ごみ袋料金引き下げ実現への道

 旧聞になってしまいましたが、半年前の3月定例会。

 市民グループから「『燃やすごみ袋』の半額化を求める請願」が提出され、審議の結果不採択。
 でも、その願いを無碍にするわけじゃない。

 議会としては「ごみ減量を進めながら市民負担の軽減を求める決議」を賛成多数で採択しました。

 この問題、はやいところ終わりにしたいものです。議会からは3月の決議がファイナルアンサーかと思いますし、決議内容を踏まえて提案いただければ、次は賛成できる。

 あとは当局から、決議を踏まえた提案をしていただくだけです。

ごみ袋半額化を実現するために

 先に個人的な話をすると、なぜ「半額化」なのかよく分からないのが本音。

 市民負担を軽減するためなら無料でも良いし、環境政策の広域化の観点からは(県下全体を見るとごみは広域処理の方向です)、丹波篠山市と同じ水準(45円)に合わせるのであれば、一定の合理性がある。

 本当はね、燃やすごみは高いけど資源ごみ回収は無料という丹波市の料金体系は、環境政策としては優れていると思っています。循環型社会を目指す上でね。(なのでぼくはプラごみ袋を無料化=廃止することをかねて提案しています。)

 とはいえ燃やすごみ袋半額化という要望が多く、市長の公約でもあるなら、それはそれ。
 これまでごみを出す人が負担していた分を安くして、みんなの税金で負担するだけ。負担をされる納税者のみなさんが要望されているのですものね。

 そこで今回は、どうすれば議会の心配を克服し半額化が実現できるか、2つのポイントを紹介します。

 この2つのポイント、決して無理難題ではないし、ぼくからは担当部局である生活環境部長に伝えてあります。
 なので、この9月議会で拙速な提案をされなかったということは、実現に向けて担当部局でしっかり取組もうとされているのかな、と期待しています。

 では、その2つのポイントは何か。

 そこにいく前に、決議案「ごみ減量を進めながら市民負担の軽減を求める決議」成立の背景について寄り道します。
 というのは、2つのポイントというのは、まさにこの決議案で述べた骨子なので。

熟議の議会へ、希望の光も

 3月の議会では、ぼく自身「おっ」と嬉しくなった出来事がありました。

 請願を審査する委員会(ぼくは所属していません)で、共産党の議員さんから「何らかの付帯意見を付けても良いから採択できないか」という提案があったのです。
 また「半額化にこだわらず」という言葉も同じく共産党さんから出ました。

 ご存知の通り、ごみ袋半額化はもともと共産党が主張されていたことです。その考えを取り入れて自らの公約にしたのが現市長。
 なので、共産党は現市長を応援。それまでなら必ず否決していた当初予算案に対しても、現在の市長になってからすべて賛成。

 その共産党の議員さんから、単に「賛成すべき」というだけではない意見があった。

 ぼくはかねてより、議会の議員が複数いるのは、多様な市民の声を反映させるためと考えています(動画「地方自治ではなぜ市長と議員を選び議員は複数なのか、二元代表制をどこより分かりやすく解説」参照)。

 そして多様な意見を反映させるには、議員それぞれが自らの思いをぶつけ合い、譲り合い、新しい着眼点を見出し、ひとつの合意点を見出す「熟議」が欠かせません。

 この熟議に向けた提案と考えて、とても嬉しく思ったのです。

そして決議案へ

 残念ながら最終的に、委員会では原案のままでの採決となり、不採択となりました。

 その後、最終採決を行う本会議までの間も、「熟議」への努力が続きました。

 請願そのものは不採択となるにしても、その思いを汲み取った「決議」を出せないかという努力です。

 ぼく自身、別の共産党の議員さんと夜半まで決議文案のすり合わせを行いました。
 正直、あと一歩だったと思います。

 採決日の朝、決議案に賛成されない議員さんがあり、全会一致にならないのであればと、前夜まで一緒に決議文案を練っていた議員さんも提出から降りられて、結果的に全会一致はならず、賛成多数(12対7)での採択となりました。

 ただ、今回の経緯を通じて、おもしろおかしく言われる「市長派対反市長派」なんていう単純な構図は存在せず、互いに市の未来に向けて議論しているという議会の姿勢が、市民の方々に伝わればと願っています。

 以下に決議案全文を転載します。そしてその後に、冒頭で紹介した、議会の不安を取り除き賛成に持ち込む2つのポイントについて解説します。(解説時に便利なように、段落番号を段落後に振っています。)

