繰越明許費計算書ってどんなもの?

 6月議会の議案解説、今回は報告事項3件、同意案件1件、議案11件です。

 報告案件については採決はありませんので、本会議で質疑のみ行われます。

 今回の報告事項は繰越明許計算書が3種類。以前「議会に付さなくてはならない事件たち-事故繰越しの話も少し-」で触れましたが、あらためて紹介します。

繰越明許費計算書ってどんなもの?

 そもそも繰越明許費って何でしょうか?

 詳しくは、以前のエントリー「繰越明許費そして債務負担行為」をご覧いただくとして、かいつまんで言うと、債務負担行為が、翌年度以降に歳出が決まっているものをあらかじめ予算として調製することに対し、繰越明許費は、その年度内に執行できなかった予算を、翌年度に繰り越すものです。

 その一覧が、「繰越明許費計算書」です。

 丹波市の報告様式は、款・項と事業名、繰越額とその財源内訳を報告するもので、令和4年度では、一般会計で合計5憶8,604万円が繰り越されています(事業費合計は6億9,601万円)。
 実際の計算書を一部抜粋して紹介します。

 この3年間で31憶、21憶、16憶と減ってきて、今年度はずいぶん少なくなりました。昨年は畜産振興事業で7憶、中学校統合事業で5憶のような大型事業がありましたが、今年はそうした大型の繰り越しは見当たりません。

繰越明許費計算書の報告を義務付ける根拠法

 繰越明許費計算書を提出することは、法律で定められています。

 一般会計の繰越明許計算書の報告は、地方自治法施行令第146条第2項に基づいて行われます。

第146条2項 普通地方公共団体の長は、繰越明許費に係る歳出予算の経費を翌年度に繰り越したときは、翌年度の5月31日までに繰越計算書を調製し、次の会議においてこれを議会に報告しなければならない。

 5月末までに予算書を調製し、次の会議で報告するということですから、通常、6月の議会に報告するということになります。

 また、公営企業については地方公営企業法第26条3項に基づいて行われます。

第26条3項  前二項の規定により予算を繰り越した場合においては、管理者は、地方公共団体の長に繰越額の使用に関する計画について報告をするものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。

 今回の場合、水道事業会計と下水道事業会計がこれにあたり、計算書が提出されました。

なぜ繰越明許費計算書の提出が求められるか?

 ところで、繰越明許計算書をこの段階で議会に提出することの意義は何でしょうか?

 確保した予算を翌年度に繰り越すことについては、前年度の補正予算段階で、「繰越明許費」と記載され議会として議決しています。
 予算書では「繰越明許費」として第2表に記載され、審査しています(第3表が債務負担です)。

 しかしこれはあくまで予算。実際にその通りだったかどうかは、確かではありません。
 今回の一般会計繰越明許費計算書だと、補正予算段階では33件の繰越明許費を可決しましたが、実際に繰り越されたのは31件でした。

 本会議質疑で問うたところ、うち1件は予定より早く執行でき、年度内に完了したとのこと。また別の1件、消防自動車の購入費の繰越明許は、その後機能面の検討をする中でメーカー側の仕様変更があり、購入を取りやめたといいます。
 結果的に、現有車両を車検に出して使い続けているようです。うーん、もしかして予算化そしてそれを繰越明許費に計上するのが拙速だったのでは? という思いもします。

 繰越明許費については、正確な額は決算でも分かるわけですが、会計が締まった段階ですぐに報告しなさいというのは、いち早いチェックをきかせるためと言えるのではないでしょうか。

 議会としても、繰り越すということは、何らかの執行上の理由があってのことですから、予算段階でもその理由を質すとしても、報告段階であらためてチェックしておくことは、迅速な執行監視につながるものと考えます。
 今回の消防自動車のような事例を明らかにすることで、行政の事務執行が適切に行われているか、確認することになります。

 そういう観点からすると、繰越明許費計算書だけではなく、それぞれの繰越理由が明確に分かった方が審査に役立ちます。
 丹波市では、今年度、下記のように繰越理由を記した審議資料が提出されました。

kurikoshimeikyo

 議会での審査にとって、一歩前進です。
 なお、この一覧の中で斜線が引かれた2件が、予算であがりつつ実際には繰り越されまなかった案件です。

 繰越明許費計算書については、以上。

残任期間を新しい教育委員で

 同意案件については、教育委員会委員の任命です。

同意29号 丹波市教育委員会委員の任命について

 教育委員については、「教育委員を選ぶときの条件」で詳しく述べました。

 今回特筆すべきこととしては、任期途中の退任でしたので、その残任期間を新しい教育委員さんにお願いするという点です。
 任期半ばでの退任。現在の教育長の姿勢に要因があるとも側聞しますが、表面上、一身上の都合と理由づけされると、踏み込めそうにありません。

 教育長とは3月議会の一般質問で教育観をやりとりしました。
 その時当方から指摘した今後の教育の姿について、真に理解いただいているか、それに伴って教育委員さんとしっかり議論をされているか、見守っていきたいと思います。

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