国民健康保険税の軽減を取り上げたところで(「国民健康保険税の軽減はこうなっている」)、この3月に決定した今年度の国民健康保険税について、振り返っておきます。
あわせて、混乱しやすい応能・応益負担について整理しておきますね。
丹波市の国民健康保険医療費及び保険料の現状
現在の国保をめぐる状況は次の通りです。
- 丹波市の国民健康保険医療費の総額は減少傾向
国保を利用して医療にかかられる人数は毎年減ってきており、何年か前までは13,000人程度だったのですが、令和5年度においては月当たり11,500人を切るようになってきています。それに伴い医療費も減少しており、月当たりにして5億円前後だったのが、1割程度少なくなってきています。 - 被保険者数が減少
一方で国保に加入されている人数(被保険者)も減少しています。令和2年までは増加傾向でしたが、令和3年から減少をはじめ、令和6年では1万937人と、前年より6.1%も減少しました。これは、多くの人が75歳になって後期高齢者医療制度に移行したこと、また社会保険の対象者がパート等にも広がったことに伴い、そちらに移られる方がいらっしゃることなどが原因です。 - 県への納付金は減少
令和6年度の丹波市から兵庫県への納付金は、令和5年度に比べて5億4,000万円減少し、16億5,916万円となります。もっとも、被保険者数が減少していますから、一人当たりにすると、151,701円と3.2%増となります。
結局、被保険者数が減るので総額としては医療費も納付金も減っているけれど、中身を見ると、一人当たりの医療費は高度化で上がっている、さらに後期高齢者支援分は増えるので、保険料も一人当たりでは高くなってしまうと。
なかなか厳しい。
ただし、これでは急激に増えすぎるので、基金から充填することで、一人当たり140,738円に抑制するというのが、丹波市の令和6年度国民健康保険税の基本姿勢です。
決定した国民健康保険税額は?
これをどのように割り振るか。
審議会における税率比較は以下の表の通り。
採用されたのはB案です。毎回のことではあるかな、据え置きでも急増でも無く、中庸を採用すると。
・議案22号 丹波市国民健康保険税条例の一部改正
- 所得割
医療給付費分 7.20%→7.26%
後期支援金分 2.30%→2.48%
介護給付費分 2.45%→2.52% - 均等割
医療給付費分 27,100→28,200
後期支援金分 8,500→9,500
介護給付費分 11,800→12,300 - 平等割
医療給付費分 20,600変わらず
後期支援金分 6,500→6,900
介護給付費分 6,100→6,300
なお、応能・応益割合は、医療給付費分、後期支援金分、介護給付費分とも48:52となります。
応能・応益はなんど考えてもややこしい
応能割と応益割。
所得に応じて徴収するのが応能で、一人当たりや世帯当たりで徴収されるのが応益。
丹波市では応能は資産割は無く所得割のみ。応益割は世帯で計算する均等割と、世帯人数をかけて計算する平等割があります。
応能・応益で昨年度50:50だったのが48:52になる、すなわち、応能部分の比率が下がる計画。
応益割合が増えるということは、定額で負担する分が増えるので、低所得者にとって辛い、という指摘もあります。
直感的にそうとれますね。
でも、丹波市は県下では平均所得が低い方なので、応能部分の比率を下げているという理屈なのです。
それで、ずっともやもやしてきました。
が、逆に考えましょう。所得水準の高いまちと低いまちがあった場合、高いまちに対しては応能部分を多くすることで、より多く徴収する。
仮にふたつのまちが同じ人口で同じ医療水準だったとしましょう。
A市は平均所得が高く、B市は低いとします。このとき、両市が県に納めるべき納付金を算定するとして、仮に同じ保険料率にすれば、A市はの納付金は多く、B市は少なくなりますね。
なので、仮に人口が同じでも、そもそもの納付金に差をつけることになります。
つまり、A市が県に収めるべき納付金は多くなり、B市は少なくなります。
で、この納付金は応能割(所得割)部分と応益割(一定額)部分がある。
A市の納付金が多くなったのは、平均所得が高いためですから、応能部分を多く設定するのが理にかなっています。B市が少なくて済んでいるのは、平均所得が低いためですから、応能部分を少なくする。
このように考えれば、すっきりしますね。
厚生労働省「国民健康保険における納付金及び標準保険料率の算定方法について(ガイドライン)(案)」という資料の8ページ~9ページあたりの記述も参照ください。