都市公園ってご存知ですか?
「都市公園法」で定められる公園です。
これって追加は難しいんだろうなと思い込んでいました。
というのは。
追加可能だった「都市公園」
以前「基準財政需要額と基準財政収入額-地方交付税はこう決まる-」で紹介したように、地方自治体の基準財政需要額を算定する単位のひとつに、都市公園の面積があるんですね。都市公園が広いほど、基準財政需要額が大きくなる、つまり地方交付税を獲得する上では有利になるのです。
ところが丹波市における都市公園は、「丹波市立地域公園条例」で示された7公園で、合併前の氷上町から引き継いだものだけです。
都市公園指定に伴うデメリットは無く、合併に合わせて都市公園の指定検討がされていないということは、追加は難しいのだろう、と勝手に思っていたのです。
ところが。
このほど、山南地域の中学校統合に伴い廃校となる「和田中学校」跡地を、隣の薬草薬樹公園も併せて「都市公園」として整備する、というじゃないですか(計画図を本投稿のカバー写真として掲載しました)。
整備費用として、国庫補助金「社会資本整備総合交付金:都市公園事業」を計画しており(用地取得費の1/3、施設費の1/2補助のようですね)、その採択要件は当然「都市公園」であること。
そこで都市公園に位置づけるのだと。
都市公園法を確認します。
第二条の二 都市公園は、次条の規定によりその管理をすることとなる者が、当該都市公園の供用を開始するに当たり都市公園の区域その他政令で定める事項を公告することにより設置されるものとする。
なんだ! 「公告」するだけじゃないですか。
それならもっと早く、市内の他の公園も含めて「都市公園」と位置づけていたら良かったのでは?
地方分権で地方自治体に権限移譲
で、調べてみると。
平成23年より前は、都市公園の設置基準って国が定めていたんですね。
それが、いわゆる第二次地方分権一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律、平成23年)により、地方自治体で決められることになった。
これを受けて、各自治体では「都市公園条例」を整備し、都市公園の設置基準を書き入れたという経緯があります。
しかし、丹波市ではこれまで定めてなかったのです。
先ほどの都市公園法、第3条に次のようにあります。
第三条 地方公共団体が都市公園を設置する場合においては、政令で定める都市公園の配置及び規模に関する技術的基準を参酌して条例で定める基準に適合するように行うものとする。
都市公園の設置は、条例で都市公園の設置基準を定めておくことが前提。このままでは、都市公園を設置できない。
都市公園の設置基準
ということで、丹波市でも遅まきながら定めることになりました。
・議案26号 丹波市都市公園法に基づく都市公園の配置及び規模に関する技術的基準を定める条例の制定
この中で、基準を定めるわけです。
もっとも、まったく独自の基準を定められるかというとそういうことではなく、最低水準、あるいは標準的水準は「都市公園法施行令」で定められており、丹波市の場合、今回の条例はこの政令に添った基準を定めます。
具体的に紹介しましょう。いずれも、政令基準と同じです。
- 都市公園を市民1人当たり10平方メートル以上整備する
というのが最初の基準です。丹波市民65,000人として、市全体で65万平方メートルですね。
公園内に建築物を建てる場合は、その建ぺい率も定められています。
「建ぺい率」というのは、土地の面積に対して、建物の面積(上から見た面積)が占める割合のこと。これが、公園面積の2%上限と決められています。
ただし、たとえば次のような特例があります。
- 休養施設や運動施設等 +10%
- 上記のうち文化財指定等された施設 +20%
- 壁のない屋根付広場等 +10%
また、公園内における運動施設は、50%までに制限されます。
都市公園の種類
ところで、都市公園にも種類があり、それもまた、上記設置基準のひとつです。国土交通省「都市公園の種類」を参考に主なものをまとめます。
- 住区基幹公園
街区公園 公園までの距離250m内、もっぱら街区に居住するものが利用 0.25ha(2,500㎡)
近隣公園 500mくらいの距離にある、主として近隣の人が利用する 2ha(2万㎡)
地区公園 1kmくらいの距離にある、主として徒歩で利用できる 4ha - 都市基幹公園
総合公園 1カ所当たり10~50ha
運動公園 1カ所当たり15~75ha
この他に「緩衝緑地」なども含まれます。
丹波市で置き換えて考えれば、総合公園や運動公園が旧町域ごとに1カ所ずつあり、地区公園が小学校区に1つ、近隣公園が集落ごとに1つ、そしてアパート等特に人が多いところに街区公園を置く、くらいのイメージですね。
現在丹波市立公園はいくつある?