ごみ減量を進めながら市民負担の軽減を求める決議

(提出:小橋昭彦、太田喜一郎、谷水雄一、須原弥生、大西ひろ美)

 丹波市の燃やすごみ袋の料金は、合併以降大袋1枚100円でスタートし、その後、20円引き下げ現在の80円となっている。【1】

 これは、近隣自治体と比べても2倍近い料金となっており、引き下げてほしいという要望が市民から出ている。【2】

 一方、クリーンセンターにおける処理量は限界に近い状況となっているが、そうした中で令和9年度からは山南地域のごみを丹波市で処理する計画になっている。将来的に相当の処理量が見込まれることから、今後一層のごみの分別を進め減量化を推進し、ごみ処理を安定化させなければならない【3】

 現在のごみ袋料金は「丹波市廃棄物の適正処理、減量及び再利用に関する条例」の中で減量施策の一環として位置づけられていることから、議会ではこれまで、ごみの減量施策と整合したごみ袋料金改訂の必要性を指摘してきた。【4】

 令和4年9月議会では「ごみ袋半額化」に関する2回目の提案がなされたが、当局からは、1回目と同じ提案主旨かつ補足の説明もない提案であり、1回目提案の否決時に示された議会からの懸念に真摯に向き合われたか疑問が残るところであった。【5】

 ついては、今後当局においては、ごみの減量化を一層進めながら、市民の期待に応え、半額化にこだわらず、燃やすごみ袋料金の引き下げを含むごみ袋料金体系全体の見直し、及び各種施策を通し、結果的に市民負担の軽減につながるよう検討することを求めるものである。【6】

 以上、決議する。

令和5年3月29日

丹波市議会

ごみ減量と一体となった手数料の減額を

 決議文のうち冒頭2段落は現状の紹介。80円という料金【1】に対して引き下げてほしいと市民から要望がある【2】と。
 これはいいですね。

 議会から市長に対する要求は最終段落【6】で、「市民負担の軽減につながるよう検討すること」を求めています。

 軽減の手法は「各種施策」ありますが、「燃やすごみ袋料金の引き下げ」もそのひとつ。
 前段に半額化にこだわらず、とありますが、提案に合理性があれば、実際にいくらまで安くするかは大きな争点ではないでしょう。根拠(エビデンス)次第です。

 じゃあ「提案の合理性」とは何か。
 そのことに触れているのが、段落【3】と段落【4】です。そしてこれが、今回、議会の賛同を得るために必須の2つのポイントです。

 決議文の中で太字にした部分ですが、表現を分かりやすくして以下に記します。

  1. (山南地域のごみを受け入れられるよう)ごみ処理を安定化【段落3】
    現在は丹波篠山市に委託している山南地域のごみ処理を、令和9年度から丹波市で行う約束です。現在の市のクリーンセンターの処理量のままでは無理なので、令和9年度までの減量ロードマップを示す必要があります。
  2. ごみの減量施策と整合したごみ袋料金改訂【段落4】
    ごみ袋料金を改訂(値下げ)しても、ごみの減量傾向には影響しない(整合している)ことを示すこと。こちらについては、審議会で専門的な視点から分析し根拠をもって答申してもらうのが良いでしょう。

 以上の2点です。
 これさえ提案時に示していただければ、ぼくは賛成します。

市民負担の軽減のためでもある

 ちなみにこの2点、ごみ袋料金の減額が「市民負担の軽減」のためというのであれば、当然のことでもあるのです。

 まず1点目の、山南地域のごみの受入です。
 山南地域のごみを丹波篠山市のセンターで処理してもらうにあたり、現在、丹波市からは年間1億円の処理費用を支払っています。

 令和9年度からこれを丹波市で受け入れるなら、この1億円負担は要らなくなる。ごみ袋の半額化に必要な費用(約6,000万円)を十分賄える財源になります。
 逆に、それができないと、毎年1億円もの費用を、今後も市外に支払う必要が出てくる。市民負担の軽減を言うのであれば、まずこの1億円は大きな要素です。

 次に2点目の、ごみの減量傾向の持続です。

 ごみ袋を仮に半額にするとして、その財源はどこにあるかというと、国や県からもらえるわけもなく、結局は市民の税金です。

 従って、仮にごみ袋料金が安くなった結果出されるごみが増えてしまうと、処理料金が高騰しますから、税金で負担する部分が増えてしまう。

 ですから、市民負担を増やさないためには、ごみの減量傾向が続くことが必要です。

できない話じゃない

 2つのポイントについての説明は以上です。
 最初にも書きましたが、できない話じゃありません。

 1点目については、もともと丹波篠山市と約束していることなので、実現することが前提。
 なので、実現までの具体的ロードマップを描くだけです。どのような施策をどの段階で打って、どの程度ごみの減量を見込むのか。

