6月議会で、丹波市のプラ系のごみ袋料金を下げるための議案が提出されています。
議案58号 丹波市廃棄物の適正処理、減量及び再利用に関する条例の一部を改正する条例
「丹波市廃棄物の適正処理、減量及び再利用に関する条例」を改正し、容器包装プラスチックのごみ袋を「大」は現行50円を20円に。「中」は現行30円を15円に。
あわせて補正予算案として、ごみ袋値下げによる市の減収として、682万円のごみ収集手数料の減額(1億2,249万円から1億1,567万円)案が提出されています。
ごみ問題については、「みんなでごみ袋半額化を目指そう!」や「ファクトフルネスなごみ環境問題」で触れてきました。
SDGsに基づく地球環境の持続可能性を前提とし、リスク管理を欠かさず進めることが肝要です。
今回の議案は、それに添っているでしょうか? 検討しましょう。
ごみ袋減額は何を目指しての施策か?
議案審議資料及び補正予算に示された、議案のポイントを記します。
- 丹波市廃棄物減量等推進審議会からの答申に基づく。
- 分別徹底を促進し資源化への意識を向上すること、燃やすごみとして出されている容器包装プラスチックの減少を図ることを目的とする。
- 改定後のごみ処理手数料(1袋あたり)は、「大」が20円、「中」が15円。
- 新しい価格は、袋の製造、配送及び販売委託に係る費用相当額をもとに算出した。
- 値下げは8月1日から施行する。
- 値下げに伴い今年度のごみ収集手数料収入見込を681万円減額する。(補正後1億1,567万円)
まずは2点目にある今回の目的です。
「資源化への意識向上」と「燃やすごみとして出される容器包装プラスチックの減少」とあります。
オーケー、市民の負担軽減といった目的ではない。ここは確実に抑えておきたいところです。先に記しましたが、ごみ袋減額は、所得の多い人にほど恩恵が大きい施策なので、弱者に手厚くしたい負担軽減策としては筋が悪いのです。
このことは市民の皆さんにも、しっかり認識しておいていただきたいところ。値下げに目を奪われてはいけません。地球環境保全のため、みんなでごみを分別し、燃やすごみを減らしていくんだよと。
では、どのくらいの効果を見込むのでしょうか。
丹波市としては、可燃ごみの計画値として、平成27年の16,954トンから令和元年に15,628トンにするという目標を立てていました。
しかし実際には、令和元年のごみは17,716トンと、2,087トンも上振れしている。内訳としては事業系で254トン増の4,481トン、家庭系で720トン増の12,004トン。
家庭系に絞れば、1人あたり年間160㎏出しているのを、約20㎏減らしてほしいということです。年間30袋出していたなら、26袋にしてほしいと。
実はこれ、かなり大変な話。「ファクトフルネスなごみ環境問題」で紹介した先行研究を参考にするなら、ごみ袋料金をいまの4倍(320円)にしないと難しい水準です。
加えて、将来的に燃やすごみ袋料金を半額にしようとするなら、前回値下げ時にならえばごみ量は1人あたり年間12キロぐらい増える可能性がある。そこも見越して減量は上積みしなくてはならない。
現在、プラ袋の年間の利用数量は、大で22万枚(燃やすごみ袋大は72万枚)、中で15万枚(燃やすごみ袋中は60万枚、小は27万枚)です。
ピット内成分調査では、ビニールや皮革等は約3割です。うち容器包装プラスチックがどのくらいかは分かりませんが、そもそもプラは軽いので、重量比ではそれほどの削減効果がないかもしれません。
そう考えると、ごみの減量効果よりも、「意識向上」の狙いの方が大きいと考えておいた方がよさそうです。
新料金の考え方は政策転換か?
