博物館って厳密に言えば何を指すの?-文化芸術の現在地も含めて―

 植野記念美術館には「運営委員会」が設置されています。これまで、「丹波市立植野記念美術館条例」では、

第17条 美術館の運営を円滑に行うため、博物館法(昭和26年法律第285号)第20条の規定に基づき丹波市立植野記念美術館運営委員会(以下「委員会」という。)を置く。

 とありました。

 今回、この条文から「博物館法(昭和26年法律第285号)第20条の規定に基づき」を削除する条例が提案されました。

議案70号 丹波市立植野記念美術館条例の一部改正

 実は、そもそも博物館法を根拠とすることが間違っていたそうです。

 どういうことでしょうか。

博物館とは何か

 ここで「博物館法」を見ましょう。

第23条 公立博物館に、博物館協議会を置くことができる。
2 博物館協議会は、博物館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、館長に対して意見を述べる機関とする。

 とあります。23条となっており丹波市の条例が依拠する20条と違いますが、これは、博物館法が令和4年に改正、条ずれしたことによります。

 おそらく今回、この条ずれにともない見直しをかけたところ、そもそも根拠とすることそのものが間違っていたよね、ということになったものと推測します。

 ポイントは、この23条でいわれている「公立博物館」とは何か、ということです。

 博物館法から、博物館の定義を引用します。

第2条 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、併せてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関のうち、次章の規定による登録を受けたものをいう。

 「芸術」も含まれるので、美術館も博物館法の範囲ということでそこは問題ありません。

 一方、その後の条文で、博物館法に基づく博物館とするには、「次章の規定による登録」を受けなくてはいけないとあります。
 じゃあその登録の規定とは。

第11条 博物館を設置しようとする者は、当該博物館について、当該博物館の所在する都道府県の教育委員会の登録を受けるものとする。

 兵庫県教育委員会に届けるのですね。そこで登録されているものが、この法律でいう博物館だと。

 兵庫県教育委員会の「県内の登録博物館・指定施設一覧」を見ると、丹波エリアには登録博物館はありません。
 博物館法を参照すると、登録には学芸員の数、資料の調査研究体制等で一定の基準が必要なようです。登録しようにも、現行の予算・体制では難しいというのが正直なところでしょう。

博物館法改正の概要は?

 せっかくなので、令和4年に行われた博物館法改正の概要に目を通しておきましょう。

 「博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)について」から、「概要」を参照します。

 主な変更点は次の通り。

  • 目的に「文化芸術基本法」の精神を定める
  • 事業にデジタル・アーカイブ化を追加
  • 努力義務に他館との連携、文化活動など地域の活力向上を追加
  • 登録要件に法人類型による縛りを無くする
  • 登録審査の実施

 博物館の役割の多様化に合わせ、幅広い博物館を登録するようにする一方で、その審査体制をしっかり整えたということと理解します。

 また、平成13年(2001年)に制定された「文化芸術基本法」を新しく書き加えたところも変更点。

文化芸術基本法

 この文化芸術基本法、当初は文化芸術振興基本法として、日本の古典芸能の保護などに加え、アニメなど広く文化芸術を含めて制定されました。
 2001年のことです。21世紀を迎え、あらためて日本の文化を振り返り、その振興を図ろうという機運があったのでした。

 その後、2017年に大幅な改正がされ、現在の文化芸術基本法になりました。

 このときの改正の要点は、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の各関連分野における施策を法律の範囲に取り込むことでした。
 文化を単独でとらえるのではなく、社会の中で位置づけるという方向に変わったわけです。

 その前、2010年頃から「クールジャパン戦略」なども始まっていましたから、時代の流れではありました。

 そして、自治体においても「地方文化芸術推進基本計画」を定める努力義務が課されました。
 これを受けて、丹波市でも「丹波市文化芸術推進基本計画」が制定されました。
 文化芸術を「人づくり」「まちづくり」に活かしていくという基本理念が示されています。

 丹波市では現在、冒頭で紹介した「植野記念美術館」の他、「ちーたんの館」「氷上回廊水分れフィールドミュージアム」「青垣いきものふれあいの里」の4施設をミュージアムとして連携した活動を行っています。
 また、ライフピアいちじまなど文化ホールを利用した活動も行われています。

 文化はまちの基礎を作ります。

 より深めて、考えていきたいテーマです。

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