国民健康保険税って高いですよね。わが家でも毎月痛感しています。
毎年この時期に、次年度からの国保税額を決定する議案が提案されます。
・議案20号 丹波市国民健康保険税条例の一部を改正
国民健康保険は「保険料」という場合と「保険税」という場合があります。
根拠法が違うので消滅時効に違いがありますが、どちらも同じものと考えて構いません。
- 国民健康保険料
国税徴収法による徴収。消滅時効2年、大都市圏での採用が多い。 - 国民健康保険税
地方税法による徴収。消滅時効5年、地方での採用が多い。
国民健康保険制度は1938年(昭和13年)に創設され、当初は保険料だけだったのですが、徴収率の向上を狙い、1951年(昭和26年)に地方目的税として加えられたという経緯のようです(藤貴子「国民健康保険税についての一考察」)。
理論上は「保険料」の方が近いのでしょうけれど、徴収する自治体の側としては「保険税」の方が有利なので、多くはそちらを採用しています。
今年の条例改正ポイントをご紹介、する前に。
そもそも国民健康保険って何だ?
そもそもの仕組みを整理しましょう。
国民健康保険というのは、例えばお医者さんにかかったときに窓口負担が実際の医療費に対して3割とかで済むようにしている仕組みです。みんなでお金をプールしておいて、個人負担を抑えます。
同様の仕組みとして、会社員には「組合健保」ないし「協会けんぽ」があります。また、公務員は各種「共済組合」があります。これらは被用者保険(社会保険)って呼んでいます。
これに対して国民健康保険は、主として個人事業主やその家族が加入するもの。会社員でも定年後はこちらに切り替えることが選択肢に入ります。
また勤めていても、年収が106万円に満たない場合などは勤め先の被用者保険に入れず、国民健康保険を選ぶ方もいるでしょう。
医療費の自己負担割合は次の通り。
- 未就学児 2割
- 小学生~70歳未満 3割
- 70歳~74歳 1割または2割
このほか、高額療養費の場合は、所得に応じて自己負担限度額が定められています。このあたりは社会保険と同じですね。
扶養制度がない国民健康保険
国民健康保険制度への加入は74歳以下です(75歳からは後期高齢者医療制度に加入)。支払いは世帯で一括して支払うのですが、世帯人数に応じた「均等割」というのがあります。
このあたり、被用者保険と比べて不利なところです。
被用者保険の場合は「扶養」の考え方があり、年収130万円未満なら世帯主の保険が適用され、保険料を払わなくて良くなっています(同居なら3親等以内まで)。
国民健康保険にこの考え方はありません。世帯人数分の均等割が必ずかかります。
ついでに言うなら、被用者保険の場合は企業側が保険料の半額を負担してくれるのもありがたいですね。
子育て支援のための国保税改正
扶養家族制度が無いということは、子どもの数が多いほど保険料負担が高くなるということです。少子化対策という流れに逆行している感じですね。
こうした議論は前からあって、今回の条例改正にはこうした議論を反映した改正も含まれています。
それが、国で進められた「全世代型の社会保障を構築するための健康保険法等の一部改正」を受けた改正です。
具体的には、子育て支援策として、未就学児の均等割額を半額にするものです。その分の財源は国から出てきます。
令和4年度丹波市の場合、一般会計を通して、470万円が「未就学児均等割保険税繰入金」として補てんされます。
子育て支援策と言うなら、本音では子どもの均等割を無くしてほしいところ。国保財政が厳しくなるのは分かりますので、持続性と併せて考えると制度設計が難しいのは分かりますが。
国保の額はどう決まる?
国保は、前年の総所得金額(収入から経費を引いた額)をもとに算出されます。
基礎控除(合計所得が2,400万円以下なら43万円)があるだけで、扶養控除や医療費控除などがありません。
だから所得税や市民税と比べて基準総所得金額が高くなります。
算定の基礎となる表は以下の通りです(詳細は丹波市「国民健康保険税の算定方法」参照)。
区分 | 医療給付費分 | 後期高齢者支援金分 | 介護納付金分 |
所得割 | 8.00% | 2.55% | 2.75% |
均等割 | 27,100円 | 8,500円 | 11,800円 |
平等割 | 20,600円 | 6,500円 | 6,100円 |
課税限度額 | 630,000円 | 190,000円 | 170,000円 |
応能応益割合 | 50:50 | 50:50 | 50:50 |
縦軸、所得に応じて決まる「所得割」と世帯人数に応じた「均等割」、そして世帯ごとの「平等割」の積み上げです。
さらに横軸、「医療給付費分」「後期高齢者支援金分」「介護納付金分」それぞれがあります。
医療給付分というのは通常の医療保険部分。
後期高齢者支援金分というのは、後期高齢者医療制度を支援する分で、74歳以下の人全員が負担します。
介護納付金分というのは、介護保険第2号被保険者相当分で、第2号に相当する40歳以上64歳までの人が負担します。(「介護保険料はどう決める?」も参照ください。)
世帯での支払額は、この縦軸横軸の合計です。仮に40歳から64歳までから構成される3人家族なら、均等割3分野の合計47,400円の3人分142,200円に、平等割の横軸合計33,200円を足した175,400円が基本としてかかり、そこに所得割が上乗せされると。
所得割の横軸合計は13.3%です。いま仮に上記世帯の年間所得が132万円あったとすると、所得割額はその13.3%、175,500円ということになります。
均等割と平等割を足した175,400円と所得割がほぼ同額ですね。
このとき、応能割合と応益割合が同じであると表現します。
この割合をどのくらいにするのが適切か、というのも実は悩ましい。「応能と応益」について、「次のページ」で見ておきましょう。