「提案されなかった5万円公約(1)―庁舎整備基金問題はどうなった?―」「提案されなかった5万円公約(2)―財源問題の不都合な?真実―」「提案されなかった5万円公約(3)―政策の妥当性を問う―」と紹介してきた、いわゆる「5万円バラマキ公約」。
19日の本会議で賛否同数となり、議長採決で否決となりました。議長としては委員会で否決された結論の尊重、また賛否同数の場合は「現状維持」という原則に添って判断されたとのことです。
ぼく自身は、ご紹介してきた内容を踏まえ、反対と結論しました。「選挙で林市長を選んだ民意をどう考えているか」とのご批判もお聞きします。
もちろん、民意は重いものです。しかし、林市長自身が、「投票しなかった方の声も聞かなくてはいけない」と考え、公約の修正を行っていらっしゃいます。
そうなんです。「投票しなかった方の声」もまた民意。ぼくはそうした方々の声を代表しつつ、ではどうすれば良いかとの対案も示しながら反対いたしました。
どうすれば良かったか、については次のページで紹介するとして、まずは今回の「商品券交付事業」の問題点を3点、反対討論をベースにご紹介します。
感染症対策としての優先度が間違っている
今回の補正予算で提案されている商品券交付事業はおよそ13億円を必要とします。
当局はその財源として、国から交付される新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金約13億円のうち約6億円を見込まれています。
しかし、本議案審査の中で明らかになったのは、この約6億円のうち約2億5,000万円は、本来であればすでに予算化済みのコロナ対策事業に充てられたということです。
具体的には、商工振興関連や農業振興関連など、地域事情を踏まえた事業が含まれています。
また、6億円からこの2億5,000万円を引いた残り3億5,000万円は、11月時点に国に申請された段階では、他のコロナ対策事業に充てる予定となっていました。そこには、本予算で中止されようとしている8,700万円の水道基本料金減免も含みます。
11月申請時点で計画されつつ、商品券交付事業を優先して制度設計が進んでいないコロナ対策事業には、第三波のさなかでまさに求められている事業が多く含まれています。
たとえば青垣診療所やミルネの感染症対策など地域医療体制の強化、こども園職員奨励金やアフタースクール感染症対策等の子育て環境の安心につながる事業、あるいは市役所テレワーク環境整備や窓口デジタル化など庁舎環境を向上する事業などです。
本予算を審査する過程で、これらの事業より商品券交付事業を優先した判断基準を尋ねましたが、回答は得られませんでした。
私は、今回の補正にあたっては、商品券交付事業ではなく、第三波以降を見越した感染症対策関連事業を優先すべきであったと考えます。
【この論点の詳細は「提案されなかった5万円公約(2)―財源問題の不都合な?真実―」をご参照ください。】
財政の健全性が低下し危機管理能力が喪失
今回の商品券交付事業には、予算書に示された一般会計での負担7億円だけではなく、本来臨時交付金で手当てされるべきだった2億5,000万円を加え、およそ10億円にのぼる丹波市独自の財源を必要とします。
その結果、昨年度で54億を超えていた丹波市の財政調整基金は40億円まで減少し、さらに来年度末時点では25億円まで減少することが、当局から提供された資料から読み取れます。
この25億円という基金残高は、丹波市が行革アクションプランで目標としている45億円を大きく下回ります。
私は、このことを危惧します。
仮にこの状況で来年度、ウイルスが変異するなど新しい危機状況が生まれたとき、あるいは近年増加する水害による複合災害に見舞われた時、私たちは対処できるでしょうか。緊急的に市の財政から対応する余裕があるでしょうか。
きわめて厳しいと言わざるを得ないと考えます。
その一端は、すでに今この時点でも訪れています。
予算決算常任委員会で、今後の新型コロナウイルス感染症対策への備えを尋ねられた際、当局からは「国の次の補正をみながら考える」という主旨の返答がありました。
これはすなわち、今この時点でさえ、国の交付金に頼らざるを得ない状況を示していると言えないでしょうか。市として独自財源を用い、先手先手でコロナ禍に備える余裕を失っているということではないでしょうか。
