとめている。 続き …

流線形シンドローム―速度と身体の大衆文化誌

こういう切り口があったか。みごとな文化論。 流線形、streamline。今でこそ何気なくつかっているこの言葉の誕生と流行を追っている。副題にあるように、もともとは「速度」に関連した物理用語であったものが、身体性を持ち、政治的な力さえ持つようになった。 嚆矢と 続き …