繰越明許費そして債務負担行為

 12月補正予算の解説の続き、少し補足的なことを。

 自治体の予算決算を審査していると、見慣れない用語に出会います。

 ぼくが議員になって最初に見た予算書は4年前、12月議会での補正予算です。当時、「繰越明許費」と「債務負担行為」という言葉を見て「何?」と思った記憶がよみがえります。

 予算書には必ず出てくるこれらの項目。せっかくなので、おさらいしておきます。

実例で見る繰越明許費と債務負担行為

 最初に答え。「繰越明許費」というのは、当該年度内に事業が終わらず支出が翌年度になってしまう場合、その年度で確保していた予算を翌年度に繰り越しますというものです。

 一方「債務負担行為」というのは、契約は今年度中に行うけれども、実際の支出は翌年度以降に見込まれるものを、あらかじめ承認してくださいというものです。

 この12月補正では「スポーツピアいちじま整備事業」がこれらすべてに関連してあがっているので、例としてご紹介しましょう。野球場の大規模修繕です。

 実はこの事業、今年度当初予算で、以下の項目があがっていました。

・事業費(設計管理委託料) 1,240万円(ほか委員謝金や旅費等に14万円)
・債務負担行為(令和3年) 1億9,360万円

 本年度に設計を委託し、来年度に工事を行いますっていう計画ですね。ですから設計業務を発注する予算を確保するとともに、債務負担行為として来年度に見込まれる工事費をあげています。

 ところが。実際に9月に設計業務を入札にかけたところ、不調に終わったと。そこで今回の補正予算。

・事業費(設計管理委託料) 857万円
・繰越明許費 2,099万円
・債務負担行為(令和3年) 1億9,360万円=廃止

 分かりますかね。

 当初予定していた設計管理料は1,240万円でしたね。補正予算で857万円ですから、上乗せして設計管理料としては合計2,097万円の予算枠を確保。

 ただ、今からあらためて入札にかけていくことになるので、今年度事業完了は見込めません。そこで設計管理料にその他経費を少し加えた2,099万円を、実際には来年度に支出するものとして繰り越しますというのが「繰越明許費」の2,099万円です。

 そして、今年度中に契約予定だった工事については、予定が後ろずれするため、いったん「債務負担行為」から取り下げますと。

 そういうことです。

繰越明許費や債務負担行為、よくあるケース

 繰越明許費で「あるある」なのは、年度末の国の補正予算をあてこむ場合です。

 たとえば学校の修繕費用が国の補正で認められたとします。自治体では新しい年度で学校の改修を予定していたけれど、国の今年度の補正予算で認められたと。
 そうなると自治体側でも年度内の事業にしなくてはなりません。とはいえあと数ヶ月で工事をできるはずもない。そこで、予算だけは今年度の補正予算で確保し、同時にそれを繰越明許費にあげて翌年度の支出にするといった対応です。

 あと、道路橋梁等の工事も、事業が完了せず繰越明許費としてあがることが多いですね。これはあまり望ましいことではありませんけれども。

 一方、債務負担行為で多いのは、たとえば4月早々から始まる事業において、契約は3月に済ませる必要があるといったケース。あるいは複数年度にわたる事業の場合です。

 たとえば今回の補正予算では以下がそれにあたります。

・現場技術業務委託料(令和3年度~令和5年度) 4,500万円

 3年間の契約を想定した債務負担行為です。

 丹波市では長く技術職の不足が言われています。建設等の図面をひいたり、工事の管理監督ができる人です。
 職員だけでは限界があるので、平成21年からは外部委託して対応していたそうです。

 でも、単年度の契約では人材の確保が安定的にできるか心もとない。そこで、設計管理事業者と3年契約を結び、1名を常時丹波市に派遣してもらえるようにすると。そういうことです。
 1年あたり1,500万円ですが、専門職ですし、派遣元の管理コストも考えると、妥当なところでしょうね。

 ともあれ。繰越明許費を見る場合は、それが妥当な理由で繰越されるているかをチェックする必要がありますし、債務負担行為の場合は、それを認めるということは予算を認めるということでもあるので、これまたしっかりチェックせねばなりません。

 繰越明許費や債務負担行為は、予算書の冒頭に、歳入歳出予算とは別建てで一覧にまとめられています。そんなところも、予算書のみどころと言えるでしょう。

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