他人の敷地に水道管を通せるか

 新規に家屋を建てるなどした場合、下水道に排水管を接続しなくてはなりませんよね。

 ところで、もし公共の下水管が他の人の敷地を超えた向こうにあったらどうしましょうか。その敷地を横断しないと接続できないとしたら。

同意なく敷地を使用できる

 下水道法では次のように規定されています。

(排水設備の設置等)
第10条 公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従つて、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠きよその他の排水施設を設置しなければならない(以下略)
(排水に関する受忍義務等)
第11条 前条第一項の規定により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとつて最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。
2 前項の規定により他人の排水設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
3 第一項の規定により他人の土地に排水設備を設置することができる者又は前条第二項の規定により当該排水設備の維持をしなければならない者は、当該排水設備の設置、改築若しくは修繕又は維持をするためやむを得ない必要があるときは、他人の土地を使用することができる。この場合においては、あらかじめその旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 前項の規定により他人の土地を使用した者は、当該使用により他人に損失を与えた場合においては、その者に対し、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

 注目は11条。

 太字で示したように、配水管接続のために必要な場合は、他人の土地を使用することができると規定されています。使用することを告げなさいとは書かれていますが、同意は必要とされていません。

背景にあった所有者不明土地問題

 実はこの方針転換、今年の4月1日から施行される民法等の改正に伴うことです。

 詳しくは法務省の「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」で説明されています。
 高齢化、世帯の個別化が進むとともに、所有者の死亡等に伴い、現在の所有者が不明という土地が増えていきつつあります。

 田舎でも、空き家の所有者が誰か分からない問題が、徐々に深刻になりそうな予感。

 こうした状況に対処するための法制度の改正が、この見直しです。

 で、実はこの改正の中に、「隣地等の利用・管理の円滑化」っていうのが含まれていたんですね。

 これまで、ライフラインの導管等を隣地等に設置することについての根拠規定はありませんでした。その結果、ライフライン整備のためなのに、土地が利用できない状態を生んでいたと。
 そこで、こうした設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できる仕組みを整備する内容です。

 ただ、法改正の結果、隣地の所有者不明状態に関係なく、「ライフライン設備を他人の土地に設置する権利」が広く定義された結果が、前述の水道法の規定ということです。

自治体条例の改正

 ということで、丹波市の条例を見直したところ、市の条例も法律に合わせる必要がありました。

議案26条 丹波市下水道条例の一部改正

 これまで丹波市下水道条例では、同意書を求めていました。

第5条 排水設備又は法第24条第1項の規定によりその設置について許可を受けるべき排水設備(以下これらを「排水設備等」という。)の新設等を行おうとする者は、あらかじめ管理者に申請し、その計画が排水設備等の設置及び構造に関する法令の規定に適合するものであることについて、確認を受けなければならない。
2 前項の規定による確認を受けた者がその確認を受けた事項を変更しようとするときも、同様とする。ただし、排水設備等の構造に影響を及ぼすおそれのない変更にあっては、あらかじめその旨を管理者に届け出ることをもって足りる。
3 法第11条に該当する場合は、あらかじめ利害関係人の同意書を提出しなければならない。

 このままだと、法律で接続する権利が認められているのに、同意が得られないと接続できないことになる。
 そんなわけで、この規定を削除するのが、今回の改正です。

 なんか、関連するトラブルでもあって、慌てて条例を改正するのかなと心配したのですが、そうじゃなく、上位法の改正に伴うものでした。

下水施設の統合

 本編は以上ですが、今回の定例会で、下水道に関しては施設統合に関する次の条例も可決されましたので、紹介しておきます。

議案27号 丹波市コミュニティ・プラント及び農業集落排水処理施設条例の一部改正

 下水道統廃合に伴い、美和東浄化センターが廃止されることから、「丹波市コミュニティ・プラント及び農業集落排水処理施設条例」を改正し、記述を削除するものです。

 下水処理施設及びその統合については、以前の「同じようで違う下水処理施設―及び規則と規程ってどうちがう?―」を参照ください。

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