指定管理者制度について考える

 この12月議会に提出されている議案の紹介、今回は指定管理者制度について。というのは16施設(議案)と今回多く出てきているのです。

 この機会にまとめておこうかと。

指定管理者制度って何?

 指定管理者制度というのは、公の施設の管理運営に民間ノウハウを導入する制度です。平成15年に始まった制度で、総務省からは平成22年にその運用についての留意点が出されているので、あわせて確認しておくと有益です(「指定管理者制度の運用について」の発出)。

 丹波市でも、「指定管理施設一覧(丹波市)」にあるように、50近い施設が指定管理に出されています。

 担当部署は施設ごとに違うので、運用を統一的な基準で行うため、「指定管理者制度運用ガイドライン」を定めています。
 ガイドラインでは、「導入前」「導入時」「導入後」について基本的な運用方法が記されています。

 このうち「導入前」というのは、それぞれの施設が指定管理に向いているのかどうか、適否を判断する段階です。「市が管理運営すべき施設か」「指定管理者制度の導入により施設の安全性・継続性が確保できるか」「指定管理者制度の導入により費用対効果が確保できるか」という3つの視点から評価されます。

 12月議会に出されているそれぞれの施設の判断結果については「令和2年度 丹波市公の施設の指定管理者選定評価委員会 開催概要(導入の判定)」にあり、それぞれ指定管理に出すべきものとして結論されています。

 次に「導入時」というのは指定管理者を決定するにあたっての手順、「導入後」というのは指定管理後の評価方法について定めています。

導入時にチェックされること

 指定管理者の指定は、「丹波市公の施設の指定管理者の指定手続等に関する条例」に基づきます。
 ただし第3条を適用して公募の上審査して決定するのか、第4条の特例として「市が出資等をしている法人又は地域の活性化を図ることを目的として設立された団体」を特定して指定するのかという違いがあります。

 今回で言えば、以下の3つの施設が第3条による公募がかけられました。カッコ内はおよその指定管理料です(初年度)。

議案119号 丹波市斎場(年間6,000万円)
議案128号 丹波市立丹波悠遊の森(年間560万円)
議案131号 丹波市立大杉ダム自然公園(年間94万円)

 丹波市斎場については、今回初めて指定管理に出されるもので、2事業者から応募があり、そのうちの1事業者に決定しました。
 丹波悠遊の森と大杉ダム自然公園は、従来からの1事業者だけの応募でした。

 決定までの流れですが、指定管理の内容や事業者を選定する場合の基準を事前に決めます。その上で公募をかけ、応募者を「公の施設の指定管理者選定評価委員会」により審査して事業者を決定、協定書を締結します。
 多くの場合年度初めの4月1日が指定管理の始期になりますから、手続き上、12月議会での議決が多くなるというわけです。

 前述した3件の指定管理状況について、簡単におさらいしておきます。

 斎場についてはこれまで火葬業務を年間2,800万円ほどで委託していたのを、柏原・氷上合わせて全体を指定管理に出すものです。年間で柏原で500、氷上で300余りの火葬と柏原で450ほどの動物火葬がこれまでの実績です。使用料収入は2,200万円ほど。

 丹波悠遊の森は、平成28年度約15,000人だった利用者数が、令和元年度は2万人近くまで伸ばしてくれています。これに伴い収入額も4,000万円程度だったものが5,000万円を超えるようになり、利益も残る体質になってきました。おかげで、これまで750万円前後だった指定管理料も抑制できる見込みです。

 大杉ダム自然公園は、利用者数は年間700人前後で、収入額は180万円前後。管理費を引くと毎年50万円前後の赤字が出るということで、指定管理料を上乗せする計画です。

特例による事業者選定

 一方で、特例により、公募をかけないケースもあります。これが、先ほど紹介した条例の第4条を適用して事業者を指定するものです。

 基本的には公募が望ましいのですが、次のような条件が整っている場合は特例も認めると、ガイドラインでは定めています。

  • 施設の設置目的及び利用が地域住民に限定されるなど、地域の住民グループによる管理が効果的であると考えられる場合
  • PFI等の選定事業者が、管理運営を含めて一体的に事業を行う場合
  • 施設利用者に対し極めて高度の専門性を要する場合
  • 利用者等との関係性の維持が極めて重要である場合
  • 将来(当該指定期間内)にわたり他の担い手が存在しないことが見込まれる場合
  • 災害など緊急性がある場合
  • その他特例にすることに合理的理由がある場合

 今回以下の13施設については、この特例が適用されています。指定管理料が無料のものがほとんどです。唯一、青垣の今出川親水公園が若干の指定管理料を必要とする現状のようです。

議案121号丹波市立障害者地域活動支援センター
議案122号丹波市立とれとれ市農産物直売施設ひかみ四季菜館
議案123号丹波市立道の駅あおがき直販加工施設
議案124号丹波市立道の駅丹波おばあちゃんの里
議案129号丹波市立ウッディプラザ山の駅
議案130号丹波市立今出川親水公園(年間37万円)
議案132号丹波市立石生第1公園
議案133号丹波市立石生第2公園
議案134号丹波市立西中東公園
議案135号丹波市立西中西公園
議案136号丹波市立西中南公園
議案137号丹波市立西中北東公園
議案138号丹波市立西中北西公園

