令和3年度の丹波市予算では地方交付税が前年度予算比5.2%減の109億円と厳しい見込みとなっています(普通交付税95億円+特別交付税14億円)。
国としてはコロナウイルス感染症の影響で地方が苦しいと想定し、総額17.4兆円と前年度比5.1%増やしています(総務省「令和3年度地方財政対策の概要」参照)。
それなのに丹波市は減少の見込み。
財務部からは、令和2年国勢調査の結果が反映されると考えて手堅く見積もったと説明がありました。
平成27年国調が64,689人。現在の住民基本台帳人口が63,117人。国調の方が2,000人ほど少なく出ますので、前回と同じく3,000人あまり減りそうですね(平成22年から27年は3,067人減)。
人口が減少すると、地方交付税が減少する。
どんな仕組みでしょうか。
総務省のページ「地方交付税」を参照しつつまとめます。
地方交付税ってそもそも何?
予算を市民向けに説明する際、地方交付税はよく「親元への仕送り」に例えられます。都会に稼ぎに出た子どもが地方に住む親に仕送りをするイメージです。
都会と地方の話は後で触れるとして、なんで「仕送り」なのに「税」って名前なのでしょう。税って所得税や法人税のように、国民(市民)から徴収するものですよね。
総務省の説明に、「国が地方に代わって徴収する地方税」とありました。
つまり本来地方自治体が徴収すればいいのだけれど、国が代行して徴収し地方に再配分しているということなのです。だから補助金や助成金などと違い、「税」という名前を引き継いでいるのですね。
従って、地方交付税はそもそも地方に属する固有財源と考えられています。
なんでそんな手間なことをするのでしょう。
理由は2つ。
ひとつは、自治体間の財政力格差を是正するためです。これを「財源調整機能」と言います(「財政調整機能」と呼称することもあります)。
各自治体が直接徴収していたら自治体ごとに多い少ないの差が大きくなる。そこで国が一括して徴収し、一定の合理的な基準で均等になるように配分すると。
もう一つの理由。こちらは「財源保障機能」と言います。財政状況が厳しい自治体があったとして、必要以上にその自治体の住民にしわ寄せがいくようでは困りますね。教育とかインフラ整備とか社会保障とか。
これら住民にとって必要なサービスがどの自治体でも不足なく充足されるように、地方自治体の財源を保障するわけです。
仮に地方交付税制度が無ければもっとたくさん税収がある自治体もあるでしょう。主として都市部の自治体ですけれども。
そうした自治体にとっては残念な制度かもしれませんが、人材の供給や農林水産物、エネルギーなどで地方が都市部を支えていることでもありますし、国民の公共の福祉という観点からは必要な制度といえるでしょう。
地方交付税の財源と種類
じゃあ「国が地方に代わって徴収する地方税」とは何か。
5つの税目があります。「地方交付税法」第6条に規定されています。
- 所得税 33.1%
- 法人税 33.1%
- 酒税 50%
- 消費税 19.5%
- 地方法人税 100%
パーセント表示しているのは、国が収入した額のうち地方交付税に充てる割合です。これらの総額が、地方交付税の財源となるわけです。
さらに同6条2号では、地方交付税に「普通交付税」及び「特別交付税」の2種類を規定しています。
普通交付税というのは、よく言われる「ひも付き」ではない、地方自治体が自由に使える財源です。
一方の特別交付税は、災害など特別の事情に応じて交付されるもの。こちらについてはエントリーをあらためて紹介します。
普通交付税と特別交付税は、国の段階では次の割合にすると決められています。
- 普通交付税 交付税総額の94%
- 特別交付税 交付税総額の6%
では、普通交付税について詳しく見ていきましょう。
普通交付税の金額はどのように決まるのか
まずは普通交付税の交付までの流れについて。
地方交付税の概要は、交付前年度の12月に国の「地方財政計画」が決定され(参考「令和3年度地方財政対策のポイント及び概要」)、年明けからの通常国会で地公交付税法の改正として反映されます(3月)。
普通交付税は、地方財政計画に添って4月1日時点の各自治体の数値をベースに計算され、7月に交付額が決定されます。
実際の交付は、4月、6月、9月、11月に4分の1ずつ。
決定は7月なので、4月と6月は前年度額に基づいた概算交付になります。どの自治体でも新年度の予算段階では、見込みで見積もるしかないわけです。(特別交付税は当該年度の12月と3月に決定し、決定と同時に交付)。
普通交付税の具体的算定方法はどうなっているでしょうか。
地方交付税法の第10条にこのようにあります。
各地方団体に対して交付すべき普通交付税の額は、当該地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額をこえる額(以下本項中「財源不足額」という。)とする。
(地方交付税法第10条2項)
ふむ。
普通交付税額=(基準財政需要額-基準財政収入額)=財源不足額
ということですね。
ユニークなのは、基準財政収入額は標準的な地方税の収入見込額の75%として算出されるということです。地方交付税法の14条に規定されています。
どういうことでしょうか。
総務省の資料から、参考図を引用します。
分かりますかね。
75%とすることで、地方自治体に留保財源が生まれますよね。
地方自治体としては、これをバッファとして活用することで、たとえば軽減税率を採用して他自治体より有利な税制で魅力を高めたり、逆に超過税率をかけて財源を確保したりできます。
歳入面で特に大きいのは、仮に留保分が無ければ、収入を増やしたら交付税分が減ることになりますが、留保分があることで、工夫して増やした努力が留保財源の増加として報われる点かと思います。
歳出面でも、基準財政需要額として見込まれる以上に事業費を上積みしたり、あるいはそれ以外の事業を加えて特色を持たせられます。
このように地方自治体が自主性、独立性を発揮できるようにするための仕組みです。
普通交付税は「基準財政需要額」と「基準財政収入額」が基になる。
では、それらはどのように算出されるのでしょうか。
「次のページ」でまとめます。
「基準財政需要額と基準財政収入額-地方交付税はこう決まる-」への2件のフィードバック