「まちなかホテルの迷走(への助走)」からの続きです。そもそもの構想の内容については、「まちなかホテルの可能性」をお読みください。
ここから、いよいよ観光拠点化の話と農泊事業の話が絡みあい、さらに支所の活用方法へのそれぞれの思いが重なって、話がややこしくなっていきます。
- 平成29年11月 丹波市観光拠点整備懇話会 提言書
5月に発足した懇話会は、6回にわたる議論を経て「丹波市観光拠点整備に向けた提言書」をまとめました。提言の主旨は、冒頭に記されている「提言書策定にあたって(懇話会の思い)」という文章に尽きるのではないかと思います。一部、引用します。本提言書においては特定の方向に集約せず、少数意見も含めてそれぞれ委員の意見をあえて提示している。提言書において特定の方向を示した場合、今後、丹波市の観光振興を担う運営組織の活動範囲を制限してしまうことを避けなければならないと判断したためである。
提言内容では観光拠点の機能イメージとして、「本来的機能(情報発信、コンシェルジュ、体験交流)」「連携機能(移住定住相談)」と整理されているものの、具体的活用方法についてはアイデアの列挙となっており、絞り込みはなされていません。このアイデアの中には宿泊機能も含まれています。
- 平成29年12月 丹波市観光協会、臨時総会で法人化を決定
丹波市観光協会が臨時総会を開き、平成30年7月をめどに任意団体から一般社団法人へ移行することを決めました。かねてから組織力を高め収益性を向上させることを検討されていましたが、柏原支所の観光拠点計画が契機になりました。観光拠点が指定管理に出される場合、運営団体候補として名乗りを上げるには法人格が必要との認識からです。(神戸新聞記事による。法人化の時期はその後平成31年4月に延期されています。) - 平成29年12月 ふるさと丹波市定住促進会議の後継組織発足
ふるさと丹波市定住促進会議の事業を承継する組織として、「一般社団法人Be」が設立されました。純粋な民間組織です。 - 平成29年12月 支所移転計画に関する補正予算案、可決
柏原支所の観光拠点化に向けて、12月議会に提案された補正予算で、「柏原支所移転計画実施設計業務委託料」458万円が計上され、可決しました。この時点では平成30年9月には仕様を確定し、工事に向けた段階に入る予定でした。
おおまかな想定としては、1階に大型スクリーンと観光・移住コンシェルジュを整え、ジェラート店やチャレンジショップ、週末にマルシェ等をするイベントコーナーを設置。2階には屋台型キッチンや図書スペースを備える計画でした。 - 平成30年1月 柏原支所をホテルにする構想が提案される
農泊事業である「古民家等を活用した滞在型施設整備プラン」において、柏原は「柏原城下町ホテル&オフィス」とするコンセプトが出され、柏原支所はホテルとして整備するのが良いとの提案が中間的に(最終報告は3月)出されました(この時点では1階も含め全5室の想定)。
ここではじめて、それまで漠然としか見えていなかった、中心市街地活性化計画でいう「丹波らしい宿泊機能の整備」が、「柏原城下町ホテル」として、支所及び古民家のホテル化とともに具体性を帯びてきました。(豊富な実績を持つ一般社団法人ノオトが柏原での可能性を指摘することの魅力は大きく、ここから支所をめぐる取り扱いが大きく揺らいでいくことになります。) - 平成30年2月 丹波市観光・商工業ユニティプラン策定
平成28年7月に組織された策定委員会(商業者や農業者、商工会、観光協会等が委員となっています)によって、商業及び観光業の振興計画「ユニティプラン」が策定されました。そこには、10年後の観光の姿として、「この10年間に、丹波市観光拠点(市役所柏原支所)、黒井城跡や水分れ資料館などが整備されたほか、紅葉や花の名所も整備・充実が進められるなど、魅力ある観光地が増えたため、観光客も10 年前の年間200万人前後から、年間300万人まで増加しました。」と記されています。 - 平成30年2月 住み継ぐたんば協議会 設立
丹波市、一般社団法人Beを構成員として「住み継ぐたんば協議会」が設立されました(4月に兵庫県丹波県民局、丹波少年自然の家も加入)。「ふるさと丹波市定住促進会議」の後継組織は一般社団法人Beが想定されていましたが、国からの交付金事業(農泊事業)については、引き継ぐには自治体も構成員でなくてはならず、農泊事業については、この協議会が引き継ぐことになりました。 - 平成30年3月 観光拠点からホテルへ、支所の考え方変更