 障害者地域活動支援センターは50人程度が通所されており「利用者との関係の維持」が重要という条件にあてはまるでしょう。

 四季菜館については市内の農業者らによるグループに委託するとのことなので、同様の理由かと思います。
 ただ、利用者数が平成28年度の85,000人程度から令和元年は61,000人程度に減っているのが気がかり。売上は1,500万円程度を維持していますが、最終利益額は平成28年度の約650万円から令和元年230万円へと縮んでいます。今回の委託管理期間は勝負どころといえそうです。

 道の駅あおがきについては、やはり地域密着型の企業に委託するのが適当という考え方です。年間利用者実績は85,000人前後、売上高は9,000万円余りで、最終利益を確保されています。しかしここも減少傾向で、今回の委託管理期間は勝負どころですね。

 道の駅丹波おばあちゃんの里については、レストランなどは事業者が整備されてきた経緯もあり、今後も連携しての整備が必要とのことから、第4条を適用するとのこと。
 利用者数は平成28年度34万人から令和元年度37万人と増加。売上高も3億1,700万円から3億5,700万円へと増加しています。なにより最終利益が、100万円を切っていたところからここ2年は1,000万円を超えるようになりました。
 その結果、これまで250万円程度必要だった指定管理料が、無料で契約できることになりました。今後の伸びも期待できる施設です。

 ウッディプラザ山の駅については、丹波市商工会が管理されているものです。年間利用者数は約1万7000人。収支は400万円前後でトントンというところです。
 この収入は、レストランへの賃借料などということになろうかと思います。令和元年度から利用者数の算定方法が変わったので、経年での推移を見ることができませんが、今後の伸びを期待したいところです。

 今出川親水公園については、これもやはり地元の農事組合法人に任せる内容。
 年間7000人程度が利用され、収入は1,100万円前後です。ただし令和元年度は5,600人程度、売上約910万円と減少しました。収支はほぼトントンで、多少の指定管理料がかかります。

 旧氷上町内のそれぞれの公園は、丹波市においては「地域公園」という位置づけですが、「地域における住民グループによる管理が効果的」にあてはまると考えて差し支えなさそうです。

 ちなみにこの「地域公園」という分類、これら旧氷上町の公園だけに適用されている考え方です。旧町時代からの引継ぎの結果と思いますが、別途調べておきます。

インセンティブとしての再指定

 さて、4条の特例として特定の事業者を指名するケース、前述の基準のほか、もうひとつ可能性としてあるのがインセンティブとしての再指定です。
 これまでの指定管理状況を評価した結果とてもよく管理されている場合、同一事業者を指定する場合があるよ、という仕組みです。

 具体的には、再指定するには次の条件をすべて満たしたうえ、通算2期までという運用基準が設けられています。

  • 当該施設に対する市の政策(施設の位置づけ)に変更がないこと。
  • 建替えや大規模修繕など、市の施設運営方針に大きな変更がないこと。
  • 当該指定管理者の管理運営の状況(モニタリングの結果)が優良であること。(経営評価指標等について、例えば現指定管理者の3~4年の平均値が、前指定期間(5か年)の平均値を10%を上回るなど、数値目標を上回る数値を出した場合など。)
  • 次期の協定条件について、市と指定管理者の双方が合意できること。
  • その他、市が示す再指定のための条件を満たしていること。
  • 改めて市議会の議決が得られること。

 ここにモニタリング評価という言葉が出てきていますね。

 そうなんです。運用ガイドラインでは、指定管理者の管理状況をモニタリングし、それを評価する方法についても定めています。
 その概要は、次の図の通りです。

(指定管理者制度運用ガイドラインより)

 指定管理制度を有効活用して施設の活用を図るには、こうしたフィードバックサイクルが不可欠。
 今後も民間のノウハウを導入すべき施設は増えるのではないでしょうか。サイクルがしっかり回っているかチェックし、今後の活用の推進につなげたいと考えます。

設置管理条例

 なお、こうした施設の運営方法について定めた条例を「設置管理条例(「せっかん条例」と略します)」といいます。
 それに関する条例も出されているので、併せてご紹介しておきます。

議案126号 丹波市立悠遊の森条例の一部改正

 最近はホテルでも変動価格制が目立ちますね。繁忙期は高く、そうでない時期は安くする。上限価格を上げ、そうした運用をしやすいように改正するもの。また、休日を柔軟に設定できるようにするほか、キャンプサイトの運用について、テントに縛られない運用が可能になります。

議案127号 丹波市立薬草薬樹公園条例の一部改正

 グラウンドゴルフ場が新しくできますので、その利用料金を追加するもの。利用料金のような市民に直接関係する部分は、指定管理者が自由に決めるのではなく、あらかじめ条例で上限を定めることになっています。

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