公務員の勤勉手当は成績評価になっているか?

 地方自治法の一部を改正する法律が公布されました。
 総務省による「地方自治法の一部を改正する法律について」をもとに、議会に関連する部分については「議会や議員とは何かがようやく法律に明記される」で紹介しました。

 同資料によると、今回の改正では「会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給」も含まれていることが分かります。

 そこで丹波市でも条例を改正。

議案81号 丹波市会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例等の一部を改正

 1つの改正条例で、「丹波市会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例」「丹波市職員の育児休業等に関する条例」「丹波市企業職員の給与の種類及び基準に関する条例」の3本の条例を改正します。
 会計年度任用職員さんにとっては、ボーナスの増額につながる話ですね。

勤勉手当って何?

 ところで、勤勉手当って何でしょう。
 耳慣れない言葉ですが、公務員独特の制度。

 名前からすると、「がんばって働いたから手当をはずむよ」的なものと想像するわけですが、そして確かにそうした側面が無いではないのですが、実質的に、期末手当(ボーナス)と同様のものと考えてよいようです。

 どういうことでしょうか。

 たとえば令和4年度の丹波市職員のボーナスは給与の4.40月分ですが、次のように、期末手当と勤勉手当が一体化した支給基準になっています。

6月支給12月支給
期末手当1.20月1.20月
勤勉手当1.00月1.00月
合計2.20月2.20月

 便宜的に二つに分けられているけれど、実質的に期末と勤勉を足した月数は誰も変わらない。

 一般職の職員の給与に関する法律では、第19条の4に期末手当、第19条の7に勤勉手当が定められています。
 期末手当については特に前提なく、次のように支給日が定められているだけです。

第19条の4 期末手当は、6月1日及び12月1日にそれぞれ在職する職員に対して、それぞれ基準日の属する月の人事院規則で定める日に支給する。

 一方、勤勉手当は、「人事評価の結果」や「勤務の状況」に応じて支給されると前提が定められています。

第19条の7 勤勉手当は、6月1日及び12月1日にそれぞれ在職する職員に対し、当該職員の基準日以前における直近の人事評価の結果及び基準日以前6箇月以内の期間における勤務の状況に応じて、それぞれ基準日の属する月の人事院規則で定める日に支給する。

 念のため一般財団法人公務人材開発協会による『諸手当質疑応答集』を参照すると、次のように説明されています。

  • 期末手当
    民間における賞与のうちいわゆる一定率(額)支給分に相当する給与で、各職員の在職期間に応じて支給される
  • 勤勉手当
    民間の賞与のうちの考査査定分に相当する給与で、各職員の人事評価の結果及び勤務の状況に応じて支給される

 このように、根拠条文も、内容説明も明らかに違う。それなのに、一般的には「民間の期末手当」=「公務員の勤勉手当」なんていう風に、一体的に理解される。
 なぜだなぜだ?

勤勉さの評価方法は?

 とりあえず、勤勉手当の説明文にあった「各職員の人事評価の結果及び勤務の状況に応じて」とはどういうことか、詳しく見てみましょう。

 「人事院規則9140」では、勤勉手当を算出する際の具体的な計算方法として、「期間率」「成績率」と定められています。

勤勉手当の支給割合
第9条 給与法第19条の7第2項に規定する勤勉手当の支給割合は、次条に規定する職員の勤務期間による割合(「期間率」)に第13条及び第13条の2に規定する職員の勤務成績による割合(「成績率」)を乗じて得た割合とする。

 成績率については13条に規定されているのですが、分かりやすい表として、「国家公務員の諸手当の概要」内に、勤勉手当の成績率として下記の表が掲示されていましたのでそちらで紹介します。

 ということで一応、性格としては分かりました。
 名前の通りのことを目論んだ手当ではあるようです。

導入が難しいのはなぜ?

 歴史をたどると、東京都の「人事制度白書」の中で、「成績率」を次のように説明し、平成6年(1994年)12月期に管理職に対して導入したとあります。

成績率は、職員の勤務成績に応じて支給するという勤勉手当の趣旨に鑑み、勤勉手当の支給割合を職員の業績に連動したものとすることで、職員の士気を高揚させ、組織の活性化を図ることを目的とするものである。

第4章 現行制度の運用状況と制度的課題

 どうやらこの頃に、公務員も成績に応じた評価をしてはどうかという議論が盛り上がったようで。

 具体的な仕組みとしては、下位の減額分と全員からの一定割合供出分を原資に、上位者に配分するという設計だそうです。

 ふむ。

 先ほど紹介した国家公務員の勤勉手当表を見返しましょう。
 なるほど、一般職の場合で、「優秀」は107.5/100以上119/100未満となっている一方、「良好」で96/100、「良好でない」87.5/100以下とされています。

 加算される人があれば、減算される人がある。

 そういうことか。

 この「下位の減額分(と全員からの一定割合供出分)を原資」というところに、一般職に導入しづらい理由があるのではないでしょうか。
 差を付けようとすると、必ず減額される人が伴う

 プラス評価だけにできないのでしょうか?

 「人事院勧告とラスパイレス比較」で紹介した、人事院勧告の性格を考えると難しそうです。
 人事院勧告というのは、給与平均を足しあげた総額を公務員数で割って出した平均を、民間のそれと均衡するようにするものでした。

 プラスだけだと、給与総額が人事院勧告通り全員を揃えた場合より増えてしまいますね。そうなると、一人当たり平均が民間水準より高くなってしまいます。

 これでは、もともと民間水準に合わせることを目的にしている人事院勧告に主旨に反してしまう。なので、総額の水準を変えないため、マイナスとプラスは均衡させるほかない

 ただ、減額される方は納得できませんね。自分の落ち度じゃなく、プラスの人の原資として減額されるってことになるわけで。

 東京都でも一般職員には導入されていません。減額に納得してもらうには、客観的基準等、難易度が高いというのが、率直なところでしょう。
 管理職、あるいは専門スタッフ職などであれば、導入も可能だし進められているものの、一般職員に導入するには、難しい。

 それが、現実的には勤勉手当が期末手当と一体化して同一水準となっている理由ではないでしょうか。
 あくまで推測ですけれども。

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