議案撤回―市長権限をめぐる混乱―

 12月議会に提案されていた議案が一件、撤回されました。条例案の条文に疑義が生じたため撤回されるもの。

 前市政における議案撤回の多さを批判されていた新市長にとっては忸怩たるところかと推察します。条例案を法令審査会で検討されたのは前市政時代ではありますけれども。

 撤回に至る過程において、残念なことがありました。

 というのは条例案の瑕疵について、質疑通告に基づいて12月18日の本会議で市議から指摘がありました。その際、当局は問題なしと答弁されたのです。

 質疑通告を受けているのですから、真剣に調査すれば、その時点で誤りが分かったはずです。議員からの質問を軽視し、自らに誤りは無いことを前提に答弁を組み立てる。この姿勢はどうなのか。

 撤回提案に伴う質疑の際、指摘させていただきました。

地方自治法から逸脱した条例を提案

 撤回された議案は、「市の財産の分類とその設置及び廃止」で紹介した「丹波市立氷上回廊水分れフィールドミュージアム条例」を制定する条例です。

 いわゆる設置管理条例ですね。その条文に、以下のような記述があったのです。

第12条 教育委員会は、特に必要があると認めるときは、第5条の観覧料及び前条の使用料の全部または一部を免除することができる。

(丹波市立氷上回廊水分れフィールドミュージアム条例案)

 これが地方自治法上問題あり、なのです。

 どうしてか。

 それは地方自治法に、市長の権限として次のように定められているからです。

第149条 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
(以下略)

 使用料を免除することは、ここでいう「二 予算を調製し、及びこれを執行すること」の範疇です。すなわち市長の権限。条例で勝手に「教育委員会」にしてよいものではないのです。

教育委員会の権限には何がある?

 一方で、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」という法律もあります。こちらは、教育委員会の権限を決めています。そこに次のように定められています。

第21条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。
一 教育委員会の所管に属する第三十条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。
二 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。
(中略)
十一 学校給食に関すること。
十二 青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。
十三 スポーツに関すること。
十四 文化財の保護に関すること。
(以下略)

 氷上回廊水分れフィールドミュージアムは「教育機関の用に供する財産」と位置付けられます。したがって、一般的には教育委員会の権限です。
 じゃあ、利用料もそうかというと、そうではない。施設の運営管理は教育委員会の権限としても、利用料金は予算の執行に関することなので、教育委員会ではなく市長権限なのです。

 もうすこし身近な例で言えば、「学校給食に関すること」です。先にあるようにこれは教育委員会の権限ですが、給食料金を決めることはできません。これは市長権限です。

 補足的な話ですが、この法律の23条では、条例で定めれば、ここで規定した教育委員会の権限のものであっても、市長の管理執行に委ねることができるとしています。
 具体的には、上記で「スポーツに関すること」が教育委員会の権限となっていますね。でも、マラソン大会など丹波市で行われるスポーツイベントは、教育委員会ではなく市長部局である、まちづくり部が担当しています。

 これは、この23条に基づき、丹波市では「丹波市教育委員会の職務権限の特例に関する条例」を定め、以下にある通り、学校体育を除くスポーツと文化財を除く文化は市長権限としているからです。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条第1項の規定に基づき、教育委員会の権限に属する事務のうち、次に掲げる事務は、市長が管理し、及び執行することとする。
(1) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
(2) 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。

(丹波市教育委員会の職務権限の特例に関する条例)

教育委員会で料金設定をするために

 では、逆はどうなのだろう。

 たとえば給食料金を教育委員会で決めて徴収できるようにできないか。
 氷上回廊水分れフィールドミュージアムの管理も教育委員会の所管ですから、利用料金も教育委員会の所管にしたいですよね。

 そういうことを想定して、地方自治法では180条の2に次のように定めています。

第180条の2 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の委員会又は委員と協議して、普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長(教育委員会にあつては、教育長)、委員若しくはこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し、又はこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる。ただし、政令で定める普通地方公共団体の委員会又は委員については、この限りでない。

 ややこしい文章ですね。要は、協議さえすれば、市長権限にあるものを教育委員会に委任できるっていうことです。
 余談ですが、このあたり、面白いですね。先ほど紹介したように教育委員会から市長に権限を委ねるには条例が必要だけど、逆は「協議」でいいんですね。

 ということで、その協議結果を明記したのが「丹波市長の権限に属する事務の教育委員会への委任に関する規則」です。
 他の自治体では、学校給食費なども明示して委任している場合もありますが、丹波市の規則では、以下のように包括的に委任しています。

第2条 市長は、その権限に属する事務のうち、次に掲げるものを教育委員会に委任する。
(1)教育委員会の所掌に係る事項について、収入の調定及び通知をすること。ただし、1件の金額が500万円以上のものを除く。
(2)教育委員会に配当された予算に基づき、支出負担行為及び支出命令をすること。ただし、1件の金額が1,000万円以上のもの及び公有財産の取得に関するものを除く。
(以下略)

 これがあるから、給食費も調定(調べて決めること)できるし、教育委員会が管理する施設について設置管理条例で市長権限として書き込んでおいても、ある意味自動的に教育委員会権限として委任されます。

気になり始めると気になるゾ

 ということで、一応整理して理解したわけですが。

 さて、そうなると現行「丹波市立歴史民俗資料館条例」にもなんだかアヤシイ記述があるなぁ。

第10条 資料館の入館料及び使用料(以下「使用料等」という。)は、別表に定めるとおりとし、前納しなければならない。ただし、教育委員会が特別の理由があるとして後納を認めるときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、特別展示の場合の使用料等は、教育委員会が別に定める。
第11条 市長は、特に必要があると認めるときは、前条の使用料等を免除することができる。

(丹波市立歴史民俗資料館条例)

 第11条はいいけど、第10条がどうなのかな。

 少なくとも10条2項の特別展示の使用料等の決定は、市長権限でないとおかしいですね。

 一方で1項については、徴収や免除はまさに予算執行に関わることだけど、前納か後納かは手続き上の話なので教育委員会の権限でも問題ないと理解できそうです。

 と理解しておこうと思ったら、今回の条例の撤回理由に、以下の条文があることも含むとの説明が。

第11条 使用者は、別表第2に掲げる使用料を前納しなければならない。ただし、教育委員会が特別の理由があるとして後納を認めるときは、この限りではない。

(丹波市立氷上回廊水分れフィールドミュージアム条例案)

 いやいや、この条文は、先ほどの考え方からすればこの内容で正しいと思うのですが。

 本会議で問うたところ、誤りとしたわけではなく、あくまでも「疑義がある」からいったん取り下げて精査するとのこと。

 いやはや。十分精査お願いします。権限の区分けは、他の条例にも関わってくる話だと思いますしね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください