姿勢は良いが中身に乏しい(?)2021年度予算

 昨年度は「見どころの少ない(?)2020年度予算」として少々辛口で評価した新年度予算。今回は新しい市長による初めての予算ということで、楽しみに待っていました。

 で。どうでしょうか。

 基本姿勢は良いと思うのですが、方向性や中身に乏しく、丹波市の未来が見えてこない。今年もまた辛口評価とします。

 予算総額は346億円。目標とする320億円に向けて昨年は順調に縮んできていましたが、今年は前年度比10億円の増となっています。

コロナの影響で減収

 収入面では、市税の落ち込みが前年予算比7.4%減となっており、72億4,801万円を見込んでいます。個人市民税が11%減の23億8,780万円、法人市民税が34.9%減の3億30万円。
 令和2年度3月補正予算の解説で触れましたが、市税においても新型コロナウイルス感染症による影響がいよいよ本格的に。

 県からの法人事業税交付金は補正予算ですでに影響が表れていました。新年度予算では前年度予算比8.5%減の6,500万円を見込みます。また、国から県を経由して交付される地方消費税交付金は、3.5%減の13億7,200万円です。

 注目したいのは、地方特例交付金。

減収補填特例交付金 8,300万円
新型コロナウイルス感染症対策地方税減収補填特別交付金 6,300万円

 減収補填特例交付金というのは、「地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律」に基づく制度。国の政策の影響により本来得られたはずの地方税が減収となるのを補う制度です。具体的には、住宅ローン控除による個人住民税の減収がひとつ。
 また、消費税アップの影響緩和のために一時的に1%分軽減されている軽自動車税環境性能割も対象になっています。新型コロナウイルス感染症による影響を考慮して半年間延長して今年3月末までとなりましたね。丹波市ではその影響額は900万円の減収でした。

 減収補填特例交付金は、丹波市でも令和2年度6,000万円、平成31年度4,900万円などと予算化されてきました。

 もうひとつの「新型コロナウイルス感染症対策地方税減収補填特別交付金」。こちらは総務省の「地方税法等の一部を改正する法律の概要」に説明がありました。
 コロナの影響で売上が減少した中小事業者の固定資産税については、免除したり半分にしたりする支援制度が導入されています。これによる市税の減少分を補填するものです。

新しい国勢調査の結果が反映される

 国庫支出金は、コロナ対策関連の交付金などがあり11.2%増の64億390万円を見込みます。県からは1.8%減25億7,280万円です。

 気になるのは地方交付税の落ち込み。5.2%減の109億円と厳しいですね。
 国としてはコロナの影響で地方が苦しいと総額で増やしているのですが、令和2年国勢調査の結果、丹波市の人口が減少していますので、その影響が大きいといいます。

 使用料や手数料は、5.9%増の5億9,176万円を見込みます。ごみ収集手数料は少し増額予定の1億2,249万円。みなさんが減量に取り組んでいただけると減るのですが。
 気になるのは、浄化槽維持管理手数料が1億388万円と倍増していること。住民センター使用料など他の項目は減少を見込むなかで、これが増額の大きな要因になっています。どんな性質のものだったかな。

 基金からの繰入は、前年度比23.2%増と大幅に増やします。主なものは次の通り。

財政調整基金 12億9,400万円(42億1,117万円)
地域振興基金 3億9,160万円(37億5,387万円)
学校等整備基金 1億6,100万円(3億2,406万円)

 カッコ内はその結果の残高見込みです。

 市債もまた、前年度比43.2%増の34億1,026万円。後で紹介しますが、中学校の統合や道の駅整備などの資金が必要です。主なものは以下の通り。

合併特例債 10億4,060万円
臨時財政対策債 12億9,400万円
緊急自然災害防止対策事業債 2億6,460万円

 このうち最後の緊急自然災害防止対策事業債は、国が「国土強靭化5か年加速化計画」を定めたことで、防災対策などを強化するもの。
 河川の改良を中心に、急傾斜地崩壊対策や小学校施設整備(老朽化対策)に充当されます。

 市税や基金からの繰り入れなど市の独自財源の比率は34%。地方交付税など依存財源の比率が高い傾向は変わりません。

新規の大型事業は何か?

 歳出増額の要因は何でしょうか。1億円を超える新規事業を見ておきます。

 ひとつはコロナウイルスワクチン接種事業で、3億6,374万円。道の駅丹波おばあちゃんの里再整備に1億4,587万円。山南地域の統合中学校の整備に10億6,201万円。

 ワクチン接種事業は全額国費で賄われます。
 収入で確認すると、接種事業の国庫負担金2億9,082万円、接種者をバスで運んだり会場を設営したり広報したりといった接種体制整備にかかる費用への体制確保事業補助金として7,292万円があがっています。

 道の駅丹波おばあちゃんの里再整備費。令和2年度内の補正予算として物産館の整備や遊具の設置といった「密」を避けるための整備として国のコロナウイルス対策臨時交付金で1億3,455万円があがっており、その他事業費と合わせて1億5,957万円が「繰越明許」として令和3年度事業になっています。
 これに令和3年度予算で観光情報コーナーや通路の増設、駐車場の拡張などを行い、あわせて2億8,042万円、ここまでが1期工事として、令和4年4月のリニューアルオープンを目指します。加えて、令和4年度に親子トイレの新設工事を行います。総事業費は3億2,300万円の予定です。
 財源は、令和2年度補正予算分は全額国庫です。令和3年度分は、2,094万円は補助、市の一般財源は1,373万円です。残り1億1,120万円は合併特例債によります。

 統合中学校。総事業費は33億4,000万円といいますから大きな予算です。
 うち令和3年度が10億6,201万円ですが、1億9,118万円は補助金、独自財源が4,553万円です。残りのうち8億2,530万円を合併特例債で賄います。
 今後小中学校の統合のたびにこうした巨額の資金が必要となると、少しためらいますね。同じ統合するのでも、子どもの数の減少に合わせて、現有校舎をうまく活用しながら統合できないものか(青垣小学校の増築の場合で15億円くらいだったかな?)。

 さて。

 冒頭で述べたように、今回の予算では「基本姿勢」は良いと評価しました。次ページからはその基本姿勢を紹介しつつ、その他の新規事業や拡充事業を見ていきます。

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