今般の議会に提案されている補正予算について、「9月になると基金が積み立てられるのはなぜ?-補正予算を読む-」に続いて歳入をチェックします。
まずは個人市民税が1億9,900万円増の増額補正で25億8,680万円となっています。
市税には大きく市民税(個人、法人)、固定資産税、軽自動車税、たばこ税があります。
このうち個人市民税については、昨年度年収によって今年度の税額が決まります(皆さんのもとにも税額通知が6月頃に届いたと思います)。
今年度の歳入額がこの時点で見えますので、9月に補正が上がってくるのですね。
リーマンショック時は市民税にどんな影響があった?
今回増額補正となったのは、コロナ禍の影響で当初リーマンショック時並みに減るかと想定していたところ、それほど減らなかったからという説明でした。
当初予算の23億8,780万円は、令和2年度当初予算の26億8,440万円に比べて11.0%減でした。それが3%減程度に収まりそうということですね。
1人あたり10万円の給付金の効果などもあったかもしれません。
リーマンショックがあったのが2008年(平成20年)9月ですから、平成20年度決算を確認しておきます。
過去の「決算附属説明書」を参照しましょう。
税目 | 2007年度 | 2008年度 | 2009年度 | 2010年度 |
個人市民税 | 2,759,099 | 2,782,619 | 2,701,324 | 2,469,659 |
法人市民税 | 768,651 | 667,006 | 479,425 | 608,015 |
合計 | 3,527,750 | 3,449,625 | 3,180,749 | 3,077,674 |
なるほど。
特に法人市民税が2008年度は7億6,000万円から6億6,000万円へ13.2%減、さらに2009年度は4億8,000万円28.1%減とかなり厳しい影響を受けています。
個人市民税はリーマンショック発生の年こそ影響を受けませんでしたが、翌年に27億円となり2.9%の減、さらにその次の年には8.6%減少し24億7,000万円となっています。
リーマンショック時の個人市民税の2年間にわたる減少率をふまえた約11%程度の影響を、今年度の当初予算で見込んでいたということですね。
コロナ禍の影響はこれから出てくる?
コロナ禍における市税収入の推移はどうなるでしょうか。
令和2(2020)年度までの決算に今回の補正をふまえた今年度予算を追加して示します。
コロナウィルス感染症は2020年2月頃から大きく報道され始めました。リーマンショックのきっかけは9月でしたから、年度で比較するにあたっては社会の動きに半年ほどのズレがあることも念頭においておきましょう。
税目 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
個人市民税 | 2,681,389 | 2,688,784 | 2,586,800 |
法人市民税 | 570,054 | 526,837 | 300,300 |
合計 | 3,251,443 | 3,215,621 | 2,887,100 |
2020年度に法人市民税が7.6%減となっていますが、これは説明が必要です。
というのは、税率が改正され、2019年10月1日に開始する事業年度から、法人税割が9.7%から8.4%(一定規模以下の中小法人は6.9%)に変更になったのです(差額分は国が地方法人税として徴収し地方交付税の財源となります)。
2020年10月発表の決算からが対象ということになり、2020年度の法人市民税の減少はほぼこの影響で説明できるとのことで、ウイルス禍と特筆するほどの影響はなかったようです。
しかし今年度には大きく出てくるのではないかというのが現在の予算上の見立てです。法人税率改正の影響も残りますが、前年度予算から34.9%減というのは、やはりコロナ禍の影響を大きく見ています。
企業の体力低下が従業員等に響いてくるとするならば、今年の結果を受けた来年度個人市民税への影響が大きいと予測されます。
リーマン時も個人市民税への影響は法人市民税より1年遅れて出ましたね。目下の雇用情勢などを見て、必要な支援を怠らないようにしなくてはなりませんし、来年度の予算編成がどうなるか、注視していきたいと思います。