労働力人口の減少が心配される中、定年引上げの声がにぎやかなのはご存知でしょう。
国家公務員の制度改正(「国家公務員法等の一部を改正する法律案の概要」参照)に合わせて、地方公務員法の一部改正が行われました(「地方公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第63号)の概要」参照)。
これを受け、丹波市でも定年の引き上げなど、60歳以降人材の有効活用を目指した改革が始まります。
■議案91号 職員の定年引上げ等に伴う関係条例の整備に関する条例
まずは定年の引き上げです。条例名に「関係条例の整備」とあるように、複数の条例をまとめて改正するための条例です。
改正対象となる条例は、「丹波市職員の定年等に関する条例」から「丹波市職員の勤務時間、休暇等に関する条例」など幅広く、全部で12の条例。そして再任用に関する条例は廃止されます。
定年を65歳に
ざっとどのようなことが行われるのかを、まずまとめます。
- 定年の段階的引き上げ
徐々に引き上げて65歳にします。ただし、60歳に達して以降の給与については、7割に減額となります。 - 役職定年制の導入
管理職については60歳定年とし、60歳になった年度内に、管理監督職以外の職に異動となります - 定年再任用短時間勤務制度
定年前に退職した職員は、本人の希望により、短時間勤務の職で再任用します
定年は伸ばすけれど、若い人がポストに就くのを妨げないように、また人件費が膨らみすぎないようにといった工夫を重ねた内容ですね。
65歳定年延長は段階的なので、実際に61歳の定年が導入されるのは2024年になります。その後、2年ごとに1年定年が延び、2032年に65歳になります。
それまでの間は、定年から65歳までの間は、今回の条例の附則て規定される「暫定再任用職員」としてはたらくことになります(再任用制度そのものの条例は廃止)。
高齢者のはたらき方を巡る時代の変化
令和3年4月1日に高年齢者雇用安定法が改正されました(「高年齢者雇用安定法改正の概要」参照)。
このときの改正のポイントは一歩進んで「70歳までの雇用確保」を努力義務としたところなのですね。
つまり、これまで65歳までは義務だったのですが、今度は努力義務として70歳に伸ばした。
丹波市では60歳定年後「再任用」という形で65歳まで雇用をしていたわけですが、制度上は再任用制度は廃止されます。
となると、高年齢者雇用安定法との照らし合わせでは、70歳までの雇用をどのように確保するのか、気になるところです。
さて。70歳雇用問題については確認するとして。もう一つ、高齢者のはたらき方に関連する条例改正。
セカンドキャリアへの移行を支援
■議案92号 職員の高齢者部分休業に関する条例の制定
高齢者部分休業は、地方公務員法に規定された制度です。
第26条の3 任命権者は、高年齢として条例で定める年齢に達した職員が申請した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、条例で定めるところにより、当該職員が当該条例で定める年齢に達した日以後の日で当該申請において示した日から当該職員に係る定年退職日までの期間中、一週間の勤務時間の一部について勤務しないことを承認することができる。
今回の条例で規定される具体的な内容は次の通りです。
- 60歳になった次の年度から適用する
- 30分単位で申請できる
- 1週間合計で勤務時間の半分を超えない範囲で可能
- 給与は1時間当たりに応じて減額
- 休業時間を延長することも可能
年を取るといろいろ事情もありますかね、セカンドライフへの準備も含め、多様なはたらき方が広がることは歓迎したいと思います。
神戸市はさらに進んでいた!
というあたりで軽く済ませるつもりでしたが、神戸市長のブログ「高齢者部分休業制度の導入」を読んでみると、なんとエントリーは2017年の11月。
5年も前に取り組んでいたのか。リサーチ不足を思い知らされました。
そして、その内容をさらに読み込んでびっくり。55歳に達した職員から適用できると書かれているではないですか。
ぼくは先ほど軽い気持ちで「セカンドライフへの準備も含め」と書きましたが、なんのその、制度としてしっかりと早めからセカンドチャレンジができるようにされている事例もあるのですね。
これは抜かっていたなぁと、他市での導入状況を調べてみると、次の資料がありました。
この時点で、市区町村で導入済みは12.9%。まだ少ないという事情は確かにあります。
休業いろいろ
先ほどの調査結果を見ていると、はたらき方の多様化という視点からは、他にもさまざまな「休業」があるのですね(以下カッコ内は市区町村での導入状況)。
- 自己啓発等休業(40.0%)
- 配偶者同行休業(26.3%)
- 修学部分休業(19.5%)
修学部分休業は地方公務員法の26条の2。大学等に通うために時短できるという制度。
他のふたつは部分休業ではなく、たとえば3年間といった期間を休む制度ですが、地方公務員法26条の5と26条の6に規定されていました。
自己啓発等休業は大学院就学など、配偶者同行休業は転勤などを想定したものですね。
はたらき方改革、そしてライフシフトを前提としたポートフォリオワーカーが注目されている今、これからに適したはたらき方を推進するためにも、労働制度への感度をもっと高めておく必要があると反省しました。