出産育児一時金はどう決まっているか

 皆さんは出産育児一時金をいくらもらえるか、ご存知ですか?

 42万円です。今回、この金額を維持するという国の方針を受けた条例改正が成立しました。

議案91号 丹波市国民健康保険条例の一部改正

 維持するために改正というのもややこしいですね。どういうことでしょうか。

出産育児一時金の決まり方

 まずは今回の改正の内容を紹介します。「丹波市国民健康保険条例」の第8条です。

第8条 被保険者が出産したときは、当該被保険者の属する世帯の世帯主に対し、出産育児一時金として、40万4,000円を支給するただし、健康保険法施行令(大正15年勅令第243号)第36条ただし書の規定に該当する場合にあっては、規則で定めるところにより、これに3万円を限度として加算することができる。

 この「40万4,000円」を「40万8,000円」にするというのが今回の改正。

 うーん、分かりませんね。42万円じゃないんですけど。

 その差額はどこから出すか。下線部、「規則で定めるところにより」「加算することができる」といいますから、これがこの加算分ということになります。
 そこで規則、「丹波市健康保険施行規則」ですね。第2条です。

第2条 条例第8条の規定による出産育児一時金の支給を受けようとするときは、出産育児一時金支給申請書に被保険者証を添えて市長に申請しなければならない。
2 出産育児一時金は、出生児1人を1件とする。
3 条例第8条第1項ただし書に規定する規則で定める額は、1万6,000円とする。
(丹波市国民健康保険条例施行規則)

 今回、併せてこの3項を16,000円から12,000円にすると(規則の改正なので議会の議決は不要です)。

 ということで。次のようなことですね。

  • これまで:40万4,000円+16,000円
  • これから:40万8,000円+12,000円

 確かに合計は42万円。しかし、なんだかややこしいですね。

出産育児一時金に加算されているもの

 それでもう少し読み解くと。今回改正する条例8条の「ただし、」以降。

 大正15年の勅令といういにしえの「健康保険法施行令」の「第36条ただし書」について触れられていますね。

 さっそく「健康保険法施行令」に目を通します。

第36条 法第百一条の政令で定める金額は、四十万四千円とする。ただし、病院、診療所、助産所その他の者であって、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当するものによる医学的管理の下における出産であると保険者が認めるときは、四十万四千円に、第一号に規定する保険契約に関し被保険者が追加的に必要となる費用の額を基準として、三万円を超えない範囲内で保険者が定める金額を加算した金額とする。

 えーと、要するに、出産事故に備えた保険金の負担金分を加算するという話です。

 なんとなく分かりました。

 出産の際に支給される金額は、「出産育児一時金+出産事故保険負担金」からなっているということですね。
 これが、先ほどの足し算の中身。

 そのような次第ですから、出産を担当いただいた医療機関が出産事故保険制度に加入されていない場合は、加算分の支給はありません。

産科医療保障制度とは

 ここで「産科医療補償制度について」を確認します。
 なるほど令和4年1月1日以降に生まれたお子さまから、お産1件ごとに分娩機関が負担する掛け金が1万6,000円から1万2,000円に変更になるとあります(従って冒頭に上げた丹波市の条例改正の施行日も令和4年1月1日です)。

 産科医療保障制度とは何か。

 分娩機関は妊産婦からいただいた分娩費から掛金相当分をねん出し、保険会社(実際にはその前の中間組織)に保険料を支払っています。
 その結果、分娩に関連して重度脳性まひが発生した場合、家族の経済的負担の軽減が図れるようになっています。

 この制度は、平成21年1月に創設されました。
 「参加医療保障制度創設の目的」に経緯が述べられています。
 そういえば当時、分娩時の医療事故によって医師が裁判に訴えられるという事例があり、こんなことでは産科のなり手がいなくなると、大きな話題になったのを覚えています。

 こうした状況を改善し、医師の心理的負担を緩和するとともに、産科医療を安心して受けられる環境整備を図るために導入されたのがこの保険制度。
 その際、分娩機関が負担する掛金分が妊産婦が負担する分娩費に上乗せされることを見越して、出産育児一時金に掛金相当分を上乗せして支給されるようになりました。

 今回、この掛金、つまり分娩機関の負担が減ります。
 ただ、だからといって出産一時金総額が減ってしまっては、子育て支援の名が泣きます。そうならないよう、出産一時金の額を引き上げたと。そういうことですね。

 個人的には、この引き上げられた分がどこにいくか、ちょっと気になっています。実際の出産費用との差額として親御さんに渡る(自己負担額が軽減される)のか、出産費用の値上げに充当され、産科のお医者様の処遇改善にまわるのか。

 その他、一時金の医療機関への直接支払制度など、制度についてのQ&Aは協会けんぽによる「出産育児一時金について」をご参照ください。

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