JR黒井駅前に「丹波市教育支援センター レインボー」があるのはご存知でしょうか。
不登校やいじめをはじめとしたさまざまな教育上の悩みについて相談できる教育機関です。
適応指導教室としての「教育支援センター」は文部科学省でも進めてきており、丹波市では平成10年に「レインボー教室」として開設しました。
その後、令和2年度から教育委員会による「丹波市教育支援センター設置規則」を定め、教育支援センターと位置づけて現在のハートフルかすが内に移設。
増加する不登校やいじめ等に対応する専門機関を集約し、「いじめゼロ支援チーム」など情報共有と連携体制の強化を図りました。活動の様子は「教育支援センター『レインボー』」をご覧ください。
議案39号 丹波市立教育支援センター条例の制定
今回の議会に提案されている上記条例案は、この施設を教育委員会の規則ではなく市の条例として位置づける、いわゆる設置管理条例です。
教育支援センターの研修機能を充実
これまでとの違いは、従来の規則で定めていた「業務」と新しい条例における「事業」を比較すると分かりやすいですね。
(1) 適応指導に関すること。
(旧規則第3条)
(2) 教育相談に関すること。
(3) いじめ問題に関すること。
(4) 家庭、学校及び関係機関との連携に関すること。
(5) その他丹波市教育委員会が必要と認めること。
(1) 適応指導に関すること。
(条例案第3条)
(2) 教育相談に関すること。
(3) いじめ問題に関すること。
(4) 教育関係職員の研修に関すること。
(5) 前各号に定めるもののほか、教育委員会が必要と認める事業
そう。
「教育関係職員の研修」が主たる事業に入っています。これが入ることから、条例による設置が可能になったということでしょう。
というのは、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に、以下の定めがあります。
地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができる。
(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第30条)
「教育機関」なら条例で置くことができるという規定なのです。
ということで。今般、この定めに基づき、教育関係職員の研修の場として、「教育支援センター」を位置づけるものです。
なぜ研修機能が求められるのか
それにしても。なぜこの時期に「教育関係職員の研修」を必要とするのでしょうか。
議案審議資料では、背景として「心を病む学校関係者」の増加が見られること、また経験が浅い教師が増えていることが述べられています。
裏付けとなる資料を請求しました。
現在の教育支援センターへの相談件数をみると、保護者等からの相談は平成30年度の150件から31年度145件、そして今年度は1月末現在で97件です。
一方、教職員からの相談件数は、平成30年度917件、31年度1,372件、そして今年度は1月末現在で1,615件。確かに、増加しています。
認知度が高まったという背景もあるかもしれませんが、不登校やいじめの構造が複雑化している、保護者対応の難度が高まっている、あるいは今年度についてはコロナという特殊事情もあったようです。
授業に向かう姿勢や児童への対応などの相談が多いと言います。
一方で、相談に乗ることができる先輩先生が少なくなっているという事情もあるようです。
教員経験10年未満と10年以上で分けて教職員数の推移をみます。
平成26年 | 平成29年 | 令和2年 | |
10年未満 | 147(34%) | 152(37%) | 152(39%) |
10年以上 | 284(66%) | 264(63%) | 233(61%) |
合計 | 431 | 416 | 385 |
年々、経験のある職員が退職で辞めていき、新人を育てる人が少なくなっている様子が見て取れます。
気になるのは、10年未満の教職員数にここ数年変化がないことですが、そもそも採用が県なので、市ではいかんともしがたいところではあります。
保護者意識やこども環境の変化に伴う学校現場における疲弊については、かねて心配しています。
特色ある丹波市の教育支援センター
県内で同様の施設を規則ないし条例で設置しているのは20カ所とのことです。
近隣では、丹波篠山市教育研究所が規則で、豊岡市こども支援センターが条例で設置、どちらも事業内容には「研修」は明記されていません。
あかし教育研修センターは条例設置、こちらはむしろ研修メインの事業内容のようですね。猪名川町教育支援センターも条例設置、こちらは丹波市と似たような感じです。
他市町の支援センターを見ていると、研修に絞っているか適応指導(不登校等の子どもへの対応)が中心か、どちらかに力点が置かれているところが多いようです。
教育長の話では、先生が学校から出て外で児童生徒と触れ合うことはとても重要とのことです。レインボー教室に担任の先生が来るようになって、不登校だった子どもの笑顔が見られるようになり、不登校率が下がったということも聞きました。
研修の場と適応指導の場が一体となった「教育支援センター」。県内でも類を見ない、先進的な取り組みだと見受けました。
教育支援センターの職員は6名。教職員を退職されたベテランの方を中心に、会計年度任用職員として採用され、業務にあたっていただいています。
新年度からは、学校教育課から正規の指導主事が週2回、教育支援センターに来られるようにもなるとのこと。
期待したいと思います。
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