議会や議員とは何かがようやく法律に明記される

 令和6年4月1日から、地方自治法が改正されます。

 議会に関連するところも多いので、目を通しておきましょう。

 要点は総務省の「地方自治法の一部を改正する法律について」に分かりやすくまとめられています。
 また新旧対照表は「新旧対照表」にあるので、実際の条文はそちらを参照します。

議会とは何か、議員とは何か、がようやく明らかに

 びっくりしますよね。

 そうなんです。これまで法律上は、議会あるいは議員とはそもそも何かって書き込まれていなかったんです。
 次のように、実にそっけない記述でした。

第89条 普通地方公共団体に議会を置く。

地方自治法

 ところが近年、議員のなり手不足が言われるようになった。
 そこで、多様な人材に「議員になりたい」と思ってもらえるよう、法律上その役割を明記して、議会の重要性をみんなが認識できるようにすべきではないか。
 そんな議論があり、今回、この89条を改正し、議会や議員の役割を記すことになったのです。

 改正後の条文です。

第89条 普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもつて組織される議会を置く。
2 普通地方公共団体の議会は、この法律の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びにこの法律に定める検査及び調査その他の権限を行使する。
3 前項に規定する議会の権限の適切な行使に資するため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない。

 まず1項で議会とは「議事機関」と記しています。この項は、全体として「日本国憲法」による規定を書き直したものとなっています。

第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

(日本国憲法)

 その上で、2項がポイントですね。

 議会の役割を、「重要な意思決定に関する事件を議決」するものと規定しています。また、「検査及び調査その他の権限を行使」しますと。

 「事件を解決」と空目しないでくださいね。「事件を議決」です。
 議会での審議案件のことを「事件」といいます(議員になって初めて知って、驚いたもので「議会では「事件」が起こっている!」で記しました)。

 そして3項。議員とは、「住民の負託を受け、誠実にその職務を」行うものだと。
 じゃあ、何のために職務を行うかというと、「議会の権限の適切な行使に資するため」です。

 以前「議員報酬、多いか少ないか?」で紹介したとおり、昨今の議員は専門職的な色合いが濃くなっています。単なる名誉職ではなく、地方公共団体の重要な意思決定を担っていくものであるという自覚は、欠かせません。
 読み取るときのポイントは、「地方公共団体の」という前提との距離感ではないかとぼくは考えています。

 すなわち、二元代表制の一翼を担うものとして、地方公共団体の一部ではなく、それと並び立ち、意思決定を担い、検査・調査する権限を行使する。
 そのように重みを自覚していくことから、「議員を目指す」人が増える第一歩になるものと期待します。

請願書のオンライン提出が可能に

 今回の改正では、議会のオンライン化に関連する規定も追加されました。

 具体的には雑則として第138条の2が追加され、議会に対してあるいは議会から行われる通知を、「文書その他の人の知覚によつて認識することができる情報が記載された紙その他の有体物」だけではなく、「電子情報処理組織」を使用する方法により行うことができる、とされました。

 法律用語ですね。

 これまでの「文書その他の」から続く長い表現は、要するにリアルな紙の文書のこと。
 これからは「電子情報処理組織」です。
 組織というから機関のようなものをイメージしますが、そうではありません。

 法令内に、カッコして説明があります。
 いわく電子情報処理組織とは、「議会等の使用に係る電子計算機とその通知の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう」と。
 要はネットワークのことと理解すると良いです。

 実際に想定されるのは、議会に対する請願書の提出、及び議会から国会への意見書の提出などです。

公金の取り扱い事務を広く委託可能に

 地方自治法改正では、公金事務の委託に関して、市長の判断で広く私人委託を可能にする改正も含まれています。
 現在でもコンビニで地方税を収納する等の委託が行われていますが、これは原則禁止されている中で例外的に認められてきたものです。

 これに対して、今後、受託者に対する監督、再委託のルール等を明確にし、原則としてすべての収納事務について、市長の判断で委託を可能とするものです。

 従って、今後は税金だけではなく、入札の保証金や公営住宅の敷金、あるいは市民講座のテキスト代といったものも、コンビニ等で払えるように法律上は改正されました。

議案80号 丹波市水道事業及び下水道事業の設置等に関する条例及び丹波市長等の損害賠償責任の一部免責に関する条例の一部を改正

 上記の目的のために、地方自治法に第243条の2及び第243条の2の2から第243条の2の6が追加されるに伴い、これまで243条の2だった「(普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責)」が243条の2の7に、及び243条の2の2だった「(職員の賠償責任)」が243条の2の8にずれます。
 今般の12月議会に提出された上記の議案80号は、これらの条文を参照している丹波市の条例の該当箇所を改正するものです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください