公平委員会というお仕事

 2022年12月議会には人事関係の同意案件が2件出されています。

 法律の言い回しを受けて一方は「選任」、一方は「任命」となっているところがちょっと面白かったりしますが、そこに入り込むと沼になりそうなので、おいときます。

同意9号 丹波市・一部事務組合公平委員会委員の選任
同意10号 丹波市教育委員会委員の任命

 このうち教育委員については、以前「教育委員を選ぶときの条件」で詳しく触れましたので、ご参照ください。ポイントだけ引いておくと、以下が要件でしたね。

  • 当該地方公共団体の長の被選挙権を有する
  • 人格が高潔
  • 教育、学術及び文化に関し識見を有する

 そして、委員会構成としての要件は次の通り。

  • 委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じない
  • 委員のうちに保護者である者が含まれる

 今回もまた若い方、そして医師の方です。市外在住ですが、問題ないことは前回投稿の通り。

 児童虐待等の問題、コロナ禍を受けた子どもたちの心のケアの問題を意識しての任命でしょうか。考え方を聞きたいと思います。

公平委員会ってどんな仕事?

 さて、もう一つの公平委員会の選任。
 公平委員会というのは、次の職務をする組織です。

公平委員会は、(中略)職員の勤務条件に関する措置の要求及び職員に対する不利益処分を審査し、並びにこれについて必要な措置を講ずる。

地方自治法 202条の2の2項

 より具体的には、地方公務員法に定められています。

公平委員会は、次に掲げる事務を処理する。
1 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
2 職員に対する不利益な処分についての審査請求に対する裁決をすること。
3 前二号に掲げるものを除くほか、職員の苦情を処理すること。
4 前三号に掲げるものを除くほか、法律に基づきその権限に属せしめられた事務

地方公務員法 8条2項

 職員が自らの給与や処遇に不満があるときに、訴えることができる窓口と考えれば良いですね。

人事委員会と公平委員会

 公平委員会の設置方法は地方公務員法に定められています。

 規模が大きな自治体の場合は「公平委員会」ではなく「人事委員会」です。人事行政に関する調査立案から職員選考を含めて行うことが求められます。
 一方で、小さな自治体は「公平委員会」として前述した業務に絞った組織を持つことになります。

 なるほど。これは一体的に理解しておいた方が良さそうです。

 公平委員会というと職員の権利(保護)から発したものととらえてしまいがちですが、この流れをふまえると、人事についてを地方公共団体から独立させる、つまり首長から独立した中立的・専門的な立場で行わせようという意図があると考えた方がいいですね。

 ですから基本は人事委員会。ただし、小さな自治体の場合は人事の企画や選考まで独立させられないので、職員の不利益を防ぐ部分のみを規定としていると。

 ただし。

 地方公務員法第9条には、地方公共団体が条例で定めれば、公平委員会に「職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務」を行わせることができるとあります。
 地方公共団体が望めば、職員選考も公平委員会に委ねることができるのですね。

共同しての設置も可能

 自治体の規模によって、「人事委員会」なのか「公平委員会」なのかが決まると紹介しました。
 その線引きがどこかというと、人口15万人です。

 都道府県と指定都市は必ず人事委員会を設置しなくてはなりません。一方、15万人以上の市及び特別区は人事委員会又は公平委員会かを条例で決める。そして15万人未満の市町村及び地方公共団体の組合は公平委員会となっています。

3 人口15万未満の市、町、村及び地方公共団体の組合は、条例で公平委員会を置くものとする。
4 公平委員会を置く地方公共団体は、議会の議決を経て定める規約により、公平委員会を置く他の地方公共団体と共同して公平委員会を置き、又は他の地方公共団体の人事委員会に委託して次条第2項に規定する公平委員会の事務を処理させることができる。

地方公務員法 7条

 丹波市の場合、ここで紹介した4項に基づき「丹波市・一部事務組合公平委員会設置に関する規約」を定めています。
 そして、市だけではなく、氷上多可衛生事務組合及び丹波少年自然の家事務組合と共同して設置されています。事務局は丹波市役所にあります。「丹波市・一部事務組合」とあるうちの「一部事務組合」は、氷上多可衛生事務組合と丹波少年自然の家事務組合のことを指しているわけですね。

定数、任期、報酬は?

 ここで丹波市の「公平委員会のご案内」を見てみましょう。

公平委員会とは、地方公務員法に基づき、職員の利益保護と公正な人事権の行使を保障するため、設置された行政委員会です。

 と説明があります。「職員の利益保護」に並べて記された「公正な人事権」の部分が、先ほど述べた、首長から中立の機関であることを示していると考えれば良いでしょう。

 委員定数は3名任期は4年です。

 定数及び任期は、地方公務員法9条に定められています。

 任期については、3人が同時に変わることが無いよう、ずらして任命されるようになっています。というか、本来そうすべきなのが、丹波市ではそうなていなかったので、条例改正によって過ちを修正しました。
 そのあたりの経緯については、「111回9月議会議案徹底解説」で述べました。

 報酬は「丹波市特別職に属する非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例」に規定されていますが、日額7,000円です。

 正直、仮に先ほど紹介した「中立・公正」な立場で職務にあたっていただくには、あまりに少ない人数と報酬という気がしますが、こればかりは法律に定められた人数であり、常識的な金額でもありますので、やむなしでしょう。

公平委員会はどのくらい開催されている?

 ところで、公平委員会にあがってきている案件ってどのくらいあるのでしょう?

 これについては、令和3年度の決算から確認しておきましょう。

  • 委員報酬 171,500
  • 旅費 102,320
  • 負担金 104,900

 が主な出費で、その他費用を含め約40万円の決算額です。分担金というのは、兵庫県、近畿、全国それぞれの連合会に対して1.2万円~3.1万円、そして事務局研修会に約3.2万円というのが内訳。
 歳入の方では、共同設置している丹波少年自然の家事務組合と氷上多可衛生事務組合からそれぞれ約2.5万円ずつ収入し、そこに丹波市からの一般財源35万円を加えています。

 規約に「公平委員会の設置及び運営に要する経費は100分の25を関係団体均等に、100分の75を関係団体の職員の数に比例して当該関係団体が負担する」とあります。
 約40万円なら10万円分は3団体で均等割、残り30万円を職員数に応じてとなりますので、およそそのくらいになるのでしょう。

 活動状況については、定例会としては年1回ですが、ほぼ毎月臨時会を開催、年間15回の会議が行われています。
 この他に、それぞれの連合会単位ごとの研究会や総会があり、年間6回が予定されていましたが、コロナ禍により、中止、または書面開催となっています。その分、旅費等が抑えられているところはあったでしょう。

 で。

 1年間で、前年度までに審査請求のあった4件の不利益処分について審査が継続(令和元7月、令和2年3月、同9月、同11月受理分)しており、そのうち1件(令和2年3月受理分)の不利益処分について裁決が行われています(令和3年10月裁決)。

 さて。ここまでが公平委員会についての基礎知識。「次のページ」で、ではその選任についてどのような留意点があるか、確認しておきましょう。

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