介護保険料はどう決める?

介護保険料の財源構成

 介護保険の財源はどのように賄っているのでしょうか。

 基本的な考え方として、税金で50%、保険料で50%を前提としてます。
 税金で賄う分は、その半分(全体の25%)を国が負担し、残りの半分を都道府県と市町村が同額ずつ(12.5%ずつ)負担します。

 被保険者が負担するのは残り半分(50%)。これを第1号被保険者と第2号被保険者で負担するわけですが、人口比で割合が決められます。
 令和元年度でみれば、第1号被保険者(65歳以上)が3,440万人、第2号被保険者が4,200万人ですから、23%対27%

 ただし、先に紹介した「地域支援事業費」のうち「包括的支援事業及びその他の地域支援事業」については第2号被保険者からの保険料を充てることはしません。その分は国や都道府県、市町村がそれぞれに応分負担します。
 第1号被保険者が総額の23%を負担することには変わりありません。

 令和3年度予算書から、以上を確認しておきましょう。介護保険は特別会計として独立して予算組みされます。

【支出】
保険給付費 70億4,697万円
地域支援事業費 3億1,119万円
総務費 1億5,508万円
【収入】
保険料 14億898万円
支払基金交付金 19億3,749万円
国庫支出金 19億2,521万円
県支出金 10億6,225万円
一般会計繰入金 11億8,221万円

 分かりますかね。全体の支出が75億円です。それに対する分担は以下の比率でしたね。照らし合わせておきましょう。

  • 23%=17億円:第1号被保険者保険料徴収分
    後で述べるように負担の減額があるので実際は14億円
  • 27%=19億円:第2号被保険者分(支払基金交付金として収入)
  • 12.5%=10億円:県支出
  • 12.5%=10億円:市の一般会計から支出
  • 25%=19億円:国支出

 ざっとこういうわけです。

 なお、後に述べますが、今後3年間で2億円の基金取り崩しを予定されていますが、これは今回の当初予算では反映されていません。令和2年度の決算が固まって基金残高が確定した後、補正等で基金からの繰入を行いたいとのこと。

一人当たりの保険料はどうして決めるか

 では、一人当たりの保険料はどのように決まるのでしょうか。

 第2号被保険者の保険料は国が徴収しますので、市として決めなくてはいけないのは第1号被保険者の保険料です。
 簡単に言えば、前述した支出の23%にあたる分を第1号被保険者(65歳以上)の数で割れば、一人当たりに必要な保険料となります。

 保険料は「令和2年度介護保険料」にあるように、所得基準により11段階に分けられています。
 保険料の算定はこのうち第5段階を基準にします。本人は市民税非課税、世帯内に年金と所得をあわせて80万円を超える市民税課税者があるケースです。

 具体的な計算は次の手順で行われます。

3年間の総給付見込額×第1号被保険者負担割合23%
-格差調整増額(国から)+市独自事業費-市の基金から補填分
以上をもとに、下記の計算を加えて算出します。
×収納率補正99.3%÷第1号被保険者数

 説明を加えます。

  • 3年間の総給付見込額
    令和3年から5年までの給付見込額です。先に紹介した標準給付費211億6,914万円に介護サービス整備分4億9,462万円、地域支援事業費8億1,691万円が加わります。
    さらに介護報酬改定に伴う増額が1億3,597万円ある一方、一部サービスの対象段階を細分化することで高所得者の自己負担が増え、総額1億8,719万円の減額になります。
    差引で224億2,945万円となります。この23%ですから、51億5,877万円
  • 格差調整増額
    国の負担を25%と紹介しましたが、そのうちの5%分は実は伸び縮みするんです。後期高齢者が多かったり低所得者が多い自治体には多めに、逆は少なめにと。丹波市の場合、7%前後と2ポイント程度多めになります。その分が4億6,675万円減額要因となります。
  • 市独自事業費
    国の事業見直しで丹波市が行っていた紙パンツ等の現物給付が、令和4年度から「地域支援事業」から外されます。そこで令和5年6年については独自事業として行うこととし、2年間で1,413万円分の上乗せ要因となります。
  • 基金補填
    保険料が急に上昇することはできるだけ避けたいですよね。そうした調整のために「介護給付費準備基金」があります。そこから2億円を取り崩します。減額になりますね。
    この基金については、先の第7期の計画の際は残高2億6,000万円から1億6,000万円取り崩して計画されていました。ただ結果的に、3年間で逆に約1億5,000万円積み立てることができました。令和2年度末の基金残高予定は4億595万円です。
    そうした点からは、第7期の間に積み立てた分に上乗せした2億円というのは妥当なところかと思います。まだ2億円ほど余裕を残しますしね。また、上述したように国の介護報酬改定で1億3,597万円増額になりますから、その増額分相当額を補てんするという見方からしても妥当かなと。
    結果、ここまでで45億615万円となります。
  • 収納率補正
    皆さんが介護保険料を納入いただければいいのですが、どうしても納入できない方もいらっしゃいます。そこで収納率を99.3%として余裕をみます。補正後45億3,792万円
  • 第1号被保険者数
    3年間の合計なので、65歳以上の人口のほぼ3倍ですね。63,662人。これで45億3,792万円を割って、一人当たり71,280円。月額にして5,940円ということになります。

 以上が、今回提案されている介護保険料なんですね。

苦しいこのときに値上げ?

 ちなみに。

 今回の値上げ額ですが、具体的には月額50円、年間600円の値上げです。約0.8%の値上げということになります。
 コロナ禍でみんな苦しいし、なんとか抑えられないか。そうも思いますね。前述の計算からすると、あと3,800万円やりくりすれば、値上げしなくて済む。

 具体的には、基金からの取り崩しを2億円ではなく2億3,800万円にすれば良いだけの話です。基金残高に余裕はあるし。
 これはなかなか難しい論点。

 というのは、そもそも国の介護報酬が0.7%アップと決まったわけです(「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」参照)。
 介護現場も大変ですし、人材確保のためにも処遇改善が求められるところ。地域包括ケア推進などの課題もあります。仕方のないところでしょう。

 丹波市としては、せめてそれと同等の負担を介護保険料でもしてもらおうという考え方とのこと。0.8%ですから、確かに同等です。
 まあ、やむなしかなぁとは思いますが、いかがですか。

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