市役所窓口で男女別の記入って必要なの?

 国ではLGBT法をめぐってドタバタ、でもなんとか成立を見ました。丹波市ではこの春からパートナーシップ制度が始まっています。

 そうした流れの中で、さいきん見直しがかかっているのが、各種書類における「男女」記入の要・不要です。

 個人的には、この問題は以前から関心がありまして。

 総務文教常任委員会の委員長をしていた平成31年(2019年)のこと。

 委員会で、新しく「丹波市男女共同参画推進条例」を策定すると説明がありました。
 条例名も気になるところだったのですが、そこを変更するのはハードルが高い。なんとかならないかなぁと条文案を読み込むなかで、ふと思いつきました。

 第2条の用語の定義。「男女共同参画」の定義として、以下のようにされていたのです。

すべての人が男女の別にかかわりなく、社会の対等な構成員として(以下略)

 せめてこの部分で、あえて男女と書かない方向にできないか。そのように提言し、結果、以下のように現在ある形に書き直して議案提案いただきました。

すべての人が性別にかかわりなく、社会の対等な構成員として(以下略)

印鑑登録に男女別って不要だよね

 というわけで、書類の性別記入欄。たとえば印鑑登録においては性別って関係ないですよね。そこで。

議案44号 丹波市印鑑条例の一部改正

 印鑑登録の申請書類から、男女の項を無くす改正です。

 現在の「丹波市印鑑条例」では、印鑑登録を行うにあたって、次の事項を登録することとなっています。

  1. 登録番号
  2. 登録年月日
  3. 氏名(氏に変更があった者に係る住民票に旧氏が記録されている場合にあっては氏名及び当該旧氏、外国人住民に係る住民票に通称が記録されている場合にあっては氏名及び当該通称)
  4. 出生の年月日
  5. 男女の別
  6. 住所
  7. 外国人住民のうち非漢字圏の外国人住民が住民票の備考欄に記録されている氏名のカタカナ表記又はその一部を組み合わせたもので表している印鑑により登録を受ける場合にあっては、当該氏名のカタカナ表記

 このうち「(5)男女の別」を削除しようというのが今回の改正。

男女別の登録削除はいいけれど、全面見直しは?

 これ自体はいいとして、今回気になったのは、この改正が、もう一つの改正である、コンビニ等での印鑑証明書交付の際、マイナンバーを記録したスマホでも利用できるようにする改正と合わせた改正だったこと。
 ついでに男女の項も削除しておこう、といった場当たり的な改正だと困りますよね。

 少し調べたところ、明石市では「各種様式における性別記載について(ガイドライン) 」を定めていますし、越前市では「申請書等における性別欄の見直しについて」として報告されているように、全庁横断的に見直している。

 こうした見直しを行っているかどうか。

 こういうときは、議案提案と同時に、議案に関する資料請求を行います。

  • 「男女の別」の削除について、その他の各種様式についても調査されていたら、その結果を示す資料。
  • 各種様式における性別記載について、市としての取り扱いあるいは見直しに関するガイドライン、内規等を定めていれば、その写し。

 といった感じで。
 質疑で尋ねてもいいのですが、口頭だけより、資料があった方が助かりますし、資料で結果が分かれば、質疑の時間を省けます。

丹波市における性別記載欄の見直し

 結果。

 丹波市では、令和5年2月28日にまちづくり部長から各部へ「公文書における性別記載欄の見直しについて」という通知が発送され、4月20日から5月10日にかけて、調査が行われました。
 その際のチェックフロー図は次の通り。

 で。

 公文書に性別記載欄のある様式は214種ありました。

 このうち41.1%の88種は性別欄を削除可能でした。その内訳は次の通りです。

  • 既に削除済 16
  • 今年度中に削除 61
  • 例規修正後削除 2
  • 様式在庫利用後削除 7
  • システム改修後削除 2

 一方、性別欄を継続するものは126種(58.9%)です。

  • 国及び県の様式 56
  • 統計上、医療上必要 28
  • 性別により配慮が必要 25
  • 男女共同参画推進のため必要 9
  • その他 8

 その他というのは、法律上や国や県への報告上必要だったり、本人確認のため必要だったりといったものでした。

グラデーションになる男女

 最新の科学研究の成果に触れると、そもそも男女って何だろうと思います。

 もっとも驚いたのは、男女の性ってグラデーションだっていうことです。

 それを知って以来、男女を問う欄は、左の女性から右の男性まで1から10のスケールがあって、「あなたはどのあたりですか」と尋ねるものが適切ではないかと、そんなことを思ったりしています。

 広島大学ダイバーシティ研究センターからの「性の多様性についての基礎知識」を参照します。
 同ページでは、国際人権法上の性自認等の摘要についてまとめられた国際文書「ジョグジャカルタ原則+10」を引用する形で、性は4つの側面からとらえられると紹介しています。

  • 身体の性的特徴  Sex Characteristics
  • 性自認 Gender Identity
  • 性的指向 Sexual Orientation
  • 性表現 Gender Expression

 分かりやすいはずの身体的特徴さえ、インターセックスのような特徴を持つ人がいる。性自認では、自分の中の異性的要素に気付く人は多いかもしれない。
 性的指向や性表現しかり。

 で、それらが、1か0かという二者択一ではなく、グラデーション

 そうすると、上述した「性スケール」にしても、あくまでも性自認を問うものであって、さらに軸を増やす必要があるのかもしれない。

 なんて考えていくと、いっそ無くせばいいって思いますね。

現状では男女別の必要性は残る

 とはいえです。

 議会でも、傍聴者や市民との意見交換会のアンケートをとります。そしてそこには、男女の欄があります(「その他」を加えるよう意識はしていますけれども)。

 じゃあ、それは無くすべきか?

 女性議員の増加などが社会課題とされている中、政治に対して関心をお持ちの方がどちらの性別であるかは、ひとつの手掛かりにはなる。
 そう考えると、単純に無くすとは提案しにくい。

 言葉狩りのように、無くせばいいわけじゃなく、本当に目指すべき多様性のある包摂型社会に向けて、性別記入欄ひとつとっても、多くの問いかけを投げかけていると感じます。

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