議案説明で気になるのは4点目に記されている、新料金の算出根拠です。
新しい価格は、袋の製造、配送及び販売委託に係る費用相当額をもとに算出
とのことですね。確かに、製造・流通単価は大で18円から19円、小で14円から15円となっています。今回の袋料金はほぼこの水準で提案されている。
これは政策転換を意味しているのでしょうか。
すなわち。
これまでのごみ袋料金(ごみ収集手数料)の考え方は次の通りでした。
廃棄物処理事業における受益者である市民に、ごみの排出量に応じた相応の負担をいただくことで、高いごみ袋料金を意識し、家庭から出るごみを出来るだけ減らすとともに、ごみと資源物に分け、環境に負荷をかけないという意識を醸成していただけるよう、ごみ処理経費の22%を基準として設定してきた。
(丹波市廃棄物減量等推進審議会 令和3年3月25日提出資料より)
処理費用を市民の皆様もご負担くださいと。
令和3年予算で言えば、ごみ収集運搬業務委託料が2億5,000万円、施設管理委託料が3億2,800万円。その22%で1億2,700万円。これがほぼ「ごみ収集手数料」1億2,200万円、すなわちごみ袋料金収入となっています。
これに対して、今回の算出根拠は袋の製造原価・流通コストだという。
計算上、たまたま製造・流通コストと一致させたというだけなら良いのですが、手数料を負担いただくという考え方まで変えているとすれば、問題です。
ごみ袋料金は製造・物流コストで良いとなると、極端に言えば、市販品でも構わないことになる。環境負荷への市民負担という考え方を放棄したことになる。
ちなみに、容器包装プラスチックだけの処理費用がどのくらいかというと、これはよく分かりません。分別後の運搬・再資源化のための費用(公益財団法人日本容器包装リサイクル協会への委託)は、毎年15万円から18万円の間くらいです。
その前の中間処理工程(出されたプラごみをベルトコンベアに流し、人の手であらためて再資源化できるものを選別しています)があるので、その人件費を加えるとして、それが年間800万円程度とすれば、1袋あたり約20円でしょうか。
ごみ袋の算定基準をどこに置くかというのは、高いか安いか以前の問題として、重要なことかと思います。
ごみ減量大作戦!
それにしても残念なのは、料金値下げとセットで、その他のゴミ減量施策が打ち出されていないことです。
念のため申し上げると、担当部局ではごみ削減に関して、さまざまなアイデアが出ています。丹波市廃棄物減量等推進審議会に示された資料から引用すると。
- フードドライブ、子ども食堂連携など食品ロス削減対策
- 木の駅プロジェクトなどと連携した剪定枝対策
- 店頭回収との連携や協働
- 有機農業での活用
- トノサマガエルプロジェクト
- オーガニック宣言、ゼロシティ宣言
などなど。
加えて、現時点の計画ではありますが、来年の4月には「雑がみ資源化の促進」や「生ごみ減量化」を進めるとも上記の資料にあります。
それができていない。
現場の知恵を生かすのは、トップの構想力であり実行力であろうかと思います。
雑がみ、生ごみや剪定枝対策を急ぐべき
今回の値下げに伴い、年間900万円ほどの減収になります。
考えてみると、900万円もあれば、ごみ減量のための多くの施策ができます。急がなくてはいけない対策としては、たとえば雑がみ回収拠点の整備。
雑がみというのは、菓子の空き箱であったり、包み紙であったり、要は「紙」って書かれているものね。
雑誌等は集団回収に出すけど、これらは「燃やすごみ」に入れている人が多いのではないでしょうか。
ピット調査でも、紙・布類は全体の4割ほどを占めている。
丹波篠山市でもこのほど「雑がみ回収拠点」を支所等に設けたと報道にありました。丹波市もどんどん進めなくてはいけない。
生ごみや剪定枝の資源化も求められます。
クリーンセンターには、9,600万円かけて「生ごみ・剪定枝リサイクル実証施設」が作られ、地元の野上野地区のご協力のもと、検証が進められてきました。
機器の導入費とあわせて成果を紹介しましょう。
- 生ごみ処理機 880万円(100㎏/日及び50㎏/日各1台)
年間8,000㎏、取組世帯70世帯180名、1人1日あたり120g、堆肥量1,400㎏ - 樹木粉砕機 275万円(最大処理径18cm)
年間持込量10,000kg
生ごみを1人1日あたり120g出されているというのは朗報ですね。丹波市の一人当たりの1日ごみ量は750gですから、15%に相当します。これを減らせる可能性がある。
世帯によっては出す量が少ないものとは思います(ごみ全体に占める生ごみの量は5~10%と他市と比べて少ないので)が、一定の効果はありそうです。
剪定枝の持込・堆肥化施設の整備や、各家庭での生ごみコンポスト購入補助なども急がれるのではないでしょうか。