ところで、現在の丹波市立の公園はいくつあるのでしょうか? 45カ所です。
条例ベースで拾うと以下の通りです。
- 地域公園条例 7公園
石生第1公園、西中東公園ほか(現在の「都市公園」) - 丹波市立公園条例 15公園
鐘ケ坂公園、やぐら公園、三ツ塚児童公園、長谷大池展望台、ハートタウン石生公園ほか - 丹波市都市計画法に基づく公園 9公園
鳥居前公園(氷上町横田)、棚田公園(柏原町下小倉)、古河公園(春日町古河)ほか - 個別の設置管理条例に基づく公園 13公園
復興砂防公園、丹波竜の里公園、青垣総合運動公園、三ツ塚史跡公園、青垣児童公園、薬草薬樹公園、横峯山頂公園、水分れ公園、大杉ダム自然公園、今出川親水公園、氷上さくら公園、三宝ダム公園、川城公園及び井原であい公園
新しい条例で規定されるのは、設置基準のみ。
他の自治体の都市公園法、たとえば「丹波篠山市都市公園条例」「豊岡市都市公園条例」などでは、公園内での禁止事項などにまで触れているのと比べて、シンプルです。
利用規定については、上で紹介した各条例に記されているからとは思います。これはこれでいいのかな。
今後の丹波市の「都市公園」は?
このほど整備される「新山南中央公園(仮称)」は、和田中学校敷地面積24,083平方メートルと薬草薬樹公園の敷地面積32,538平方メートルをあわせ、56,621平方メートルです。
現時点で「都市公園」に位置づけられている地域公園条例の面積合計が6,123平方メートルですから、合わせると62,744平方メートル。
ええと、先ほどの条例で65万平方メートルは整備する必要があるので、これはずいぶん開きがある。目標面積のおよそ10分の1ですね。
仮に、丹波市の「都市・自然環境を活かした公園整備方針」で示されている水分れ公園や今出川親水公園、丹波竜の里公園、丹波おばあちゃんの里、青垣児童公園、氷上さくら公園、スポーツピアいちじま、春日総合運動公園、青垣総合運動公園、三ツ塚児童公園をすべて都市公園に指定して合計しても、5倍程度になるくらいでしょう。
要するに、面積基準を満たすには、集落単位で管理されているような小さな公園含め、すべてを対象にしなくては届かなさそうです。
市としては今後の追加を検討するそうですが、最終的にこの開きをどうとらえていくのでしょうね。
都市公園管理の方向性
ところで、都市公園法は2017年にも改正されました。
今後の都市公園の方向性として知っておくと良いと思いますので、国土交通省の資料「都市公園法改正のポイント」を参考に、ご紹介します。
まず、都市公園の役割ですが、これまでは経済成長や人口増加を背景に、緑とオープンスペースを都市部に増やすことが一番の目的でした。
しかし、社会が成熟化するに伴い、今後は、ただ広さだけでなく、たとえば都市としての持続可能性、地域コミュニティの活性化への貢献、市民がQOLを上げるための場所としてなど、機能面の充実が求められます。
この流れを受け、今後は、公園の活用を新しい視点でとらえ、民間との連携を加速、柔軟に使いこなすことが求められています。
これを前提に、都市公園法が改正されたわけです。
公園内に保育所等を建設したりといったところもあるのですが、やはり注目されるのは「Park-PFI」が創設されたこと。
Park-PFIというのは、公募設置管理制度と呼ばれるもので、民間に公園内の収益施設の運営を任せ、その収益で公共部分(公園)の整備をしてもらうと。そういう制度です。
収益を確保するため、収益施設については建物の建ぺい率も12%に緩和されます。看板等を設置することも認められます。
加えて、設置管理許可の期間も10年ではなく20年に延長することで、長期的な経営による投資回収が可能なように工夫されています。
今すぐ丹波市でという話ではありませんが、たとえば今度都市公園に指定される「山南中央公園」などは、現在でも民間に薬草薬樹公園の施設管理を指定管理しています。
温浴施設や飲食、物販もあるわけで、仮にそこからの収益で他の公園部分の管理費を賄えることになれば、市が予算化する指定管理料も下げられる。
ちなみに、新山南中央公園(仮称)の建ぺい率は全体で7.93%です。
2%という基準は超えていますが、先に示した「休養施設や運動施設等」は+10%という特例がありましたね。建物のうち大きいのは、休養施設としてのリフレッシュ館が2.43%、運動施設としての体育館が2.68%、その他教養施設を加え、この+10%に含まれる部分が+6.52%で、その他の建物は1.41%と基準内に収まっています。
前述した民間活用の考え方をふまえ、可能性を探れればと考えます。