提案されなかった5万円公約(3)―政策の妥当性を問う―

経済活性化は求められているか?

 提案理由の二つ目、「市民総がかりでポストコロナ社会に向けた地域活力の再活性化を図る」について検討します。

 こちらはどうでしょうか。こちらも、市はその根拠を示せませんでしたので、ぼくなりに把握できる範囲で調べてみました。

 昨年12月に発表された「第144回なかしん中小企業景気動向調査」を参照してみましょう。
 すると、コロナ禍にまきこまれた今年に入って業況が悪化し、6月期に底を打った後、9月期、12月期と回復に向かっていた様子が見えます。

 しかし、この先は再び悪化が予想されている。

 市議会には12月7日付で商工会連合会から以下のような要望書が上がってきています。

丹波市内の多くの中小・小規模事業者においても、コロナウイルス感染症の影響は大きく長期化しており、集客及び商品サービスの利用拡大を図り、低迷している消費を拡大するためにも、更なるコロナ対策の支援を強く要望いたします。

 確かに、なんらかの経済活性化策は不可欠でしょう。

 しかし、先ほども述べたように、業種を絞った支援策が向いているように思います。

 景気動向調査でも、業種によって開きがあることを確認できます。
 前年同期比では、製造業で19.6、卸売業で18.3、小売業で13.9、サービス業で23.0、建設業で36.7、不動産業で16.7減少。
 やはり建設やサービス業で影響が大きいですね。

 こうした業種の方は、そもそもニーズそのものが「蒸発」ないし「自粛」の対象ですから、いくら商品券を配っても業績への効果は期待できません。
 本当に必要な事業者に支援が届かない。

 同じやるなら、昨年実施して好評だった「飲食店の消費促進支援(1,500万円)」や「中小企業者販売促進支援(3,000万円)」、また1,387件の応募があった「中小企業者事業継続応援事業(1億3,400万円)」などの方が効果を発揮できそうです。

経済対策ならプレミアム商品券の方が効果的

 参考までにですが、経済活性化ならプレミアム商品券の方がレバレッジ(てこ)が効きます。

 たとえば4万円で5万円分の商品券を購入できるとなると、行政としては1万円の持ち出しで5万円分の効果があるわけです。
 さらに、商品券を購入できる余裕がある所得層の人たちに協力してもらうことで、高額商品の購買が促される。経済のパイが大きくなります。Go To トラベル事業がそうでしたね。高額のプランほど恩恵があったと報道されていました。

 丹波市において、コロナ対策として昨秋、約1億5,000万円かけてプレミアム商品券を発行した際の経済効果はどうだったか。
 商品券で4億400万円、たんばコイン(スマホ版)で2億4,500万円の発行でした。回収率(店舗で利用された分)は昨年末時点で商品券は75%、たんばコインは50%です。

 分かりますかね。
 税金の投入は1億5,000万円、市中に回る経済規模は6億5,000万円。これが、レバレッジが効くということです。

 今回13億円分の商品券を配布されるわけですが、仮にこれをプレミアムとして販売する方式であったら、予算は3億円強で収まるということです。

 ただ残念なのは、商品券を実際に利用される店舗のうち、地元の小型店舗は3割弱で、7割は他市に本社機能のある大型店舗、中型スーパー等です。
 そうした店舗で働いていらっしゃる市民の方がいらっしゃるので、それでも無意味ということはないのですが、頭に入れておかなくてはいけないデータではあります。
 たんばコインだと地元商店が中心なので、できればこちらが普及することが望ましいです。

 以上、「政策の発生源」について検討しました。

 最後、「提案に至るまでの経緯」についてエントリーを分けて検討し、今回の「バラマキ公約」に関する一連の投稿を終えたいと思います。

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