介護サービスの類型と最新動向

 介護報酬は3年毎に見直しが行われており、あわせて制度の改善にも取り組まれています。

 今年度からは新しい3カ年計画の期間が始まっています。

 3年前の状況は「介護現場の現代的課題と条例改正」で紹介しました。
 当時は以下のような改正が全体的な項目としてあげられていました。

  • 感染症対策の強化
  • 業務継続に向けた取組の強化(感染症や災害発生時)
  • ハラスメント対策の強化
  • 会議や多職種連携におけるテレビ会議等の活用
  • 利用者への説明・同意に書面ではなく電磁的対応を可能に
  • 記録の保存に電磁的記録を可能に
  • 運営規定等の掲示を掲示だけでなくファイル等でも可能に
  • 高齢者虐待防止の推進
  • 科学的介護の推進

 それから3年、新たな見直しに合わせ、丹波市の関係条例が改正されました。

議案25号 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の見直しに伴う関係条例の整備

 対象となる条例は「地域密着型」「地域密着型介護予防」「介護予防支援」「居宅介護支援」に関連する条例の4本。

 前回は条例毎に改正条例が出されたので4議案に分かれていましたが、今回は1本の改正条例で4条例をまとめて改正します。

 では、今回の改正の要点は何でしょうか。

介護サービスの4類型

 今回の改正の対象となるのは4つの条例と紹介しました。
 まず、それぞれの条例が対象とする介護サービスはどのようなものなのか。まとめておきましょう。

 前提として、介護保険は、介護認定を受けて「要介護1~5」「要支援1~2」に分類された利用者を対象とします。
 介護サービスの4類型を大きく言えば、要介護者向けの「地域密着型サービス」と要支援者向けの「地域密着型介護予防サービス」があり、それらのサービスを適切に受けられるように、要介護者向けの「居宅介護支援」と要支援者向けの「介護予防支援」によって、ケアマネージャーが支援している形です。

 以下では市内でそのサービスを提供している事業所の数(令和6年1月1日時点)も合わせて紹介します。

 まず、地域密着型サービスです。条例は「丹波市指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例」。

 要介護認定1~5の方を対象としており、できるだけ住み慣れた地域で暮らし続けられるようにということを目的として運営されます。なので「地域密着」なのですね。市民の方が利用されることが前提です。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護日中・夜間を問わず、訪問介護と訪問看護を24時間提供。訪問介護を行う事業所が、地域の訪問看護事業所と連携してサービスを提供する「連携型」で運営。1
夜間対応型訪問介護夜間(基本は22時から翌朝6時)の訪問介護。0
地域密着型通所介護日帰り利用、利用定員18人以下の小規模デイサービスセンター。 食事、入浴、排せつ等の介護その他の必要な日常生活上の世話や、生活機能訓練など。利用者の心身機能の維持や社会的孤立感の解消、利用者の家族の負担軽減を図るもの。36
認知症対応型通所介護デイサービスのうち、認知症状はあるものの、ADL(日常生活動作能力)が比較的自立している要介護者に対して提供。2
小規模多機能型居宅介護「通い(通所介護)」「訪問(訪問介護)」「宿泊(短期入所)」を柔軟に組み合わせて提供。住み慣れた地域で安心して生活することができるよう支援するもの。5
認知症対応型共同生活介護認知症の方が、少人数(9人)の家庭的な雰囲気の中で暮らせるようにする共同生活住居。認知症対応型共同生活介護計画(ケアプラン)に基づき、症状の進行を遅らせて、できる限り自立した生活が送れるように支援する。6
地域密着型特定施設入居者生活介護定員29人以下の地域密着型特定施設(介護付有料老人ホーム、養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅等)において、特定施設サービス計画(ケアプラン)に基づいて、日常生活上の世話等を行う。0
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護定員29人以下の特別養護老人ホームにおいて、施設サービス計画(ケアプラン)に基づいて、日常生活上の世話等を行う。1
看護小規模多機能居宅介護「小規模多機能型居宅介護」と「訪問看護」を組み合わせて提供するサービス。医療的ケアを必要とする方が住み慣れた自宅や地域で生活できるよう支援する。0

 次に地域密着型介護予防サービスです。条例は「丹波市指定地域密着型介護予防サービスの事業の人員、設備及び運営並びに指定地域密着型介護予防サービスに係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準等を定める条例」によります。

 主旨は地域密着型と同じですが、こちらは要支援1~2の方を対象としており、介護予防が目的です。同様の地域密着型サービスを提供している事業所が、要介護の方他に要支援の方も受け入れているケースが多いです。

