丹波市のごみ処理手数料、実は高くない

 先の民生産建常任委員会において、燃やすごみ袋料金(ごみ処理手数料)の値下げに反対しました。

議案92号 丹波市廃棄物の適正処理、減量及び再利用に関する条例の一部を改正する条例の制定について

 丹波市のごみ袋料金について、大80円を40円に、中60円を30円に、小40円を20円にしようとする提案です。

 ごみ処理手数料問題については、これまでも「みんなでごみ袋半額化を目指そう!」「ファクトフルネスなごみ環境問題」などで取り上げてきました。

議案提案の主旨に誤りあり

 今回の議案提案の主旨について、議案審議資料や補足説明では次のように説明されています。

近隣市町と比較して高い燃やすごみ袋の料金を値下げすることで、市民の負担を軽減し住みよいまちづくりを進める。

 なるほど。一見スマートです。

 今回のエントリーではこの提案主旨を尊重し、価格変動によるごみ量の増減や財政負担などはいったん脇におき、主旨に添って検討しましょう。

 先に結論から述べます。この提案主旨は誤りの連続です。
 前半と後半に分け、先にどう誤っているか指摘しておきます。

  • 近隣市町と比較して高い燃やすごみ袋の料金
    丹波市のごみ袋料金は近隣市町と比較して高くありません。「燃やすごみ袋」料金だけに注目すれば高いですが、市民が負担する「ごみ袋料金」全体では変わりません。
  • 市民の負担を軽減し住みよいまちづくりを進める
    ごみ袋料金の値下げは市民負担の軽減になりません。むしろごみを出さない市民へのしわ寄せが大きくなり、住みよさとは逆の方向に政策を歪めます

 順を追って説明しましょう。

決して高くない丹波市のごみ袋料金

 丹波市のごみ袋料金は高くない。

 え。

 びっくりですよね。何を言い出すねん。

 近隣市の例として議案質疑の中で当局から出されたところと比べます(税込み価格)。

  • 丹波市 燃やすごみ袋(大) 80円
  • 丹波篠山市 燃えるごみ袋(大) 45円
  • 福知山市 燃やすごみ袋(大) 44円

 やっぱり高いやん。

 でもね。ちょっと待って。

 丹波市のみなさん、「燃やすごみ袋」から分別したごみ、どうしてますか? プラスチック容器包装は専用の袋があります(他市でも同様です)。その他、たとえば次のようなもの。

  • ペットボトル
  • 缶やびん
  • 金属類
  • ガラス陶器類

 丹波市では指定ごみ袋は「燃やすごみ」と「プラスチック容器包装」だけです。
 ここで紹介したような資源ごみ等は、自分で準備したコンテナか透明な袋に入れて出していますね? 収集に費用はかかりません。無料です

 丹波篠山市はどうでしょうか。「丹波篠山市ごみカレンダー」で確認ください。
 丹波篠山市のごみ袋の種類は4種類です。

  • 燃えるごみ(白色)
  • 資源ごみ(緑色)
  • 埋立ごみ(黄色)
  • プラスチック容器包装(ピンク色)

 ペットボトルや金属類、缶やびんは、「緑色の指定袋(資源用)」に、ガラス陶器類は「黄色の指定袋(埋立ゴミ)」に入れなくてはなりません。
 いずれも1袋45円です。

 福知山市はどうでしょうか。「家庭ごみの正しい分け方・出し方」で確認ください。
 福知山市のごみ袋の種類は3種類です。

  • 燃やすごみ(赤色)
  • 燃やさないごみ(青色)
  • プラスチック容器包装(緑色)

 金属類、ガラス陶器類は「燃やさないごみ袋」に入れなくてはなりません。加えて、丹波市では「燃やすごみ」に入れていた靴や歯ブラシやプラスチック製品類も、「燃やさないごみ袋」です。
 こちらは1袋44円です。

 つまり。

 それぞれの市で同じごみを出そうとするとき、購入しなくてはならないごみ袋は次のようになります(プラスチック容器包装は各市とも同じなので説明から省きます)。

  • 丹波市 燃やすごみ袋80円、それ以外は無料
  • 丹波篠山市 燃えるごみ袋45円+資源ごみ袋45円+埋立ごみ袋45円
  • 福知山市 燃やすごみ袋44円+燃やさないごみ袋44円、資源ごみは無料

 どうでしょうか?

 丹波市では「燃やすごみ袋」80円1種類しかないところを、丹波篠山市では3種類135円福知山市では2種類88円分を購入しなくてはならないのです。

 市民が負担しなくてはならないごみ袋料金って、けっきょく変わらないのです。

全体の体系を無視した環境政策

 上記では袋料金という単体だけで見ましたので、市の歳入から確認しておきましょう。

 丹波篠山市や福知山市が市民から収受している「ごみ収集手数料(ごみ袋代金)」を丹波市と比較します。それぞれの市の人口で割った金額も併せて計算したのが下の表です。

市名手数料収入R2国勢調査人口1人当たり
丹波市(R2決算)118,687,30061,4711,930
丹波篠山市(R2決算)78,068,25039,6111,970
福知山市(R2決算)128,010,00077,3061,655

 丹波市の金額は、プラごみ袋が減額される前の数字です。減額後は1,767円と予想しています。

 1人当たりの金額をよくご覧ください。

 変わりませんよね。
 「燃やすごみ袋」料金は倍違うのに全体として変わらない。つまり先ほど紹介したように、「燃やすごみ袋」以外のごみ袋の料金を、丹波篠山市や福知山市の方は追加で負担しているということです。

 みなさん、このことをご存知でしたか?

 先の委員会で、当局に「ごみ袋料金全体として比較したか」と尋ねました。「していません」との返事でした。
 つまり当局は、この事実を(意図的かどうかは分かりませんが)隠ぺいし、「燃やすごみ袋」という料金体系のごく一部を取り出して、「半額化」というインパクトだけを意識した政策を今回、提案しているのです。

 燃やすごみ袋の半額化を「おおむね妥当」とした丹波市廃棄物減量等推進審議会でも、この事実に触れないまま審議が進められました(市長からの諮問に答える役割ですから、市から情報提供が無い限り仕方のないことです)。

 これが環境政策と言えるでしょうか。本当に環境のことを考えるのであれば、ごみ袋料金の体系全体を考慮すべきではないでしょうか

極端に少なくなる丹波市民のごみ袋料金負担

 今回の燃やすごみ袋の半額化を反映すると、丹波市の市民一人当たりのごみ収集手数料負担は935円です。

 丹波篠山市や福知山市の市民の方々が負担されている1,800円から1,900円と比べて、極端に低い金額になります。

 「近隣市町と比べて高い」なんてごまかしです。そんな事実の一面だけを取り上げるのではなく、環境政策全体を見て、丹波市は次のように言うべきなのです。

分別しないごみ(燃やすごみ)袋は全国一(はい、ぼくの調べでは兵庫県下だけでなく全国的にも)高いですが、その分、分別したごみの収集は無料化しています。分別を進めていただくことで、市民のごみ袋代金負担はどんどん安くなります。

 そう言わずに、燃やすごみ袋料金だけを比較する。インパクト重視の人気取り政策とさえぼくは思います。

 もちろん。

 それでもなお燃やすごみ袋の料金を値下げするという選択はあります。1人当たり935円という、近隣市と比べてもだんぜん少ない市民負担を目指す選択肢です。

 問題はそれが、「市民の負担を軽減し住みよいまちづくりを進める」ことにつながるかどうかです。

 「次のページ」で検討します。

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