今回、こども医療費の無料化の継続が議案として提出されています。
議案24号 丹波市福祉医療費助成条例の一部改正
これは兵庫県との共同事業によって軽減しているゼロ歳から中学生までの医療費について、市の独自予算を追加して自己負担を無くし、無料化しているものです。
特例として対応してきた期限をさらに3年間延長し、令和6年6月30日までとします。
兵庫県による助成制度と市による「無料化」
まず兵庫県の制度をご紹介しておきましょう。
- 乳幼児等医療費助成事業
小学3年生までが対象です。所得制限は市町村民税所得割税額23.5万円未満(0歳児は所得制限無し)。自己負担の上限を、通院は1日あたり800円(低所得者は600円)を限度に月2回まで、入院は医療費の1割(上限3,200円、低所得者は2,400円、4カ月目以降は自己負担なし)とし、それを超えた分を県が助成します。 - こども医療費助成事業
小学4年生から中学3年生までが対象です。所得制限は市町村民税所得割税額23.5万円未満。通院、入院とも通常3割の自己負担を2割に軽減。
丹波市の制度は、このいずれにおいても自己負担分を市が負担することにより、実質医療費を無料化するものです。
現在、同様の措置をとっている自治体は、県内41市町のうち36市町に及びます。
受給者と医療費の推移はどうなっている?
乳幼児・こども医療の受給者数は、平成22年の9,783人(15歳まで人口は10,417人)から徐々に減少し、令和元年度で7,362人(同8,160)となっています。
委員会で示されたグラフを引用します。
グラフにあるように、県及び市が負担する医療費の総額は、平成22年が1億2,175万円、丹波市が無料化を導入した平成25年から26年にかけてはその追加分が増加し27年は2億6,145万円となりました。
以降は減少傾向で、令和元年は2億1,633万円となっています。
一人当たりにすると、平成27年が2万9,891円、令和元年が2万9,394円と微減しています。
なお、助成の対象となっている世帯数は、所得制限があるので減ります。
令和2年度で乳幼児医療の該当世帯2,514、非該当世帯186、こども医療については該当世帯2,070、非該当世帯320とのことです。
乳幼児・こどもの受診実態は?
わが家も子どもが小さい頃はよく小児科通いしていた記憶があります。
令和元年度決算資料を参考に、年間受診件数をみておきましょう。
乳幼児は外来で約7万5,000件です。ただしこれは市の単独分。県事業分は約4万5,000件なので、3万件程度は自己負担800円までで収まっているということですね。
この件数には調剤も含みます。受診と調剤はおよそセットですから、実際の受診件数は約半分になります。
具体的には、入院650件、外来35,000件、歯科8,000件です。世帯数2,500で割れば、乳幼児のうちは毎月のように(あるいはひとつの症状で3回通院するとすれば季節ごとに)病院通い。そういえばそうだったかなぁ。
こどもの場合は入院50件、外来15,000件、歯科6,000件。2,000世帯とすれば、年6回くらいは、子どもの誰かが病院通いって感じですね。
あなたの実感と合っていますか?(平均値で扱うのがふさわしく無い可能性はあります。)
丹波市の財政負担は?
無料化に伴い市が追加で負担する費用はどのくらいでしょうか。令和2年末の人口をもとに推計してみましょう。
乳幼児等については、受給者は4,275人、一人当たり医療費は31,556円。
給付額はこれをかけて1億3,490万円となり、県事業分53%で7,149万円、市単独分は47%の6,340万円の負担です。丹波市が負担する、自己負担を超えるケースがどのくらいになるかは分かりませんので、このパーセンテージは昨年度決算をもとにした目安でしょう。
こども医療については、受給者は2,817人、一人当たり医療費は25,046円。
給付額はこれをかけて7,055万円となります。県事業分30%で2,116万円、市単独分は70%で4,938万円となります。これは自己負担3割分を1対2で案分ですね。
合計で2億545万円のうち、丹波市の追加負担は1億1,279万円となります。これが、市で無料化をするために必要とする予算。
ただし、県事業分の合計9,265万円は、県と丹波市の共同事業、つまり半々で負担します。なので、乳幼児・こども医療費全体としては丹波市はさらに4,632万円を負担する必要があります。
令和3年度予算で確認しておきます。支出は民生費のうち児童福祉費、収入は民生費・県補助金で入ってきます。
- 乳幼児等医療費 1億3,330万円
乳幼児等医療費助成事業補助金3,589万円
差引して市の負担は9,741万円 - こども医療費 6,760万円
こども医療費助成事業補助金 1,485万円
差引して市の負担は5,275万円
およそ1億5,000万円を、丹波市は乳幼児・こども医療費無料化にかけているということです。
高校生まで無料化するとどうなる?
