こども医療費の無料化ついに実現! しかし陥穽も(涙)

 以前「こども医療費の無料化のために」で提言した、こども医療費の無料化の所得制限の撤廃と、高校生までの医療費無料化がようやく実現します。

 民生産建常任委員会からも令和4年2月に、所得制限を撤廃するよう政策提言を行いました。議会からの働きかけが有効であったということではないでしょうか。

議案21号 丹波市福祉医療費助成条例等の一部改正

 今議会には、「丹波市福祉医療費助成条例」の改正が提案されています。
 附則のうち、所得による支給要件の特例を記した項に、次の条文を書き加えます。

第3条第1項第3号の規定にかかわらず、令和5年7月1日から令和8年6月30日までの間は、乳幼児等が受けた医療に係る福祉医療費にあっては、幼児等保護者又は幼児等保護者が当該幼児等の生計を維持できない場合は、その幼児等の民法第877条第1項に定める扶養義務者で、その幼児等の生計を維持する者及び乳児保護者に支給するものとする。

 ここで、もととなっている「第3条第1項第3号」を参照すると、以下となっており、比較すれば、「規定にかかわらず」として除外されているのは、下線部分であることに気づきます。

幼児等保護者又は幼児等保護者が当該幼児等の生計を維持できない場合は、その幼児等の民法第877条第1項に定める扶養義務者で、その幼児等の生計を維持する者について医療保険各法の給付が行われた月の属する年度分の地方税法の規定による市町村民税の同法第292条第1項第2号に掲げる所得割の額の合計額が23万5千円未満であるとき及び乳児保護者とする。

 幼児の保護者に関して、住民税によって制限されていた部分が削除されることになります。なお、乳児の保護者については、もともと制限はありません

 この条例における乳幼児は次のように定義されています。

乳児 市内に住所を有する1歳の誕生日の属する月の末日を経過していない者をいう。
幼児等 市内に住所を有する1歳の誕生日の属する月の翌月の初日から9歳に達する日以後の最初の3月31日を経過していない者をいう。

丹波市福祉医療費助成条例 第2条

 乳児というのはゼロ歳児を、幼児というのは9歳までということですね。

 あれ、中学生までじゃなかったっけ?

10歳以上のこどもは「規則」で対応

 実は10歳以上のこどもはこの条例ではなく、「丹波市こども医療費助成事業の実施に関する規則」で対応しているのです。

 規則に、10歳から12歳までの「児童」とその後15歳までの「生徒」(両者を合わせて「こども」と呼びます)を対象とした規定があります。

(支給の対象)
第3条 こども保護者又はこども保護者が当該こどもの生計を維持できない場合はそのこどもの民法(明治29年法律第89号)第877条第1項に定める扶養義務者でそのこどもの生計を維持する者(以下「こども保護者等」という。)について、医療保険各法の給付が行われた月の属する年度分(医療保険各法の給付が行われた月が4月から6月までの場合にあっては、前年度分)の地方税法(昭和25年法律第226号)の規定による市町村民税の同法第292条第1項第2号に掲げる所得割(同法第328条の規定によって課する所得割を除く。)の額(同法第314条の7並びに同法附則第5条の4第6項並びに同法附則第5条の4の2第5項及び第7項並びに同法附則第7条の2第4項の規定による控除されるべき金額があるときは、当該金額を加算した額とする。)の合計額が23万5,000円未満であるときは、こども保護者等に対し、こども医療費を支給する。

