みなさん、地方公務員の退職金ってどこから支給されるかご存知でしたか?
自治体からではないのですね。「職員退職手当組合」というのが県単位で作られていて、その組合から支給されるのです。
今回は、そのあたりの話を。
退職手当組合は自治体が共同して設立
退職手当組合は、それぞれの自治体が共同して作られています。市町村だけではなく、複数の自治体で作っている一部事務組合も加わっています。
兵庫県の場合だと、「兵庫県市町村職員退職手当組合」がそれにあたります。
ここに、丹波市のほか、丹波市も構成員である一部事務組合「丹波少年の家事務組合」も加わっていました。
今回、丹波少年自然の家事務組合が解散したことから、退職手当事務組合の規約から削除しなくてはなりません。
・議案15号 兵庫県市町村職員退職手当組合規約の変更に係る協議
以前「一部事務組合の協議と議会の議決そして教育委員会の意見」でも紹介しましたね。市が構成員である組合の規約変更についての協議するには、先だって議会の議決を必要とするのでした。
ちなみに、丹波市は「氷上多可衛生事務組合」の構成員でもありますが、こちらの一部事務組合は退職手当組合に入っていません。その話は最後に。
なお、併せて退職手当組合の監査委員の任期を3年から4年にするそうです。
一般の地方公共団体の監査委員の任期は4年なので、それに合わせるということかと思います。
なぜ今まで3年だったのかはよく分かりませんが、調べてみると、他の職員退職手当組合の中にも3年のところがあったり、4年のところがあったりでした。
昔は3年が標準で、規約改正の機会があった組合は、そのついでに今の基準に合わせているということかもしれません。
公務員の退職手当が一部事務組合に任されたわけ
地方公務員の退職手当は、地方自治法204条で定められています。
第204条 (前略)
2 普通地方公共団体は、条例で、前項の者に対し、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当、へき地手当、時間外勤務手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、任期付研究員業績手当、義務教育等教員特別手当、定時制通信教育手当、産業教育手当、農林漁業普及指導手当、災害派遣手当又は退職手当を支給することができる。
兵庫県では(他の自治体でも)、市町村が共同で事務組合を組織し、各自治体ではなく事務組合で退職金事務を行うことにしています。それが、先ほど紹介した以下の組合。
兵庫県の組合の説明を引用しておきましょう。
市町村合併の進展に伴い増加する市町村職員の退職者に対して、公平迅速に退職手当を支給し、併せて市町村財政の圧迫を緩和するとともに退職手当の統一的事務処理をするため、兵庫県知事が地方自治法第284条の規定に基づき、兵庫県市町村職員退職手当給与一部事務組合を設立し、規約を制定、昭和30年4月1日本組合が発足した。
兵庫県退職手当組合
同年6月9日第1回兵庫県市町村職員退職手当給与一部事務組合議会において、退職手当支給条例、市町村負担金条例、予算等を議決し、組合の運営基盤に必要な整備が図られた。
なるほど。
ここにある昭和30年(1955年)頃というのは、いわゆる「昭和の大合併」が進んだ時期です。新制中学校、自治体ごとの消防や警察、社会福祉や保健衛生などの事務が市町村に付されたことにより、一定の規模が無いとやっていけないと判断されたんですね。
昭和28年に「町村合併促進法」が施行され、昭和31年には新市町村建設促進法が施行されています。こうして、昭和28年10月時点で全国で9,868あった市町村が、昭和31年9月には3,975まで減っています。(ちなみに現在は平成の大合併を経て1,700あまりです。)
市町村合併の歴史について、詳しくは総務省の「市町村数の変遷と明治・昭和の大合併の特徴」をご参照ください。
さて。
合併が進むと職員数は削減される。公務員の退職者が増加する。
市町村間で退職手当給付に差があってはいけないし、事務処理も一カ所で行った方が能率的。そこで組合設立の機運が、全国的に盛り上がったんですね。
こうして、全国各地にあった「市町村職員恩給組合」が母体になるなどして、県単位で組合が設立されていったということです。
退職金の額ってどのくらい?
