丹波市の地域未来投資基本計画に目を通す

 今回は「地域未来投資促進法」について紹介します。正式名称は「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」です。

 というのも6月議会に、この法律の詳細について定める「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律第二十六条の地方公共団体等を定める省令」を基にした、丹波市の「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化のための固定資産税の課税免除に関する条例」の改正案が上程されたから。

議案42号 丹波市地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化のための固定資産税の課税免除に関する条例の一部改正

 この機会に、もととなる制度も知っておこうと。

 ちなみに今回の改正は、省令の一部が改正されたことを受け、免税対象となる固定資産の取得に係る適用期限を「基本計画の同意の日から5年以内」としていたものを、令和7年3月31日までにするもの。

 後で紹介しますが、「基本計画」というのは丹波市が作成し県の同意を得るものです。同意されたのが平成30年9月27日だったので、これまではその5年後の令和5年9月27日が期限だったのですね。
 それを、同意の日を起点とするのではなく、令和7年3月31日までと時期を明記した形で改正されます。

基本にある「地域未来計画」を理解する

 では、この条例の対象となるのは、どんな施設なのでしょうか?

 まずはそもそもの基となっている「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」を理解する必要があります。

 先ほども述べましたが、これは通称「地域未来投資促進法」と呼ばれるもので、地域の特性を生かし(要件1)高い付加価値を創出し(要件2)地域の事業者に対する相当の経済的効果を及ぼす(要件3)ことで、地域経済を発展させていこうという目的を持っています。

 この法律では、各地域ごとに自治体が基本計画を作成し、それに基づいて事業者が「地域経済牽引事業計画」を作成、都道府県知事が承認する流れを規定しています。

 丹波市の基本計画は、「地域未来投資促進法「兵庫県丹波市基本計画」で公開されています。

 まず、要件の1番目「地域の特性」については、以下の4点のいずれかが条件。

  1. 医療・介護・健康産業の集積を活用したヘルスケア分野
  2. 丹波栗など特産農産物を活用した農林業・地域商社分野
  3. 電子部品・デバイス・電子回路製造業や電気機械器具製造業などの集積を活用した成長ものづくり分野
  4. 丹波大納言小豆や丹波黒大豆等の食、恐竜化石や本州一低い中央分水界等の観光資源を活用した観光分野

 要件の2番目「高い付加価値」については、1件あたり5,380万円超と定義しています。この波及効果を合わせて1.5倍の付加価値を創出する見込です。
 付加価値というのは分かりづらいですね。「経済センサス」に言う付加価値額です。

 付加価値額は、売上高から費用(売上原価+販売費及び一般管理費)を引いた上で、給与総額と租税公課分を足して計算されます。(総務省統計局「用語の解説」参照)
 丹波市の場合、医療・福祉分野で148億円、製造業で501億円、観光業で148億円です。

 「経済的効果」については、取引額の5%増加または、売上、雇用者数、給与支給額のいずれかが1%増加と定義しています。
 概要図を次に掲載します。

固定資産税の免除と地方交付税

 さて、事業者は前述の丹波市の地域未来計画に基づき、「地域経済牽引事業計画」を作成し、兵庫県から承認を受けることになります。

 ところで、仮に事業者が承認を受け、丹波市が固定資産税を免除すると、市の税収が減ることになります。
 これを防ぐのが、「地域未来投資法第26条」なのです。

第26条 地方税法第六条の規定により、総務省令で定める地方公共団体が、承認地域経済牽引事業のための施設のうち総務省令で定めるものを促進区域内に設置した承認地域経済牽引事業者について、当該施設の用に供する家屋若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税若しくは当該施設の用に供する家屋若しくは構築物若しくはこれらの敷地である土地に対する固定資産税を課さなかった場合又はこれらの地方税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が総務省令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法第十四条に規定する当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条に規定する当該地方公共団体の当該各年度における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。

地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律

 長いので読みづらいですが、要は、地方交付税を算出するための「基準財政収入額」から、固定資産税の減収分をあらかじめ控除します、ということです。

 地方交付税の算出方法については、「基準財政需要額と基準財政収入額-地方交付税はこう決まる-」で述べましたので、振り返ってみておいてください。
 基準財政収入額が減れば、その分地方交付税は上積みされます。これを保証するのが26条。

で、どんな施設が対象なの?

 そして。

 その26条が摘要される地方公共団体はどんな団体で、対象とする施設はどんな施設で、どんなケースの場合ですよというのを具体的に決めているのが、今回改正の対象となった「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律第二十六条の地方公共団体等を定める省令」です。

 たとえば財政力指数0.67に満たない市町村ですよとか(丹波市は0.43)、施設取得価額が1億円以上ですよとか、そんなことを決められています。いずれも例外規定がありますけれども。

 で、こうした法律や省令に基づいて、丹波市独自に条例を設け、地方税である固定資産税の減免を図っていると。そういうわけです。

 なお、地方自治体が独自の条例で地方税を減免できる根拠となるのは、「地方税法」第6条にある次の規定です。
 丹波市の条例も、これを根拠法として条文化されています。

第6条 地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。
2 地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。

固定資産税の賦課期日を理解する

 ところで今度の条例改正、もう一つ「制度の趣旨に鑑み、固定資産税の課税免除の対象とする年度の基準を見直すため」の改正が含まれます。

 課税免除の対象とする年度の基準見直しとのことですが、そもそも固定資産税は、どの時点の資産額を基に課税されるのでしょうか?

 答えは、1月1日です。

第318条 個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

地方税法

 その年の1月1日時点の固定資産一覧をもとに、4月1日から始まる年度の固定資産税が徴取されることになります。これは法人でも同じ。

 今回の改正では、課税免除の対象について、土地・建物とそこに設置する機械・装置を分けて記述することになりました。
 とすると、どうなるでしょうか。

 例えば10月に土地・建物を取得し、2月から機械・装置の操業を開始した場合。

 これまでなら、どちらも操業を開始してからの免税だったので、1月1日時点では稼働していない土地・建物について、初年度は課税されるわけですね(土地や建物は遊休や未稼働でも所有するだけで課税されますからね)。
 今回、それらが切り分けられたので、いずれも、新たに課税されることになった段階から3年度分、免除されることになります。

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