ちなみに。ときどき話題にのぼる、高校生までの医療費の無料化。
仮にそれをするとどのくらいの財政負担になるか。以前、平成29年9月の予算決算特別委員会でも話題に出ていました。
こども医療費と同様に考えてみましょう。
まず、一人当たりの医療費を、平成30年度の医療費の統計データをもとに推測します。
年代別の医療費で15歳から19歳は年間8万5,000円。自己負担3割ですから、そこを助成するなら一人当たり約2万5,500円ということになります。
ただ、一人当たり医療費は地域によって差があります。こども医療費よりは少なくなるのが通常なので、丹波市では2万円台前半でしょうか。仮に2万2,000円としましょう。
丹波市の高校生年代(16歳~18歳)の人数ですが、令和3年1月末で1,865人。とすると、これらをかけると、およそ4,103万円。
約4,000万円の予算を必要とするということになりますね。
新年度の県内近隣市町の動向を見ると、多可町のように高校生の医療費を無料化するところが出てきました。
昨年9月に「兵庫県保険医協会」が公表した調査結果では、兵庫県下ではその時点で12市町が高校3年生まで無償化していたとのこと。
予算規模として小さくはありませんが、子育て支援策として見劣りしないためには、丹波市も足並みを揃えていく時期かもしれません。
ただ。
上記資料でびっくり。それをすると「国はペナルティとして国民健康保険への補助金の削減を行っている」だって。
ここ数年課題になっているテーマで、厚生労働省でも検討され、地方創生交付金を用いる場合は科されない、未就学児までは科されないなど改善はされているようだけれど、まだまだなんですね。
医療費無料化は子育て支援策か?
乳幼児・こども医療費無料化に1億5,000万円。
高校生まで無料化するなら、さらに4,000万円。
さらに言うなら冒頭で紹介したように、現在の乳幼児・こども医療費無料化には所得制限があります。これをはずすという考えもありますよね。
乳幼児を持つ世帯のうち約7%、こども医療費の方は約13%が非該当です。この比率を単純適用してざっと全世帯に拡大すると、乳幼児医療費は1億4,263万円、こども医療費は7,638万円になる想定。
県の負担分は変わらないので、増えた分はまるまる市の負担になります。したがって、所得制限を外すための追加費用は約1,800万円ということですね。
ということで、あと5,800万円追加して2億800万円の予算を組めば、高校生まで完全無料化できることになります。
子育て支援として、もっとお金をかけていいのではないか。そんなことも考えます。
とりあえず3年だけ延長して、その先また考えるなんていうのも、本腰が入っていない感じで気持ち悪い。
ただ、実はそもそも「乳幼児・こども医療費無料化」は子育て支援策かという論点があります。というのは、所得制限があるということは、家計への負担軽減策とも位置づけられるのです。
この論点は、覚えておいて良いと思います。
子育て支援なら「誰ひとりとり残さない」が原則です。しかし負担軽減策だから、高所得世帯は制限するという考え方がついてくるのです。
3年ごとの期限付きになってしまうのも、負担軽減策の場合、社会変動を適宜見直す必要があるからですね。
比較するのが良いかどうか分かりませんが、「介護保険料はどう決める?」で紹介したように、年間の介護関係の支出が約70億円。
国政と市政でレベルの違う話ではありますが、このことを思えば、「こども保険料」を徴収してはという小泉進一郎氏が打ち上げた話も、評価すべきところがあると思ったり。
本来、国で本腰を入れてくれればよい話で。
まあ、こども関連の支出は保育や教育もあるので、医療費だけで語るのは適しません。
子育て支援の話は、あらためてじっくりと。
丹波市内在住3人目の子供が昨年生まれた父親です。
仕事の通勤ができるなら明石市に引越ししたいと思いました。
丹波市も引越ししたいと思える子育て支援があれば、通勤できる人やこれから生活を考える人などで人口増に繋がればいいなぁと思います。
明石市は子育て世帯に人気ですね。実は丹波市も出産後の支援という点では決して見劣りはしていないのですが、明石市のどんなところが特に魅力的に感じるか、よろしければ教えていただけないでしょうか?