議会選出監査委員は必要か?

 恒例の議案総解説、この12月議会に提出されている議案を紹介します。

 世の中的には新市長の「5万円バラマキ公約」がどうなるか気になるところかと思いますが、提案は年を明けてからになるということなので、ここでは触れません。

 今回のエントリーで、まずは同意案件を紹介します。

監査委員というしごと

 今回踏み込んで紹介したいのが、監査委員です(同じ同意案件なのに提案番号が離れているのは、議会からの選出に手間取り、起案するのが少しずれたためです)。

同意42号 丹波市監査委員の選任
同意47号 丹波市監査委員の選任

 監査委員は「地方自治法」195条以下に基づいた制度です。

監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査する。

(第199条)

 具体的には、本庁はもちろん各支所にも赴いて、直接部署から聴取したり書類確認をしたりするそうです。2月3月といった年度末や9月の決算審査月はほぼ毎日のように出なくてはならないとか。
 ちなみに報酬は、民間の識見を有する方が94,000円、議会からの選任が46,000円です(丹波市特別職に属する非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例)。

 丹波市の場合、監査委員は2名が選任されます。「丹波市監査委員条例」にあるように、そのうち1名は民間から、もう1名は議会から選出します。

 任命権者は市長なので、議会から市長に議員を一人推薦し、市長から提案された議案に対し議会で同意するという流れです。
 わずか2名でとも思いますが、前述の地方自治法による定めがそうなっており、条例を定めれば増やすこともできますが、あえてそうする理由も無しといったところですね(都道府県や政令指定都市は4名です)。

議選監査委員をめぐる議論

 ところでこの議会選出の監査委員(議選監査委員)、平成29年の地方自治法改正により、選ばなくてもよくなりました。

監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(議員である者を除く。以下この款において「識見を有する者」という。)及び議員のうちから、これを選任する。ただし、条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができる。

(第196条)

 このように、ただし書き以降が追加されたのです。

 この時の地方自治法改正は、地方自治体のガバナンス改革がテーマのひとつでした(「地方自治法の改正について(総務省)」参照)。
 決算不認定の場合に首長から対応を報告する規定を追加したり、首長の損害賠償責任の見直しがされたりといった内容もありました。

 そして監査制度についても、外部機関による監査を導入したり、監査基準を明確化したりといった改正が加えられ、議選監査委員の義務付け緩和も行われたわけです。

 当時の議論の概要は、「第31次地方制度調査会」の議事資料をたどっていくとつかめます。たとえば監査制度については「監査制度関連資料」などが提出されています。

議選監査委員を不要とする論拠

 議選監査委員をどうするかという議論の要旨は、総会で示された答申案に次のようにあります。

議選監査委員は、実効性ある監査を行うために必要という考え方で導入されたものであり、そうした役割を担うことについて評価する考え方から引き続き議選監査委員を存置することも考えられるが、一方で、監査委員はより独立性や専門性を発揮した監査を実施するとともに、議会は議会としての監視機能に特化していくという考え方もあることから、各地方公共団体の判断により、監査委員は専門性のある識見監査委員に委ね、議選監査委員を置かないことを選択肢として設けるべきである。

(人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申(案))

 つまり次のような理由で、議会選出の監査委員は不要ではないかと指摘されたわけです。

  1. 議会も行政予算に含まれるため議員が監査をすることは独立性に欠ける
  2. より専門性の高い人材や機関に監査を委ねるべき
  3. 議会は議会での審査を通して監視することに注力すべき

 なお、答申にはありませんが、もう一点指摘されるのが、

  1. 議会選出の監査委員が短期間で交代する

 ことによる弊害です。

 というのは、監査委員の任期は4年、議員の場合はその任期によるというのが法律上の定めですが、議会選出の監査委員は、議会での役職の任期に合わせて交代するのが慣例です。議会での役職の任期というのは、議長交代の任期とリンクしています。

 丹波市議会の場合だと2年、他の自治体では1年で交代というケースもある。そうなると1回決算を監査しただけで交代なので、ノウハウが蓄積しないという考え方です。
 2年というのは郡部の議会に多い任期です。一方で、都道府県や都市部の議会では1年任期のところが多いです。議員定数も多いので、早めに交代するということなのでしょうかね。
 ともあれ、これに合わせて議会から選出する監査委員も交代しますから、ちょっとめまぐるしすぎるというわけです。

 こうした議論を経て、結果的に各自治体の判断に委ねることになったわけですね。

 実際、たとえば大津市議会では議会選出の監査委員を置いていません。このあたりは同議会事務局作成による「議員選出監査委員の是非を考える」に詳しく述べられています。
 議選監査委員を置かない理由は、前述に重なる部分もありますが、以下の通りということです。

  1. 自治体事務が高度化するなか、専門性がより高い人になっていただく方が良い
  2. 議会費も対象でありより独立した人選が良い
  3. 監査委員には守秘義務があり議会での議論に制約がかかる

 3つ目の論点については補足が必要かもしれません。

 監査委員は、監査の過程で知ったことがらを外部に漏らしてはいけません。一方で、議会では決算を審査します。従って議会選出の監査委員は、たとえ監査過程で気付いたことがあっても、それをもとにした質疑ができないわけです。

 丹波市議会の場合でも、決算審査に議会選出の監査委員も出席しますが、発言をしないのが慣例ですし、決算認定の採決からは退場します。そうなると、決算審査から議員が一名欠ける、議会としては戦力が落ちるということにもなりますね。

それでも議選監査委員を必要とするのはなぜか

 丹波市議会としてもどうするか、この9月に議論した経緯があります。当局の意向も確認する中で、引き続き議会から選任することになりました。

 その理由は、先ほどの答申案の「実効性ある監査」を担保するためということではありますが、より具体的には、次のようなことと理解すると良いでしょう。

  1. 政策の妥当性という観点をもって監査できる
  2. 市政課題を大きな流れで把握したうえで監査に臨める
  3. 執行機関の監視という議会での経験を反映できる
  4. 市民の代表としての目線を活かして監査できる

 個人的には、民間の立場でこうした目線をもって監査できる方がいらっしゃれば良いと思いますし、議選監査委員は不要と考えています。
 議員としては政策そのものの適否という高所から決算に臨まなくてはならない、その点、監査の視点とは観点が違うのではという思いです。

 しかし、では政策的観点をもって監査に臨める民間の方が果たしているのかというと、自信を持って大丈夫とは言えない現状もあります。
 なんというのかな、シンクタンク的な存在が民間にあり、日常的に政策提言や行政や議会のチェックを行っているような環境だと安心なのですけれども。

その他同意案件

 監査委員以外の同意案件については簡単なご紹介でとどめます。

同意43~45号 丹波市・一部事務組合公平委員会委員の選任

 3名について新しく選任されます。
 公平委員会については「111回9月議会議案徹底解説」中「過去の間違いをどう正すか」の項で紹介しました。
 今回、あらためてくじでそれぞれ違う任期(4年、3年、2年)として選任されます。

同意46号 丹波市教育委員会委員の任命

任期満了に伴う再任です。

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