基準財政需要額と基準財政収入額
基準財政需要額と基準財政収入額の算出方法。先に答えを記します。
基準財政需要額=単位費用×測定単位×補正係数
基準財政収入額=標準的税収入見込額×基準税率(75%)
各自治体の具体的数値については、それぞれの自治体の「決算カード」に記されています。
丹波市の場合、次の通りです(令和元年度)。
- 基準財政需要額 17,835,547,000円
- 基準財政収入額 7,794,415,000円
差額100億4,000万円。対して令和元年度の普通交付税交付額は105億6,000万円です。単純な財源不足額より多いのは、この年まで合併後の特例加算措置があったためです。一本算定となる令和2年度は96億1,000万円弱となりました(参考「令和2年度市町村別交付決定額」)。予算段階では101億を期待していたので、思ったより厳しいです。
補足ですが、合併特例加算措置というのは、合併後15年間適用される制度です。合併しなかった場合に旧町がもらえると想定する地方交付税の合計額を下回らないようにするという仕組み。合併を促すための措置ですね。
差額が10あったとすると、10年目以降は、11年目に9、12年目に7と順次割合が減っていき、16年目からはひとつの自治体として一本化された本来の金額になります。丹波市は令和元年が合併15周年でした。
基準財政需要額を計算する
基準財政需要額の算定式をもう一度振り返りましょう。
単位費用 × 測定単位 × 補正係数
ここでいう「単位」というのは、需要のもとになる事業の単位です。消防とか道路維持とか教育とか高齢者福祉など。およそ40の単位があげられています。
これに対して「単位費用」というのは、それぞれの事業にいくらかかるという見積もりです。消防費なら1人あたり11,400円とか、下水道費なら1人あたり97円とか、農業行政費なら1農家あたり88,000円とか(参考「令和2年度 地方交付税関係参考資料」)。
そして「測定単位」というのは、事業に必要な規模を算定する基準を示します。上述した人口や農家数、あるいは生徒数や65歳以上人口、道路延長など、当然、単位ごとに何を測定の基準とするかは違います。
総務省の「基準財政需要額」を見てみましょう。測定単位の一覧があります。
市町村分について抜き書きします。
- 消防費 人口
- 土木費
道路橋梁費 道路の面積、延長
公園費 人口、都市公園の面積
下水道費 人口 - 教育費
小中学校費 児童数、学級数、学校数
高等学校費 教職員数、生徒数 - 厚生費
社会福祉費 人口
清掃費 人口 - 産業経済費
農業行政費 農家数
商工行政費 人口 - 総務費
徴税費 世帯数
地域振興費 人口、面積
さまざまな項目で「人口」が測定単位になっていますね。だから国勢調査の結果が出る5年毎に地方交付税は変動するのです。
普通交付税を算出するには、個々の「測定単位」に、「単位費用」を掛けます。
単位費用は地方交付税法第2条第6号に規定されています。「標準的条件を備えた地方団体が合理的、かつ、妥当な水準において地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する経費」。
標準的な自治体が普通に行政経営するならこのくらいかかるよね、というのを算出した金額ってことです。具体的な金額は先ほど紹介した「令和2年度 地方交付税関係参考資料」をご参照ください。
ここでいう標準的な自治体ってどんな自治体でしょう。
- 人口10万人(42,000世帯)
- 面積210平方キロ
- 道路延長500キロメートル
だそうです。わが丹波市をざっとまるめると。
- 人口65,000人(25,000世帯)
- 面積500平方キロ
- 市道延長1,105キロ
標準より人口は少ないのに、面積は倍以上あり、結果的に道路延長も長い。
そうなると標準的な費用を当てはめると効率の問題などで不利になる気がしますよね。たとえば道路や水道などのインフラは、人口に比して面積が広いとどうしても割高になります。
そうした不公平を無くすために、最後に人口密度だとか積雪量だとかによる「補正係数」を掛け合わせ、実態に合わせるようにしています。
これが、基準財政需要額の算出方法。
基準財政収入額を知る
一方の基準財政収入額についてはどうでしょうか。
総務省による資料「基準財政収入額」を参照しましょう。
次のようにありますね。
標準的な地方税収 × 原則として75/100 + 地方譲与税等
75%の話は先ほどしました。これに地方譲与税等を加えた額が基準財政収入額だということです。
標準的な地方税収は住民税の均等割や固定資産税、軽自動車税のように実際の数量をもとに標準税率をかけて出されるものと、法人税割やたばこ税のように実績をベースに計算されるものがあります。
都道府県と市町村では参入する税目等に違いがありますが、以下に丹波市の実績として平成30年度決算額を概算で入れつつご紹介します(令和元年度以降に採用された費目も列記)。
決算書では歳入の最初に並んでいます。
- 市民税(34億2,000万円)
- 固定資産税(44億1,000万円)
- 軽自動車税(2億6,000万円)
- たばこ税(3億7,000万円)
- 入湯税(12万円)
- 利子割交付金(1,500万円)
- 配当割交付金(4,400万円)
- 株式譲渡所得割交付金(3,500万円)
- 消費税交付金(11億6,000万円)
- ゴルフ場利用税交付金(1,700万円)
- 環境性能割交付金(旧自動車交付税交付金1億5,000万円)
- 地方特例交付金(3,800万円)
- 法人事業税交付金(―万円)
およそ市税で84.6億、交付金で15億円というところです。これの75%として74.5億円。
地方譲与税では、次のようなものが該当します。こちらも丹波市の平成30年度決算額をカッコ内に補記します。
- 森林環境譲与税(―万円)
- 地方揮発油譲与税(1億円)
- 自動車重量譲与税(2億5,000万円)
- 交通安全対策特別交付金(900万円)
およそ3.5億円ですね。
とすると、これらを足して、およそ78億円という計算になります。令和元年度基準財政収入額はおおむねこのようにして算出されているわけです。
【蛇足】交通安全対策特別交付金
地方交付税については別のエントリーでもう少し踏み込むとして。
以下は蛇足です。
上記の地方譲与税に「交通安全対策特別交付金」ってあります。
実はこれ、みなさん大っ嫌いな「反則金」が原資です。各自治体で信号機やガードフェンス、道路標識等に使うために交付されます。
丹波市では毎年、おおむね900万円前後。信号機にすれば2機分くらい(信号機って高いんですね)。
詳細は「交通安全対策特別交付金制度の概要」にあります。
各自治体の「交通事故発生件数」「人口集中地区人口」「改良済み道路延長」を指標にして「2:1:1」の割合とし、交付額が算定されます。人口が密集し、道路が多く、事故が多いところに多めに配分されることになりますね。
ネズミ捕りとか、せっかく交番で評価を高めている警察のイメージを落とすものにしかならないと思わないでもないですけれども、抑止効果はあるのでしょうし、無謀な運転を無くすためには仕方なし。
なので、いざそうした場面に遭遇された場合は、「丹波市への交通安全対策交付の千分の1(かどうかは反則内容によりますが)につながっている」とでも考え、以後は繰り返さぬよう、心穏やかにお過ごしください。
ゆめゆめ、交付額を1,000万円にしようとか努力する必要はありませんです。
「基準財政需要額と基準財政収入額-地方交付税はこう決まる-」への2件のフィードバック