パパ育休関連条例改正案を分解してみる

 今回は条例改正案をじっくり読み込むことに挑戦しましょうか。

 いつもやっていることではあるのですが、いちど、順を追って細かく説明することで、議案審査の実際もつかんでいただけるかなと思って。

議案63号 丹波市職員の育児休業等に関する条例の一部改正

 まず、議案と同時に提供される「議案審議資料」の「提案の趣旨」に目を通します。

令和3年8月10日に人事院が行った「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出」に伴い、国家公務員に係る妊娠・出産・育児等と仕事の両立支援のため、人事院規則が改正されたこと等により、令和4年10月1日から育児休業の取得要件緩和等の措置が講じられることから、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第4項の均衡の原則に基づき、所要の改正を行うものである。

 ざっと言えば、国の仕組みが変わったことに合わせて丹波市も変えるんだということが分かりますね。

 そうすると、つい「国の流れに添ったことなので問題ないだろう」って深く考えないまま了としがちです。
 ただ、それってもったいないし、やはりじっくり研究すべきです。すると、関連して見えてくる景色があります。

 たとえば。

 今回の場合なら、そういえば国の方で「男性の育児休業を取りやすくする」という議論があったなぁ、と思い出すことが第一のヒント。
 このあたりは、ニュースへの感度の問題ですが、まぁ、新聞を読んでいれば、なんとなく思い出せるんじゃないかな。

育児休業をめぐる大きな流れ

 で。

 令和3年6月に改正された「育児・介護休業法」。厚生労働省の「育児・介護休業法について」を確認すると、3段階での移行が予定されているとあります。

  1. 令和4年4月1日から
    【職場における周知】
    男性が育児休業をしやすい職場環境を整えることを事業主に求めています。
    ・研修、相談窓口、事例紹介、方針の周知のどれか、できれば複数を行うこと。
    ・妊娠、出産の申し出があれば、面談なり書面なりメールなりで、制度を周知し、意向を確認すること。
    【有期雇用労働者の要件緩和】
    現行は雇用期間が1年以上の人が対象でしたが、この条件を撤廃。生まれた子が1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでなければ、みんな適用となります。
  2. 令和4年10月1日から
    【産後パパ育休】
    育休とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能な「産後パパ育休」が創設されます(母親の産休中に、ということになります)。
    【育休の分割取得】
    育休を分割して2回取得できるようになります。パパ育休を分割できるほか、その後の育休を、例えば母が4カ月、父が4カ月、母がもう一度のように交代して取ることができます。併せて、1歳以降の育休継続の開始日も1歳及び1歳半の時点に限定されないことになりますので、育休開始日も柔軟に調整できます。
  3. 令和5年4月1日から
    【育休の取得状況公表】
    従業員1,000人以上の企業ということになりますが、育児休業等の取得の状況を、年1回公表することが義務付けられます。

地方公務員の勤務条件は、国家公務員に準ずる

 さて、こうした流れの中で、人事院から国家公務員の育児休業等に関する法律改正について意見の申出がありました。(「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出の説明」(令和3年8月10日)参照)。
 提案の趣旨にあったものですね。原典にあたって確認しておきます。

 国家公務員の話なのに、なんで丹波市の条例を改正するのっていうところを先に抑えておくと、地方公務員法で、国や地方公共団体間でバランスを整えるように決められているからなのです。
 提案趣旨に「地方公務員法第24条第4項の均衡の原則に基づき」とありますね。

第24条 職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。
2 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。
3 職員は、他の職員の職を兼ねる場合においても、これに対して給与を受けてはならない。
4 職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当つては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
5 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。
(地方公務員法)

 なので、国家公務員の育休の取得要件が緩和されるなら、地方公務員においても同様にしようと。

改正のポイントは非常勤職員に適用範囲を広げること

 ちなみに、前述した改正は、国の「育児・介護休業法」で定められること。ですから、条例で改めてこれらの休業制度等を定める必要はありません。

 今回、「丹波市職員の育児休業等に関する条例」を改正するのは、先に紹介した人事院の意見申出が、非常勤職員についての措置を含んでいるからです。

 具体的には、非常勤職員の育児休業について、次の措置を行うよう、意見が述べられています。

  1. 8週間以内の育児休業の取得要件緩和
    これまで取得できるのは、子どもが1歳6か月に到達した時点で任期が継続する可能性のある人しか取得できませんでした。この条件を、お子様が生まれた日から8週間と6月の時点での判断とします。これまでは、1年契約が基本となっている任期付職員さんは取得が難しかったのですが、取得しやすくなります。
  2. 1歳以降の取得の柔軟化
    保育園に入れない場合など、お子様が1歳になった後も育児休業を取得できる制度があります。これまではお子様が1歳になった日で判断していたのですが、この限定を外します。つまり、1歳になった日からではなく、途中からでも取得できるようになります。そうすることで、途中から夫婦交代で取得したりできるようになるわけですね。

