前回「国民健康保険税の仕組み」で、国民健康保険の特徴や保険料の中身、その決定過程についてご紹介しました。
では、そもそも被保険者が負担する国民保険税の総額はどのように算出されているのでしょうか?
今回は、誰に聞いても「ややこしい」と言われる魔窟(笑)に挑戦してみます。
国保財政の仕組み
国民健康保険は、丹波市の一般会計とは分けて、「国民健康保険特別会計事業勘定」という特別会計で運営されます。(以下「国保特別会計」)
丹波市の場合、国保特別会計は年間70億円規模です。歳入歳出の大枠は次のようになっています。
歳入 70億円 | 保険税収入 12億 | ・医療給付分 8.5億 ・後期高齢者支援金分 2.5億 ・介護納付金分 1億 |
県補助金 52億 | ・普通交付金 50億 ・特別調整交付金 0.1億 ・保険者努力支援分 0.3億 ・都道府県繰入金(2号分) 1.5億 ・特定健診等負担金 0.1億 | |
繰入金 5.4億 | ・保険基盤安定 3.4億 ・未就学児均等割 0.1億 ・職員給与費 1億 ・出産育児一時金等 0.1億 ・財政安定化支援事業 0.4億 ・地方単独事業波及分 0.2億 ・財政調整基金 0.2億 | |
繰越金 0.6億 | ||
歳出 70億円 | 総務費 1億 | |
給付費 50億 | ・療養諸費 43.4億 ・高額療養費 6.5億 ・出産育児一時金 0.1億 | |
納付金 18億 | ||
事業費 1億 | 特定健診 0.3億 他 |
先に整理しておくと、国民健康保険は、県が運営しており、市は窓口を担っています。
- 丹波市の役割
被保険者から保険税を徴収し(歳入・保険税収入)、一方で被保険者に代わって医療機関に対して医療費を給付します(歳出・給付費)。窓口なので、事務(歳出・総務費)や健康診断事業(歳出・事業費)を行ったりもしています。 - 県の役割
市が徴収した保険税を受け取り(歳出・納付金)、一方で市が支払った医療費について全額補助します(歳入・県補助金)。 - 国の役割
国からは運営に対する各種の支援策があり、県や市に助成しています。助成は一般会計に入りますので、市はその額を一般会計から特別会計に移します(歳入・繰入金)。
全体としては、こうした仕組みでお金が回っています。
被保険者が負担すべき保険料総額は?
ここで、歳出のうち、保険給付費に注目しましょう。
50億円ですね。これが医療を受けた際の自己負担以外の公費に当たる部分です。
国民健康保険は、保険給付総額を被保険者と公費で折半する原則です。つまり、ここでいえば50億円について、半分は公費で負担する一方、半分は被保険者が出し合って負担してくださいと。
公費負担分については、国が32%を定率で、また9%について都道府県間の不均衡などを反映する調整交付金として県に支給します。県はここに9%分を上乗せします。合計で50%ですね。
ということで、県は丹波市が支給した50億円分の給付について、いったんは全額を「補助金」の名目で市に支払います。
一方で、残りの50%にあたる25億円は、被保険者から丹波市を経由して受け取る必要がある。これが、市から県に支払うべき「納付金」です。
もう一度歳出を確認ください。実際の市から県への納付金は18億円ですね。
どういうことでしょうか。
実は県は国から、前述した負担割合の部分以外に、たとえば「高額医療費負担金」の1/4、「特定健診事業」の1/3、あるいは「保険者努力支援制度」などのお金を受け取っているのです。
保険者努力支援制度というのは、地方自治体による医療費適正化や予防医療、健康づくり活動等の実施状況に応じて国から支給される支援金です。
さらに県も、「高額医療費負担金」の1/4、「特定健診事業」の1/3分を上乗せする。
そういうわけで、被保険者が負担すべき総額は、これら支援策のおかげで半分より減る。そうして軽減された結果が、18億円というわけです。
国民保険の流れを分解図にしてみた!
とすると、丹波市の国保加入者の皆さんが負担すべき金額は18億円ということになりますね。
いえ、もう少しお待ちください。もう一度歳出をご覧ください。
保険給付費、納付金のほかに、運営のための総務費1億円と、特定健診などを行う事業費1億円があります。これらも被保険者みんなで担わなくてはなりません。
とすると、これらを足して20億円。
一方で、国民健康保険の負担を軽減する各種措置があるのです。ざっと図にしてみましたので、まずこちらをご覧ください。
いやあ、ここまで理解するのにずいぶん時間がかかりました。
先ほど県のところで説明したのは、中央のピンクの部分を中心にした流れです。公費負担が50%、残りの50%に対して、丹波市からの納付金18億円以外に国からのお金、県の一般財源からのお金が足されて、その他を構成していますね。
一方、県からは、保険給付分の50億円だけではなく、都道府県繰入、保険者努力支援制度分、特別調整交付金、特定健診分を上乗せして、合計で52億円が市への補助金として支出されています。
ということは、先ほど2億円足して20億としましたが、ここで2億円余分に補助が出ているので、この段階でそれを引き、再び18億円が被保険者が負担すべき保険料総額ということになります。
保険基盤の安定のために
それだけではありませんね。もっとも左側の流れを見てみましょう。次のような資金が、丹波市の一般会計を通して、丹波市国保の特別会計に繰り入れられています。
- 保険基盤安定繰入金
国民健康保険には、所得水準に応じて、応益部分をそれぞれ7割、5割、2割軽減する制度があります。この軽減分について、県が3/4、市が1/4負担する形で、特別会計に繰り入れます。丹波市の場合、これが約2.2億円。 - 保険基盤安定繰入金(保険者支援分)
「保険者」というのは国保を運営する立場、つまり自治体のこと。それぞれの自治体の低所得者の数に応じて、国が1/2、県が1/4、市が1/4負担する形で、特別会計に繰り入れます。丹波市の場合、これが約1.2億円。 - 未就学児均等割
先の投稿で紹介した、新しく子育て支援策として始まった制度。未就学児の場合、均等割部分を半額にする。財源構成は保険基盤安定繰入金と同じです。丹波市の場合、500万円弱です(図では0.1億円と丸めています)。 - 職員給与
国民健康保険に携わる職員の給与。一般会計から特別会計に繰り入れます。約1億円。基準財政需要額に入るとのことなので、国から地方交付税として措置されます。 - 財政安定化支援事業
国保の財政基盤の安定化を狙って国から交付されるもので、やはり地方交付税の基準財政需要額にはいるとのことです。約0.4億円。
このほかに、丹波市独自で行っている国保関連事業については、国や県の支援はありませんので独自財源として、一般会計から特別会計に繰り入れます。
図の下にある「地方単独事業波及分0.2億円」がそれです。
これら一般会計からの繰入金を合計すると、5.1億円になります。
ただし被保険者が負担すべき保険料の総額を計算する際は、所得による軽減措置による影響分は除きます。保険基盤安定繰入金の2.2億円を5.1億円から覗いて2.9億円。
これに繰越金0.6億円を足して3.5億円。
従って、先ほどの18億円から3.5億円を引いた14.5億円が、最終的に被保険者が負担すべき保険料の総額ということになります。
実際には、収納率を96.18%とみて、14.5億円を割り戻した15.1億円をベースに、一人当たりの保険料負担を計算します。
さあ、「次ページ」でいよいよ、一人当たり国民保険税額の決定に進みます!