公務員の退職金ってどのくらいなのでしょう?
先ほど引用した地方自治法に「支給方法は、条例でこれを定めなければならない」とあります。
退職手当組合でも、次のような条例で、特別職(市長、副市長及び教育長)や職員の退職手当の支給額等について規定しています。
市長についてがシンプルで分かりやすいので引用すると。
(退職手当の額)
兵庫県市町村職員の特別職等の職員の退職手当に関する条例
第3条 第2条の規定による特別職等の職員が退職した場合における退職手当の額は、退職の日におけるその者の給料月額にその者の勤続期間を乗じて得た額に次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる割合を乗じて得た額とする。
(1)組合市町の長については、100分の40
(2)組合市町の副市町長については、100分の24
(3)組合市町の教育長については、100分の18
勤続期間の計算は月数となります。市長任期は4年なので48月ですね。で、市長の場合はその40%を支給することになります。丹波市の場合で1,500万円くらいってことかな。
一般の職員の場合も同じように退職時の月給額が基本になります。これに勤続年数を掛ける考え方は同じですが、退職理由や職務階級など複雑に絡んできます。
サイトで試算できるので、試してもらうのが良いですね。
まぁ、15年前後の勤続で数百万円、定年まで勤めたら2,000万円とか3000万円とか、そんな感じじゃないかなと。
退職金の原資は市町村が負担
退職手当は、自治体からではなく、退職手当組合から直接退職者に支払われます。
その原資は、各市町が負担金を支出します。
(組合市町の負担金)
兵庫県市町村職員の特別職等の職員の退職手当に関する条例
第5条 組合市町は、第3条に規定する退職手当の支給に要する費用及び組合の事務費に充てるため、毎月特別職等の職員の給料月額の1,000分の300に相当する金額を負担金として納付するものとする。(後略)
市長報酬月額の30%を負担金として組合に支払うっていうことですね。
市長報酬月額は836,000円、副市長が665,000円、教育長が617,000円。
なので、それぞれの3割の金額の12月分が負担金ということになります。
令和6年度予算書で確認すると、丹波市から支出する退職手当組合への負担金は、市長と副市長2人分で572万円、教育長で228万円。
予算書の額とおおよそ合ってますね。
職員の場合は、15.5%が基本となっています。
こちらも念のため確認しようと、令和6年度予算書にあたってみました。
しまった(汗)。
事業ごとに人件費が分かれているので、合計がつかみづらい。特別会計も含めると50くらいの事業部門。
根気よく拾っていくしかないですね(涙)。
市の事業がどのように分割されて、どのくらいの人員を割いて行われているか、想像する援けになりましたよ。
で、結果。
一般会計の合計で3億8,000万円ほどの負担金でした。
これに対して人件費は市全体で約63億円です。ただし、これは共済費や手当等を含んでいます。
また会計年度任用職員さんへの支払いを含んでいますが、会計年度任用職員さんは1年契約が基本なので、退職金が適用されませんね。
純粋に正規の職員さんの給料を抜き出すと、548人で21億2,500万円(会計年度任用職員さんは426人で8億6,900万円)。
その15.5%は3億3,000万円なので、こちらもほぼ合っている。
参考までに、退職手当組合には、丹波市が加わるもうひとつの一部事務組合である「氷上多可衛生事務組合」は加入していません。
これは職員さんがすべて丹波市からの出向だからでしょう。
一部事務組合の会計を確認すると、出向されている職員さんの給料合計は7人で約3,000万円。退職手当負担金として約580万円を予算化しています。
ただし、退職事務組合に加わっているわけではなく、丹波市所属の職員さんなので、この場合の負担金は「雑入」としていったん丹波市会計に入ります。その後、丹波市の会計から退職手当組合に支払われることになります。
なお、議員には退職手当はありません。そのあたり、同じく4年ごとに失職するものの、市長とは違った扱いです。