 規則なので議会の議決は不要です。なので、議案にはあがっていませんが、そちらも改正されるはずです。

 引用した文章の下線で示した、所得制限部分の削除ですね。

 また、高校生までの無料化も実施予定なので、規則にある「生徒」の定義が15歳までとなっているのを18歳までに延ばすことになるとも思います。

無料化といっても「検証期間」と位置づける中途半端さ

 所得制限を外すというのは、SDGsでいう「誰ひとりとり残さない」の精神であり、すべての子どもを対象にするという姿勢を示すことです。

 以前も書きましたが、「福祉医療費助成条例」では「令和8年6月30日までの間」と期限が切られていますが(毎回延長はされています)、「こども医療費助成規則」では期限の表記がありません。
 もととなっている兵庫県の福祉医療費との兼ね合いもありますが、期限があるか無いかは、「福祉」と「子育て支援」の違いでもあると考えます。

 福祉の場合は、「困っている人を援ける」という前提です。困っている保護者を援けるのが、福祉医療費ですね。
 したがって、社会情勢によって「困っている」度合いを確かめる必要がありますから、一定の期限ごとに見直すような立て付けになっている。

 一方で、子育て支援は、社会情勢関係ありません。時代が変わろうと、子どもは子どもですから。
 だから本来なら、乳幼児の医療費の無料化も、「こども医療費助成」に統合する必要を感じています。

 この件を当局にただしたところ、次の二つの心配があるから、まずは期限を区切って「検証する」のが今回の事業だそうです。

  • 無料化によって受診者が増える
  • 医療費支出が増えて財政が厳しくなる

 いやいや。先の「こども医療費の無料化のために」で検討したように、財政的には丹波市の追加負担は5,800万円程度と予測します。市長公約のごみ袋半額化のためにはそれを超える金額の収入減を「なんとかなる」と説明していたのに、こども医療費の時は財政負担を心配する?
 要するに政策の優先度の違いですね。子育てを軽んじている姿勢が透けて見えます。覚悟を決めて、「丹波市は子育てを応援します!」と力強く宣言すべきなのに、「とりあえず検証します」だって。

 正直、この期限を区切った実施については納得できないです。期限を区切らず、政治姿勢として、子育て世帯を応援すべきとぼくは考えます。

こども医療費の無料化に伴うペナルティは?

 ところで、市の独自政策で医療費負担を軽減すると国からの支給額が減るペナルティの話です。
 「国民健康保険税の決まり方と財政」でも紹介した社会保険の支給方法ともからむ話ですが、単純化して整理します。

 現在市として、こども医療費が仮に100万円かかっていたとします。医療費の自己負担は就学前が2割、就学後は3割です。

 分かりやすいように2割で計算すると、無料化施策が無ければ100万円のうち20万円は患者さんの自己負担、残り80万円は保険給付費として市に(国や県から)補助される(その分窓口負担を軽減する)ことになります。

 このとき市は補助される額のうち半分の40万円分を保険税として被保険者から徴収する。結果的に、公費負担は残りの40万円分ということになります(単純化しています)。

 さて。ここで無料化施策を導入し、2割の自己負担を無くすとします。

 とすると、100万円分すべてが保険給付ということになります。
 保険給付の半分の50万円分を市は被保険者から保険税として徴収します。そして残りの50万円は市に補助される。

 だけど、市が2割を独自財源で賄ったから、保険給付費が増えたんだよねと。自己負担してもらっていたら公費負担は40万円で良かったのだから、公費負担は50万円ではなく40万円のままでいきますよと。

 とはいえ、この問題は国の方針です。なので、実際に減らされる補助額は10万円ではなく、国の負担である32%分。
 したがって、差額10万円のうち国の負担分32%の3万2000円が、実際に市が補助金として受け取れない「ペナルティ」になります。

 より具体的な金額で言うと、令和3年度実績で、従前の中学3年生までの所得制限付き医療費無料化分での丹波市が背負った「ペナルティ」は、1,552,420円でした。
 これが所得制限撤廃と高校3年生までの無料化と拡充すると、医療費の実績や被保険者が変わらないとすると、837,964円増えて、2,390,384円となります。

 このくらいの追加負担は仕方ないと思いますが、本来的には自治体に負担を負わせるのではなく、国全体で対処すべき方向であろうとは思います。

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