基金残高を目標値まで戻すための負担を将来世代にかける点も心配ですが、なにより目前の状況に対して、これでは市民に安心してほしいと言える状況ではありません。
今は市民への「還元」を目指すのではなく、財政的な余裕を確保し、想定される危機に対応できるようにしておくのがなにより市民のためですし、現時点での正しい危機管理であると考えます。
【この論点の詳細は「提案されなかった5万円公約(1)―庁舎整備基金問題はどうなった?―」をご覧ください。】
施策の費用対効果への説明がつかない
本補正予算の説明にあたり、市からは、商品券交付事業の目的は「市民生活の支援」と「地域活力の再活性化」と示されました。
この2点について、費用対効果をみてみます。
まず「市民生活の支援」についてはどうでしょうか。
地域金融機関においては、昨年の国からの特別定額給付金の後に預金残高が増えています。このデータからは、市民全員が生活支援を求められている状況では無いことが推測されます。
一方で社会福祉協議会による緊急小口貸付や総合支援資金の利用状況はどうでしょうか。
いずれも昨年の緊急事態宣言時に利用者が急増しており、生活困窮者がいらっしゃることは確かです。しかも総合支援資金についてはおよそ半数の方が貸付延長を申請されており、生活の回復に時間がかかっていることが推測されます。
すなわち、本来であれば市民全員を対象とするのではなく、こうした本当に困っている人にしっかり届くような施策が望ましいのです。
たとえば、総合支援貸付を延長された方の年代は、40歳代19人、50歳代14人と続いており、主として子育て世代の方が多いのではないかと推測されます。
令和2年度12月末現在、丹波市の20歳未満のお子様の人数は10,503人です。仮にこれらお子様一人につき3万円を給付する。こういう形であれば、財政を痛めることもなく、また生活支援が特に必要と推測される子育て世帯に支援が届きます。
このような「子育て支エール事業」であれば、子育てに手厚い丹波市として、まさに市長が提唱される「帰ってこいよと言えるまち」への大きな一歩になったのではないでしょうか。
もう一点の「地域活力の再活性化」すなわち経済支援に関してはどうでしょうか。
商工会からの要望もあり、こちらは確かに必要であると考えます。
ただし中小企業景気動向調査を見ると、景況感は業種によってばらつきがあります。
先ほどの総合支援資金の貸し出し状況でも、職種別では建設業や飲食業が多くなっています。
こうしたところは、自粛の影響でそもそも需要が蒸発するなど、商品券を配っても支援にならない可能性があります。
むしろ、昨年実施して好評だった「飲食店の消費促進支援」や「中小企業者販売促進支援」、また1,387件の応募があった「中小企業者事業継続応援事業」などの再実施の方が効果を発揮できるのではないでしょうか。
仮に地域商品券を発行するにしても、プレミアム商品券にした方が効果的です。
たとえば昨年実施したプレミアム商品券では、1億5,000万円の予算執行に対し、6億5,000万円分の商品券が市中に出回りました。
今回市中に出回る商品券は13億円分です。プレミアム商品券にしておけば、3億円弱の投資で、同じ効果が得られたことになります。
こうして考えていくと、「市民生活の支援」と「地域活力の再活性化」、いずれの視点からも、費用対効果に疑問符のつく事業であると考えます。
以上、1つには「新型コロナウイルス感染症対策としての優先度」、2つに「財政の健全性の低下による危機管理能力の喪失」、3つに「施策の費用対効果」、これら3つの観点から、本補正予算に反対しました。
ところで、このことを逆に言えば、1つに「今回の事態において必要な感染症対策を優先し」、2つに「新たな財政負担の無い範囲で予算を抑え」、3つに「対象を絞って本当に必要な施策」にすれば、賛成できていたのです。
次のページで、代替案について整理してお伝えするとともに、現状、対立した状態のままの市民感情の解消に向けて、市長に期待するところを記します(この対立を解消できるのは市長しかいないと思います)。
おっしゃる通りです。市長の言葉は感情的で論理が有りません。言葉の持つ意味が曖昧で到底市民を納得させられませんね。公約の5万円 3は中途半端だから5万円にしとけ。この言葉を マスコミの前で喋る様では根拠が有りません。責任を参謀に負わせてます。根拠をどこまで追求しても答えは有りませんね。最初の公約を審議していたらある程度の結論は出たはずです。
市長はもう詰んだかな そんな感じです。