介護予防認知症対応型通所介護軽度の認知症の利用者に対しデイサービスセンターなどにおいて日常生活上の世話を行う。介護予防が目的で、状態がそれ以上悪化しないよう支援する。2
介護予防小規模多機能型居宅介護「通い(通所介護)」「訪問(訪問介護)」「宿泊(短期入所)」を柔軟に組み合わせて提供、介護予防が目的となる。4
介護予防認知症対応型共同生活介護少人数(9人)の家庭的な雰囲気の中で暮らせるようにする共同生活住居。介護予防認知症対応型共同生活介護計画(ケアプラン)に基づき、症状の進行を遅らせて、できる限り自立した生活が送れるように支援する。介護予防が目的。6

 次に、居宅介護支援サービスです。条例は「丹波市指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営等に関する基準を定める条例」です。

 先ほど触れたように、要介護者向けの「地域密着型」サービスを適切に受けられるよう、要介護者を対象に、ケアマネージャーさんがプランを作成し、調整されるサービスです。

居宅介護支援事業所自宅(居宅)で介護を必要とする方が、自立した生活を営むために、ニーズ(必要性)に応じたサービスを適切に利用できるよう、ケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプラン(居宅サービス計画)を作成、それに沿ってサービスを手配、提供事業所と調整する。27

 最後に、介護予防支援サービスです。条例は「丹波市指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準等を定める条例」です。

 介護予防支援とは、要支援の方が、前述した地域密着型介護予防を適切に受けることができるように支援することをいいます。

 実はこの部分、このほどの改正で変わったところで、丹波市ではこれまで、この業務を4カ所ある地域包括センターで行ってきました。
 これがこのほど、上述した居宅介護支援事業所に業務委託できるようになりました。

介護予防支援事業所要支援1または要支援2の認定を受けた方が、自宅で自立した生活を営むために、ニーズ(必要性)に応じた介護予防のためのサービスを適切に利用できるよう、ケアマネジャーが、利用者の心身の状況や生活環境、利用者・家族の希望等に沿って、ケアプラン(介護予防サービス計画)を作成。それにそったサービスを手配、提供事業所との調整を行う。4

令和6年度介護報酬改定における改定の要点

 それでは、令和6年度の報酬改定の要点を、厚生労働省の「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」から抜き書きしましょう。

  1. 地域包括ケアシステムの深化・推進
    認知症の方や高齢者などに対して必要なサービスが切れ目なく提供されるよう、地域の実情に応じた柔軟な取り組みを推進する。(後述)
  2. 自立支援・重度化防止に向けた対応
    多職種連携やデータの活用等を推進し、自立支援・重度化防止を図る。これについては地域密着型介護老人福祉施設におけるユニットケアの質の向上のために研修の受講を努力義務とするもの。ユニットケアというのは、10人程度をユニットと考え、居室は個室ながらリビングや食堂などを共有し、共同生活をすることで、できるだけ自宅に近い環境で過ごすことを目指すものです。
  3. 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
    処遇改善や生産性向上による職場環境の改善を図る。(後述)
  4. 制度の安定性・持続可能性の確保
    すべての世代にとって安心できる制度の構築。事務所内で「書面掲示」に関し、ウェブサイトで掲載することを義務付けるなど。

 このうち「地域包括ケアシステムの深化・推進」に関連しては、次のような改定が行われます。

  • 「居宅介護支援」事業所が市の指定を受け「介護予防支援」も実施できるようになる。先ほど述べましたが、これにより地域包括支援センターの業務を「居宅介護支援」事業所に委託できるようになりました。
  • 「居宅介護支援」「介護予防支援」においてテレビ電話等によるモニタリングが可能になる。
  • 「地域密着型」「地域密着型介護予防」事業所と医療機関との連携体制を構築する。
  • 「地域密着型」「地域密着型介護予防」「介護予防支援」「居宅介護支援」いずれにおいても身体的拘束を禁止、ないし生命や身体を保護するため緊急やむを得ないときは記録を義務付ける。
  • その他

 また、「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」では、次のような改定が行われます。

  • 「地域密着型」「地域密着型介護予防」においてサービスの質と職員の負担軽減を検討する委員会の設置を義務付け。
  • 「地域密着型」「地域密着型介護予防」「介護予防支援」「居宅介護支援」いずれにおいても同一敷地内でない事業所・施設の管理者も兼務できることを明確化。
  • 介護支援専門員1人当たりの取扱件数を緩和
  • その他

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