まちなかホテルの処方箋

まちなかホテルの迷走(への助走)」と「まちなかホテルの迷走」で示したような経緯を経て混迷する、丹波市柏原城下エリアの「まちなかホテル」構想。

 計画の概要は「まちなかホテルの可能性」で示していますので、ご参照ください。また、何が議論されているのかについては、「まちなかホテルの論点」「まちなかホテルの論点(整理)」をご一読ください。

もしかすると市民の方からは、柏原におけるまちなかホテル事業は、議会が反対して膠着状態になっていると見えるかもしれません。

 今日の新聞記事もびっくり。柏原支所庁舎の耐震補強費を伝える記事の最後に、議員有志が12月に出した意見書(「まちなかホテルの論点」参照)のことに触れて終わっている。これではそれ以後、議会が動いていないという誤解を市民の方に与えます。

 そんなことはない。先の2月4日には「政策討論会」を開催しこの問題に関して議論しているんです。12月の意見書は有志による文書にすぎませんが、政策討論会は、議会としての公式かつ公開の場。そこで会派としての公式意見を交わしているわけです。

 意見書に触れつつ、政策討論会で提出した会派の公式な意見に触れないというのは記事として残念です。

丹新会としての考え方を政策討論会で提出しました

実は、丹新会のメンバーには12月の意見書に名前を連ねた議員も4名います。

議員のバイブルである『議員必携』は、その結びのところで次のように教えています。

議会は、住民を代表して重要な事件を審議し、決定し、行政を批判、監視する機関である。(中略)しかし、批判、攻撃そのものが目的ではなく、あくまでも行政を合理的、効率的に行わせることが目的である。(中略)したがって、批判や攻撃は、必ずこれに代わるべき代案をもっていなければならない。

この一文を念頭に、ここは熟議を重ねて会派として統一した「代案」を見出したい、そんな思いから会派で議論を重ねました。その結果、意見が一致!

それを12月の有志のように「要望書」として市長に提出するという考えもあったのですが、他会派とも相談した結果、議会で「政策討論会」を開催し、その場で提言を示すことになりました。

政策討論会は公開で、インターネット等でも中継されます。当局はもちろん、市民の方にも議会の中でのさまざまな考え方を知っていただく一助になるだろうとの判断です。

そんな流れから行われたのが、さる2月4日の政策討論会でした。

以下に、その場で公表した丹新会の提言をご紹介します。ただしここは個人ブログなので、提言書そのままではなく骨格を紹介しつつ、補足については私見を加えます。ご承知おきください。

効率的な事業運営に向けて

丹新会としては、これまで議会で論点になってきたところを大きく整理すると、次の2点に集約されるのではないかと考えました。

  1. 市に過剰なリスク負担が心配されること
    市が施設を整えて民間に事業運営を委託する形が基本になっている。本来は民間が行うべき事業ではないか。
  2. 計画が付け焼刃的な進捗であること
    ホテル化が急浮上し、支所や観光協会の移転などが、支所のホテル化に伴う緊急避難的な提案のように受け取れる。

では、これら2点を解決する方向性とは何か。

市のリスク負担を抑制するために

最初の論点である、市に過剰なリスク負担が心配されることに関しては、市が整備するとしていた田原邸と旧柏原庁舎をどうするかが焦点です。

  1. 田原邸は民間主導とする
    田原邸については、市が整備するのではなく民間が整備運営することでリスクを抑えます。改修費として見込まれている5,230万円の支出は不要になります。取得費は今年度当初予算で可決済ですが、柏原に残る数少ない武家屋敷を保存しまちなみを守るという公益的な観点から、市が取得するのはやむを得ないと考えます。
  2. 旧柏原庁舎はホテル一体型の観光拠点とする
    旧柏原庁舎は、『丹波市観光拠点整備に向けた提言書』で観光拠点とする提案が行われています。それに沿って市が整備する必要があります。ただし現在の考え方では2階部分を分離してホテルにする計画ですが、これでは建物全体としての魅力化ができません。1階2階を含めて、ホテル一体型の観光拠点とし、一括して民間に運営委託すべきです。

ホテルのロビーと言えば公共空間となっている場合が多いです。旧柏原庁舎の場合も、ホテル一体型とすることで、「まちのロビー」のような魅力的な「観光拠点空間」運営ができるものと期待します。

また一体型とすることで、1階にもホテルの客室を作ることができます。そこは民間事業者の知恵と工夫。客室を増やすことができる分、その収益を充てることで年間2,600万円とされていた「観光拠点運営委託費」を削減します。毎年の出費が削減できるのは大きいのではないでしょうか。

付け焼刃的な進捗を防ぐために

支所及び観光協会の移転計画については、取り壊しが予定されている、現在は水道部が入っている建物の跡地も合わせて、付近一帯の整備計画が必要です。

支所を現在観光協会が入っている東庁舎の1階に移転し、観光協会は2階に移動する計画ですが、東庁舎はいかにも手狭です。

支所は災害時の対応も含めて市民の方に安心していただけるところに、また観光協会は、広域的な観光拠点の配置の中で検討するのが本来です。時間の制約上あくまでも一時的に東庁舎にということであれば仕方ないですけれども。

個人的には、最終的に東庁舎は取り壊して、水道部跡地も含めて木の根橋からの一帯をくつろぎの公共空間にするのが、まちの魅力を高めることになるんじゃないかと。

その場で結論は出ませんでした

政策討論会では、最終的な結論は出ませんでした。もともと1回では難しいと思っていましたし、まずは市民の方に議会での議論を開くことが大切と考えていますので、それは仕方のないところ。ぼくなりに理解した当日のやりとりは次の通りです。

「田原邸を民間主導に」については大きな異論は出ませんでした。取得も民間に(予算は民間への補助金にする)という声があった一方、予定通り今年度の取得を進めるべきという声もありました。持ち主の意向もあるでしょうし、いったん取得してから譲渡といった手法もあろうかと思います。こだわりすぎてまとまらず、武家屋敷が失われてしまってはもともこもありません。

柏原庁舎のあり方については、そもそもホテル経営に反対というのが、共産党議員団さんの考え方でした。委託費が毎年かかるが仕方ないという考え方です。ここは議論は分かれたままになるかもしれません。

全体像については、大きな異論は出ませんでした。一方で、柏原のエリアマネジメントだけではなく、農泊事業として考えたバランスへの指摘がありました。柏原だけではなく他地域で進められている農泊事業にも一定の補助を出さなくてはならないという指摘です。

ともあれ。

こうして議会では議論を進めていますし、丹新会でも熱い討論を交わして「代わるべき代案」を示したということを強調して、本稿を綴じます。

「まちなかホテルの処方箋」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: まちなかホテル決戦

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