提案されなかった5万円公約(3)―政策の妥当性を問う―

 話題になっている「5万円バラマキ公約」。

 「提案されなかった5万円公約(1)―庁舎整備基金問題はどうなった?―」「提案されなかった5万円公約(2)―財源問題の不都合な?真実―」に続き、その内容について考えます。

 今回の提案は、2万円の商品券の配布。予算規模13億2,948万円。

 なお、今回の補正予算には医療従事者向けのワクチン接種を始めるための予算2,500万円も含まれています。
 なのでこれを否決したらワクチン接種も遅れるのではと心配される声も聞きますが、大丈夫、そんなことはありません。昨年度も緊急の事案には臨時議会を開いて対応してきました。
 ちなみに他自治体では議会が開かれていませんから、首長の専決処分で事業実施をされているところも多いかと思います。

議会でチェックすべきこと

 離れたところからまずご紹介しますが、「丹波市議会基本条例」に次の定めがあります。

第12条 議会は、重要な政策について、論点を明確にし、政策水準の向上と市民への公開のため、市長に対し、次に掲げる事項の説明を求めるものとする。
(1) 政策の発生源
(2) 提案に至るまでの経緯
(3) 他の自治体の類似する政策との比較検討
(4) 市民参加の実施の有無とその内容
(5) 総合計画との整合性
(6) 関係ある法令及び条例等
(7) 財源措置
(8) 将来にわたるコスト計算

 こうした視点で政策をチェックしなさいということです。今回の「5万円バラマキ公約」の場合、(3)(4)はあまり深く関係しませんし、(6)(7)(8)については、これまでのエントリーで検討しました。

 では、(1)にある政策の発生源を問うとはどういうことでしょうか。明確な定義はありませんが、およそ次のような点を「必要な資料の提示を求め」ながら(同じく議会基本条例より)、確認していくことと考えられます。

  • 必要性
    政策が求められる課題背景が確かに存在するか。
  • 実効性
    課題への解決策としてその政策が確かに機能するか。
  • 費用対効果
    想定される効果に対して合理的なコストか。

市民全員を対象とした給付の必要性はあるか?

 今回の補正予算の概要説明資料に、次のように書かれています。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、その影響を受けている市民生活を支援し、市民総がかりでポストコロナ社会に向けた地域活力の再活性化を図るため、生活応援商品券を全市民に交付する。交付にあたっては、市民に寄り添った生活支援と、市内消費の喚起による市内事業者への支援の両方に効果がある「たんば共通商品券」を活用する。

 この中で政策の必要性については「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、その影響を受けている市民生活を支援」「市民総がかりでポストコロナ社会に向けた地域活力の再活性化を図る」という二つがあげられています。

 一つ目の「影響を受けている市民生活を支援」についてはどうでしょうか。

 必要性から対策に落とし込むには、「影響を受けている市民」とはどういう状況かを明確にしなくてはなりません。その結果「市民全員に商品券交付」という施策が立案されるというのが本来の流れ。

 そこで、市民についてどのような情報を根拠として施策立案に至ったか尋ねたのですが、「根拠はない」とのことでした。つまり、資料の提出をいただけない。
 困りました。報道の街頭インタビューでも必ず「自分は必要性を感じない」という人がいらっしゃいましたね。

 何か根拠はないか。自分で調べてみました。

 ひとつは、昨年の国からの10万円の定額給付の際の市民生活の状況はどうだったか。
 北近畿経済新聞によると、丹波市にとって身近な中兵庫信用金庫で、預金残高は2.8%(151億円)増えたということです。ということは、貯蓄に回す余裕がある世帯も一定数あるらしい。

 では、社会福祉協議会が行っている生活困窮者への緊急小口貸付(10万円以内)はどうだろう?

 昨年の3月で2件だったのが、4月32件、5月50件と急増し、その後9月まで20件前後で推移、10月5件、11月13件となっており、合計で187件ありました。

 同じく社会福祉協議会による、単身世帯で月額15万円以内を3カ月借りられる総合支援資金の方はどうだろう?
 4月3件、5月6件だったのが6月27件と急増し、7月8月9月と20件程度で推移、10月は12件、11月5件となっており、合計で113件が対象になっています。
 加えて、その約半数はさらに3カ月の貸付延長を受けられており、簡単に元の生活には戻れない様子です。

 すなわち、市民全員が困っているという証拠はない一方で、困っている人は本当に困られている状況です。

困っている人に支援するのが市の役割

 ではどのような人が困られているのでしょうか?

 総合支援貸付を延長された55人の方の年代は、40歳代19人、50歳代14人、60歳代12人、30歳代7人と続いており、いわゆる子育て世代を中心に苦しいのではないかと想像されます。

 また、職種では建設業12人、飲食業11人と続いていて、一般にコロナの影響を強く受けるとされている業種でやはりつらい状況なのが見て取れます。

 生活支援であれば、これら本当に困っている人に手厚く配布したいですよね。

 議会での議論では線引きが難しいとの声もありましたが、この根拠をもとにすれば、子育て世帯に配布することについては説明がつきそうです。
 令和2年度末時点の丹波市の20歳未満のお子様の人数は10,503人です。仮に同じ予算規模なら、お子様一人につき10万円を配布できる。(財政の現状から考えたら、実際には3万円程度が妥当な水準。)

 こうした形なら線引きはできますし、子育て世帯に手厚く支援となれば、丹波市として「子育て応援のまち」とアピールするチャンスにもなります。(市長の言われる「帰って来いよと言えるまち」にもつながりますよね。)

 また、前述の職種別のデータからは、建設業や飲食業など職種を絞った経済支援が重要ではないかとも思えます。

 次のページで、経済支援の観点からの検討を加えます。

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