 2点目について。
 残念ながら丹波市で前回料金を値下げしたときはごみ量が増えました。しかし料金を値下げした他自治体の例を調べると、そうとも限らない様子です。

 なので、ここについては、丹波市廃棄物減量等推進審議会で専門的な目線から議論いただき、客観的なデータを示して、「料金を下げてもごみの減量傾向に影響ありません」と答申が欲しい。

最初のボタンのかけ間違いが・・・

 以下は、少しテクニカルというか、法令論になるのですが。

 丹波市のごみ袋料金は、「丹波市廃棄物の適正処理、減量及び再利用に関する条例」で規定されています。
 住民センター利用料などは「手数料条例」ですが、ごみ袋料金は、違います。

 この条例の目的は次の通りです。

第1条 この条例は、廃棄物の排出を抑制し、再利用を促進することにより廃棄物の減量を推進し、及び廃棄物を適正に処理することにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図り、もって市民の健康で快適な生活を確保することを目的とする。

 この目的を持つ条例の中で、ごみ収集手数料が規定されているということは、ごみ袋の有料化は、「廃棄物の減量を推進」する手段だということです。

 ところがこれまで当局は、手数料の改訂を、ごみの減量と切り離して提案されてきました。以下は議案提案時の副市長の補足説明です。

本議案につきましては、本会議質疑並びに本日の委員会質疑通告におきましては、ごみの減量に関する御懸念、御心配の事柄を多くいただいておりますが、今回の条例改正はごみの減量に言及するものではなく、県下一高いとされている当市の燃やすごみ袋手数料を半額化したい、すなわち高いから引き下げるというところが趣旨でございますので、この点御理解をいただきまして御審議賜りますようよろしくお願いを申し上げます。

令和3年12月17日 民生産建常任委員会

 いやいや。「ごみの減量に言及する」ことこそ、必要でした。最初の提案時から、ボタンの掛け違いがあったわけです。
 このボタンのかけ違いはどこに始まったかと言えば、「ごみ袋料金改定とごみの減量を分け」とした審議会の答申です。

 なので、いったんこの時のボタンを外して、あらためて正しくかけ直して提案いただければと願っています。

議会と対話し政策を磨く

 蛇足です。

 決議文の段落【5】。これは市長の提案姿勢に対する苦言です。

 以下に当初提案(令和3年12月)と2回目提案(令和4年9月)の議案審議資料を示します。

令和3年12月議会 議案審議資料
令和4年9月議会 議案審議資料

 提案の趣旨が同じです。

 本来であれば、1度議会で否決されているのですから、再提案にあたっては、その際の議会からの指摘事項にどう対処したか述べるべきです。
 審議資料で難しければ、せめて提案時の補足説明で述べると良いでしょう。

 だけど。2回目提案時の生活環境部長からの補足説明は次の通り。

提案の趣旨は市長が申し上げたとおりでございまして、今回の改正内容は燃やすごみ処理手数料を現行の金額の半額に改定するもので、燃やすごみ大袋1袋当たり80円を40円に、中袋1袋当たり60円を30円に、小袋1袋当たり40円を20円に改定するものでございます。施行日は令和5年4月1日としております。このほか31ページには新旧対照表をつけておりますので御覧おきください。

令和4年9月1日 本会議

 これでは、なぜあえて2回目の提案に至ったのか、分かりません。

 議会には、同一会期中には一度決した議案を再びは議題として取り上げない「一事不再議」という原則があります。
 これは会議が能率的に運ばれることを目的とするものです。

 今回の場合、同一会期ではないのでこれにはあたりませんが、能率的な会議運営という主旨からいえば、1度目と2度目の提案で議論の前提として何が違うのか、示すのが本来ではないでしょうか。

 それも無く再提案された姿勢は、議会軽視というか、少なくとも誠実さが足りないと感じます。

 議会との対話の中で、政策を磨いていく
 今回の場合なら、「減量と切り離す」ことで結果的に市民負担の増大につながる恐れがあった議案が、議会の声を聞くことで「減量と整合」した提案となり、真の市民負担の軽減につながる。

 次回の提案時にはこのように議会との対話を踏まえて提案されるよう、あえて苦言を入れさせていただいたものです。

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