新年度予算案が議会に上程されました。柏原支所ホテル化の具体的計画を立てる「柏原庁舎の利活用総合計画の策定」に594万円。田原邸の購入費として「滞在型宿泊施設の整備(農泊推進対策)」2,630万円。これらが主な関連予算として盛り込まれました。一方で、12月補正で可決した「柏原支所移転計画実施設計業務委託料(458万円)」については廃止する補正予算が提案されました。
支所の観光拠点計画はいったん白紙に戻し、ホテル利用を前提に練り直すということですね。 - 平成30年3月 地元からの不安の声が表明される
自治協議会、観光まちづくりの会、商工会柏原支部の連名で要望書が市、議会に提出されました。支所の観光拠点化については観光協会への委託を前提に進んでいると地域では理解していたが農泊推進事業者の声で再考しようとしている。これについて地域住民が納得いく形で説明し、懇話会の提言にそった観光拠点として進めてほしいとの内容でした。 - 平成30年3月 「古民家等を活用した滞在型施設整備プラン」完成
ふるさと丹波市定住促進会議がノオトに委託していた「古民家等を活用した滞在型施設整備プラン」が提出されました。一般社団法人Beがビークル(運営母体)となって、柏原では(株)まちづくり柏原、大路では地元が立ち上げる法人と協働して事業運営にあたり、柏原でのホテル運営は専門事業者に再委託する図が描かれていました。 - 平成30年3月 予算案可決、附帯決議を採択
先に提出された予算案の審議にあたっては、経緯の不透明さから関連予算を削除すべきとの意見や、事業そのものは評価するので予算削減まではすべきでないとの意見がありました。最終的に予算案は可決したものの、「住民や議会が納得するまでは予算執行をすべきではない」とする附帯決議をつけました。
なお、附帯決議に法的な強制力はありませんが、市長は附帯決議を尊重し、地元や議会の納得を得るまで関連予算を執行しないと言明されました。 - 平成30年5月 田原邸宿泊化計画に反対する要望が出される
田原邸の立地する屋敷自治会7組より、田原邸については宿泊施設以外での保存と活用をしてほしいとの要望書が出されました。 - 平成30年6月 予算案の一部を執行
市当局は地元説明を進める一方、関連予算のうち「柏原庁舎の利活用総合計画の策定」594万円について、詳細を詰めるために執行したいと議会に説明がありました。議会としてはそれを認めました。
ただし厳密には「認めた」という表現は正確ではありません。予算の執行権は当局にあり、すでに可決しているので、本来なら議会の承認なく自由に執行できるからです。附帯決議を重視し、当局としては「議会の納得」を求めたということです。議会の場で「承認する」採決があるわけでもなく、いわばなんとなくの空気感(?)で、これだけなら仕方ないかと落ちついたという感じです。 - 平成30年8月 柏原地域のエリアマネジメントについて全体像が示される
柏原地域でのエリアマネジメント計画について、議会に対して全体像の説明がありました。当初説明から変更し、柏原については一般社団法人Beではなく、運営会社を新たに公募する方針が示されました。その他の詳細については、「まちなかホテルの可能性」で示した通りです。 - 平成30年9月 議員有志が「支所のホテル化中止」を市長に申し入れる
進捗に疑問を持つ議員有志11名(ぼくは入っていません)が、支所のホテル化を中止するよう市長に要望しました。論点を紹介する際にあらためて触れます。 - 平成30年11月 農泊事業の推進要望が地元から出される
柏原自治会長会、柏原まちづくり協議会の連名で要望書が出されました。地元の理解が得られた様子であるとして、柏原支所の活用と町家を利用した農泊施設整備を、市の計画通り進めてほしいとの内容です。 - 平成30年11月 地元理解が進んだと市からの報告がある
丹波市からこれまで関連団体に行ってきた説明の状況報告がありました。地元自治会等ではぜひ成功させてほしいという声があったこと、観光協会も賛成していること、丹波市中心市街地活性化協議会からも待ち望んでいた事業と言われたことなどが報告されました。
以上、ほんとうに長くなりました。産業経済部で進められていた「支所の観光拠点化」に、建設部で進められていた「農泊事業」がからんできて、その農泊事業の母体組織の再編時期が重なりと、正直、分かりづらいと思います。
最終的に目指すところは理想ですし、地元の願いでもある。しかしこれだけ進める段階でつまづきがあると、「このまま進めることはまかりならん」という厳しい目線が入るのも仕方ないこととご理解いただけると思います。
さて。ということで、ようやく、いよいよ次回、こんどこそ、論点整理です。「まちなかホテルの論点」及び「まちなかホテルの論点(整理)」で記しました。
「まちなかホテルの迷走」への7件のフィードバック