6月議会が始まりました。初日は報告3件、議案10件が上程されました。
提案説明を含めて1時間ほどで終了、付された事件がいつもより少ない印象です(昨年の6月が15議案ほど)。
「事件」なんていうと大げさですが、地方自治法で使われている議会用語です。
議員になっての初議会、この言葉に驚きました。議員1期目に新鮮な目で記した「議会では「事件」が起こっている!」を読み返しつつ、あの時は別の意味で「事件」のオンパレードだったなぁと振り返っています。
議会での議決事項は地方自治法で定められている
何を議会に付すか、市の執行部はどのように決めているのでしょうか。議員としてもその議案が議会で扱うべきものか意識しなくてはなりません。
つい昨年には、提出された議案が議決対象か議論になったこともあります(「電子マネーは物品か?論争」参照)。
議会での議決事項は、まず第一に、地方自治法で定められています。
第96条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
1 条例を設け又は改廃すること。
2 予算を定めること。
3 決算を認定すること。
4 地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
5 条例で定める契約を締結すること。
(以下略)
全部で15項目あり、他には「負担付きの寄附または贈与を受けること」「重要な公の施設を長期かつ独占的な利用をさせること」「訴訟や和解」などが含まれます。
その上で同条第2項で、次のように定めています。
普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件につき議会の議決すべきものを定めることができる。
地方自治法第96条2項
これに基づき丹波市では「丹波市議会の議決に付すべき事件に関する条例」で次の5項目について、議会の議決が必要であると定めています。
- 市民憲章の制定又は改廃に関すること。
- 市の花及び市の木の制定又は改廃に関すること。
- 姉妹都市又は友好都市の提携又は解消に関すること。
- 基本構想及び基本計画の策定、変更又は廃止に関すること。
- 前号に掲げるもののほか、市行政の各分野における政策、施策の基本的な方向を定める計画及び指針で、議会が必要と認めるものの策定、変更又は廃止に関すること。
また「丹波市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」で次の2項目を議決事件と定めています。
- 1億5,000万円以上の請負契約
- 2,000万円以上の財産取得
今回の議案では、次の議案が契約金額4,274万円で、2,000万円以上とされている規定に基づく提案です。
議案57号 消防団ポンプ自動車購入契約の締結
地方自治法では、第96条以外の条文でも、自治体の境界(9条)や議員定数(91条)、指定管理者の指定(244条2)など、個別に議決を求める条文が含まれています。
今回で言えば、地籍調査の結果、字名が入り組んでいるのを解消し、錯雑地の解消を図る次の議案。
議案59号 字の区域変更
これは、地方自治法にある次の条文に基づきます。
第260条 市町村長は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、市町村の区域内の町若しくは字の区域を新たに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、当該市町村の議会の議決を経て定めなければならない。
法律の定めによる繰越金の報告
議決を必要とする議案のほか、法律で議会に報告をするように定められているものもあります。
これらについては、本会議での報告の後、直ちに質疑を行います。委員会に付託されたり議決したりということはありません。
今回議会に提出された報告は繰越明許計算書です。毎年6月議会で報告されています。
一般会計及び特別会計分と、公営企業分があります。
前者は地方自治法施行令第146条第2項に基づいて、後者は地方公営企業法第26条3項に基づいて行われます。
第146条2項 普通地方公共団体の長は、繰越明許費に係る歳出予算の経費を翌年度に繰り越したときは、翌年度の5月31日までに繰越計算書を調製し、次の会議においてこれを議会に報告しなければならない。
地方自治法施行令
第26条3項 前二項の規定により予算を繰り越した場合においては、管理者は、地方公共団体の長に繰越額の使用に関する計画について報告をするものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。
地方公営企業法
繰越明許費については、以前のエントリー「繰越明許費そして債務負担行為」をご参照ください。
確保した予算を翌年度に繰り越す場合は、もとより予算書に「繰越明許費」と記載され議会として議決しています。しかしあくまで予算ですから、年度があらたまった段階で実際にいくら繰り越したかを議会に報告しなさいということです。
正確な額は決算でも分かるわけですが、会計が締まった段階ですぐに報告しなさいというのは、やはり自治体会計が基本的には単年度会計であり、繰越というのは特別な(といっても利用すべき)ものという性格ゆえでしょうか。
報告の様式は以下のような内容です(抜粋)。
今回の丹波市の一般会計では、令和2年度から3年度に繰り越される額は合計で16億7,803万円です。昨年度は21億、一昨年度が31億でした。年間予算の5%程度といったところでしょうか。
災害復旧工事など土木系の事業が継続する場合はどうしても額が膨らみます。年々減ってきているのは、ハード系の事業が徐々に落ち着いてきているからと言えそうです。
公営企業というのは、独立採算で運営される会計です。税金を投入せずその事業の収入で支出を賄うということですね。丹波市では上下水道事業や市営駐車場事業などがそれにあたります。
水道事業で8,450万円、下水道事業で3億7,500万円。それぞれ繰り越されました。
事故繰越しというレアケース
繰越の報告に関連して、ごくまれに「事故繰越」というのがあるので触れておきます。
これは、何らかの事情により繰越明許費として議決を得られないまま繰り越さざるを得なかった予算を言います。
事故というのは災害による中断などよほどの事態かつ議会の議決が間に合わない時期ということになるので、めったにお目にかかることはありません。
ぼくも見た記憶がありません。
調べてみると、丹波市では合併後16年間で2度だけのようです。
1度は平成23年。この時は東日本大震災によって罹災した製造元からの資材が入らず、改修工事が完了できなかったため、事故繰越されました。
また平成28年には、災害復旧工事を行っていたところ、工事用道路が新たな大雨で崩落し、その復旧工事が追加となったため年度末に工事を完了できなかったという事情から事故繰越されました。この時は、増額になった工事契約額から、前金払い及び年度末での出来高払い分を除いた額が事故繰越とされました。
根拠になっているのは、地方自治法の予算の執行に関する次の条文です。話は違いますが、「項」の中では流用は認められているんだ、なんて発見も。
第220条 普通地方公共団体の長は、政令で定める基準に従つて予算の執行に関する手続を定め、これに従つて予算を執行しなければならない。
地方自治法
2 歳出予算の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互にこれを流用することができない。ただし、歳出予算の各項の経費の金額は、予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより、これを流用することができる。
3 繰越明許費の金額を除くほか、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。ただし、歳出予算の経費の金額のうち、年度内に支出負担行為をし、避けがたい事故のため年度内に支出を終わらなかつたもの(当該支出負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に基づきこれに関連して支出を要する経費の金額を含む。)は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。