実際の改正内容を確認する

 改正の目的が分かったところで、実際の条文にあたります。目的に添った改正がしっかり行われているかどうか。

 ただ。

 条文の内容は、ずいぶんとややこしい。二重否定が重なっているような表現で、ほんと、こういう文章構造があるから、法律あるいは条例って難しいって感じるんだろうなと思います。今回の改正案から一例を紹介します。

(育児休業をすることができない職員)
第2条 育児休業法第2条第1項の条例で定める職員は次に掲げる職員とする
(中略)
(4)非常勤職員であって、次のいずれかに該当するもの以外の非常勤職員
ア 次のいずれにも該当する非常勤職員
(ア)その養育する子(育児休業法第2条第1項に規定する子をいう。以下同じ。)が1歳6か月に達する日(以下「1歳6か月到達日」という。)(当該子の出生の日から第3条の2に規定する期間内に育児休業をしようとする場合にあっては当該期間の末日から6月を経過する日、第2条の4の規定に該当する場合にあっては当該子が2歳に達する日)までに、その任期(任期が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了すること及び引き続いて任命権者を同じくする職(以下「特定職」という。)に採用されないことが明らかでない非常勤職員
(イ)勤務日の日数を考慮して規則で定める非常勤職員

 分かりますか?(汗)

 まずですね、この第2条でいう「育児休業法第2条第1項の条例で定める職員」というのは、「地方公務員の育児休業等に関する法律」の第2条1項のことです。
 なのでこの法律の条文を参照します。

 そこでは育児休業を取得できる職員を定めています。

職員(第十八条第一項の規定により採用された同項に規定する短時間勤務職員、臨時的に任用される職員その他その任用の状況がこれらに類する職員として条例で定める職員を除く。)

 条文内で「条例で定める職員を除く」という表現がありますね。
 丹波市の条例改正は、この除外する職員のことをここで決めますよと、宣言しているわけです。つまり「育児休業の対象とならない職員」を決めるわけです。

除外範囲を狭めることで適用範囲を広げる

 最初に、今回の改正の目的は、非常勤職員にも育児休業の取得をしやすくすることと述べました。
 今、「対象とならない職員」の範囲を改正しようとしています。ということはつまり、除外する人を絞ることで、逆に適用範囲を広げようとしているのだと、分かってきました。

 じゃあ、どういう人が取得の対象にならないのか。
 先ほど引用した条文を見ていただくと。

 対象にならないのは、(4)にある「非常勤職員であって、次のいずれかに該当するもの以外の非常勤職員」です。
 ここにも二重否定が隠れているので、シンプルに言い換えると、「これから述べる条件に該当する非常勤職員は対象になる」ということですね。

 で、その次に並べられたのが対象になる非常勤職員の定義。カッコが多いので、カッコを外しちゃえば文意が分かりやすいです。(ア)の文章のカッコをとっちゃいましょう。

その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その任期が満了すること及び引き続いて任命権者を同じくする職に採用されないことが明らかでない非常勤職員

 あら、これは従来の規定だけが残りました。しかもまた「採用されないことが明らかでない」とややこしい文ですね。否定形を無くして「採用される可能性がある」と読み替えておけば理解しやすい。
 子どもが1歳6か月になるまでに同じ職として採用されている可能性があれば、対象になると。

 で、この1歳6か月に対してカッコ書きで、今回の修正が加わっている。

(当該子の出生の日から第3条の2に規定する期間内に育児休業をしようとする場合にあっては当該期間の末日から6月を経過する日、第2条の4の規定に該当する場合にあっては当該子が2歳に達する日)

 第3条の2というのは、やはり今回の改正で追加される項目で、8週間以内の育児休業のことを指します。
 なので前半は、出生後8週間以内に育児休業をしようとする場合は、その8週間に6月を加えた日に、採用される可能性があると読める。
 1歳半だけでなく、判断基準が前倒しされることで、1年契約の方でも取得できるようになる。

 出生後8週間以内といえば、お母さんは産休ですので、そこでの育児休業はお父さんのことですね。

 疲れちゃうので(苦笑)、紹介はここまでに。

 当局の説明を鵜呑みにせず、正しい条例改正が行われているかチェックするには、こういう地道な読み解き作業が欠かせないのですよね。

 こんな苦労も、議案審査には必要ということで、ご紹介しました。

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