政教分離と目的効果基準

 縁故使用地(「縁故使用地と旧慣使用地」参照、本来の所有者は現在の利用者だが登記上は市の名義になっている土地)を、本来の持ち主である神社に譲渡するという案件。

議案16号 市有財産の無償譲渡(賀茂神社)

 これ、以前撤回された議案が再提出されたもの(「市有地を宗教法人に譲渡することは可能か?ー政教分離の原則に照らしてー」参照)。

政教分離の判断基準

 宗教団体への市の土地の無償譲渡なので、政教分離が気になるところです。

 ぼくとしては、前回の提案時に調査研究を進め、「目的効果基準」に照らして問題なしと判断しました。

 目的効果基準というのは、政教分離を外形だけで見るのではなく、以下の二つの基準から判断するという裁判所が示した考え方です。

  1. 行為者の「目的」が宗教的意義を有するか否か
    行為自体を客観的に見て、一般人が社会的儀礼の一つにすぎないと評価する以上に宗教的意義を有するかどうか。
  2. その「効果」が宗教的意義を有するか否か
    一般人に対して、特定の宗教団体を特別に支援しているとの印象を与え、その宗教への関心を呼び起こすかどうか。

 詳しくは、「市有地を宗教法人に譲渡することは可能か?ー政教分離の原則に照らしてー」をご参照ください。

法律の専門家による判断

 議案撤回後、今回の提案に至るまでの段階で市の顧問弁護士と相談された結果を資料として入手しました(11月4日付報告書)。
 顧問弁護士の回答は次の通り。

(前略)目的効果基準に照らして判断した場合、憲法20条1項、同条3項、89条が禁止する政教分離の原則には違反しないと考えられる。

 ビンゴ! ですね。法律の専門家の眼からも、前回独自に分析した通り「目的効果基準」に添って判断されています。

 補足的に理由が記されていますので、そこから抜粋します。

無償譲渡の必要性・合理性、宗教法人に与える影響の程度などの事情を鑑みれば、本件行為によって宗教法人が新たに享受する利益が大きいとは言えず【←これ、効果基準ですね】、市と宗教との関わり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとは言えない【←目的基準ですね】と考えられる。

 もっとも、弁護士さんからの回答には、冒頭に、次の一文があります。

一般人の目から見て特定の宗教法人に対して便宜を図っているように受け取られる余地がないとはいえないが

 その通り、正直、ちょっと無理くりな気はしますけれどもね。

そもそも「譲渡」なのか

 というか。

 実はこの事件、そもそも「譲渡」という便宜を図った行為なのかどうかに疑問を抱いています。

 本来的には単なる名義変更にすぎないのではないかという気持ちがあり、目的効果基準を持ち出すまでもなく、そもそも政教分離の観点から問題視する必要がないのではないかと思っているのです。

 その件について、「旧慣使用権と公有財産譲渡の議会承認」で触れます。

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