議会では「事件」が起こっている!

今回の「議会では『事件』が起こっている!」というタイトル、釣りじゃないんです。といって、誰も殺されていませんし、窃盗があったわけでもありません、もちろん。
ぼくも驚いたのですが、初議会最終日、本会議を閉じるにあたっての議長の言葉です。

「本定例会に付された事件は、すべて終了いたしました。」

わぉ、「事件」。サスペンスドラマの見すぎでしょうか、事件というとおどろおどろしく感じてしまうのですが、まあ、「事柄(ことがら)」くらいの意味ではあります。議会に諮られる議案はもちろん、承認案件なども含め、すべてが「事件」です。

考えてみれば、議会に付された時点で、それは日常の出来事ではなくなっているわけで、確かに「事件」と表現しておかしくはないですね。
法令用語では住民票の請求なども「事件」というそうです。たとえそれが住民票一枚のことであっても、市民からの請求は官公庁にとって大切に解決せねばならない事柄であるってことですね。

地方自治法の第96条にあたってみると、次のように書かれていました。

第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一 条例を設けまたは改廃すること。
二 予算を定めること。
三 決算を認定すること。
(以下十五までありますが略します)

つい「解決しなければならない」と空目してしまいますね。
ともあれ議員として、名探偵以上に慎重に証拠を吟味し解決に当たらねばならないと、そんなことを考えたりもしたことでした。ベネディクト・カンパーパッチに負けるな。次回からはベレー帽にフロックコートで臨みますかね(臨みません)。

それにしても今回の本会議。新人としての初めての議会ではあったのですが、ほんといろんな「事件」に遭遇しました。事務局いわく、「これほどいろいろあることは珍しい」とのことで。
探偵小説風に振り返ってみましょうか。

いきなりの動議のナゾ
初会議初日。最年長の議員が臨時議長として席につき、通常はそのまま議長選挙に入るのですが、ここで動議、本会議を暫時休憩して、議員総会が開かれました。「議長の選び方、そして丹波市議会初の議長選立候補者所信表明はこうして実現!」で述べましたが、議長選に立候補される方の思いを聞きたいという声を受けてなされた、今回限りの名解決でした。
消えた議案のナゾ
議案第133号として提出された議案が取り下げられました。議会用語でいえば「事件の撤回」です。後日、同様の主旨の議案が新たに議案第146号として提案されました。定住促進住宅の設置に関する条例だったのですが、住宅の場所も家賃も条例に記されていないことが提案後問題視され、加筆の上、再提案されたものです。家賃などは市民に重要な要件です。これを議会のチェックなく定める仕組みにするのは本来避けるべきということです。
議案訂正のナゾ
前述の定住促進住宅に関する条例、再提出されたのはいいですが、条文に誤記があるというなんともな不始末。しかし委員会での審議は終了しています。仮に審議しなおすなんてことになれば、「一事不再議」という、同じ議案を同一会期中に二度は審議や議決をしない基本原則に反するのではないかという心配もありましたが、本会議での議決はまだでしたので、まず訂正を承認して本会議で議決するという流れで対応できました。議会用語でいえば「事件の訂正」です。
延びた会期のナゾ
今回の初議会、当初の会期は1月18日(水)まででした。しかしご存知の通り、16日(月)は22年ぶりの豪雪。市内の交通網が閉ざされるなかで、丹波市当局もその対策が優先。そこで当日の午前中は定足数の議員が揃ったところでいったん開会し休憩を宣言、午後から再開することにしました。これを受けて、18日(水)の本会議で会期を延長し19日(木)までとすることが承認されました。
決議提出のナゾ
今回の議会では、「市の事務執行に対し猛省を促す決議」という決議を可決しました。前述のように事件の撤回や訂正が相次いだものですから、丹波市当局に対し、しっかり業務にあたりなさいと促すものです。通常の議会審議は、丹波市当局が提案した議案を審議します。「丹波市としての意思決定」の可否を判断するものですね。それに対し今回の決議は、丹波市当局ではなく、議会としての考え方を示すものです。「議会では何を決めるのか、どんな規範で行動するのか」で紹介しましたが、さっそく、「市議会としての意思決定」の可否を議決する機会に遭遇しました。
否決された附帯決議のナゾ
会期が始まってから追加議案が出てきました。新病院に関する議案でした。その議案を付託された民生常任委員会からは、附帯決議をつけるよう提案されました。本来議決は可否のどちらかであり、条件をつけてはいけません。そうした中で「附帯決議」は、それでもなお議会として伝えたいことがあるときに付けるものです。法的な拘束力はありません。ただし今回の附帯決議、本会議で否決されました。付託した委員会から提案されたものでも、本会議でそのまま通るとは限らないことを知りました。

そんなわけで、今回の初議会の事件簿、主だったものをご紹介しました。

『地方議会運営事典』より。「事件」という表現と同じく、なんだか重いなあという表現は他にもありますね。「付託」もそうですし、「傍聴」なんてのも重くないですか? 「見学に来てね」くらいの方が良いかもしれません。

「議会では「事件」が起こっている!」への2件のフィードバック

  1. なお、衆議院では「案件」と普通に言うそうで、地方議会で「事件」と称しているのは、自治法で「事件」としているのを受けて、標準会議規則で「事件」としているだけのこと。両者に違いはないということですが、さて、そうなるとなんでわざわざ自治法で「事件」としちゃったのかなぁ、、、

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