新しい資本主義と兵庫県のAI未来予測

 内閣府から『経済財政運営と改革の基本方針2022』の原案が示されました。いわゆる骨太方針と呼ばれるものです(「令和4年第7回経済財政諮問会議」参照)。

 詳細はここでは触れませんが、新しい資本主義に向けた改革として、次の5つの重点分野が述べられています。

  1. 人への投資
  2. 科学技術・イノベーションへの投資
  3. スタートアップへの投資
  4. GXへの投資
  5. DXへの投資

 イノベーションにしろトランスフォーメーションにしろ、「変わる」ことがこれほど求められている時はないという認識が全体から見えてきます。

 もうひとつ気づくのは、「社会課題」を成長と結び付けて語られていること。たとえば「スタートアップへの投資」では、次のようにスタートアップ(起業)への期待が述べられています。

スタートアップは、経済成長の原動力であるイノベーションを生み出すとともに、環境問題や子育て問題などの社会課題の解決にも貢献しうる、新しい資本主義の担い手である。

 地域との関連で言えば「デジタル田園都市国家構想」が述べられていますが、次のように、その4本柱の1番目に「社会課題解決」があげられています。

  1. デジタルの力を活用した地方の社会課題解決
  2. ハード・ソフトのデジタル基盤整備
  3. デジタル人材の育成・確保
  4. 誰一人取り残されないための取組

 資本主義の限界から見えてきた「社会課題」を、成長に向けた種とするのが「新しい資本主義」であると、ぼくとしては読み解いています。

AIを活用した兵庫の未来予測

 さて。兵庫県でも現在、起業支援に力を入れています。

 丹波県民局でも、起業を支援するエコシステム(生態系)を整備する「シリ丹バレー」プロジェクト(「シリ丹バレー」参照)が進められています。

 これら兵庫県の動きは、国の動きを受けてのものではなく、「ひょうごビジョン2050」に添った動きとしてぼくは理解しています。

 なかでも注目したいのは、ビジョンの前提として行われた「将来構想研究会」で示された、AIを活用した未来予測です(「AIを活用した未来予測 2050年の兵庫の研究」参照)。

 これは、婚姻率や失業率、県内総生産といった105の指標をAIで分析し、それらの影響による2050年の兵庫の姿を、「人口・出生率」「防災・減災」「農林水産」「環境」等13項目から〇△×の三段階で評価、7つのグループを比較したものです。

 AIによって描かれた分岐図を以下に示します。

AIを活用した未来予測 2050年の兵庫の研究

 報告では、先述した13項目による評価の結果、「グループ7」に至るシナリオがもっとも理想的だと指摘しています。

理想の兵庫に至るための条件は?

 そうなると、分岐点1、2、3、4のそれぞれで、グループ7の方に行くための要因が何かが重要になりますね。

 報告では、それぞれの分岐において、理想的な方向に行くための寄与度が高い要因について、次のように指摘しています。

  • 分岐点1
    健康(医師や病床数、スポーツ実施人口等)、出産(出生率)、子育て(保育所定員数)、農林水産業(野菜生産量、林業新規就業者数等)、地域活動(地域おこし協力隊隊員数、小規模集落数等)
  • 分岐点2
    人口(転入超過数等)、国際(外国人労働者数等)、地域(地域おこし協力隊員数、商店街活気等)
  • 分岐点3
    観光(芸術文化に接する機会、自慢したい地域の宝、宿泊客数等)、産業(開業率、労働力人口等)
  • 分岐点4
    健康(スポーツ実施人口、特定健診受診率、医師数等)

 これをふまえ、政策手段として次の指摘がされています。

  • 2030年までに
    子どもを産み育てる環境を整備、農林水産業活性化など地域活力の維持・工場を図る取組の推進
  • 2030年代半ばまでに
    多文化共生社会の構築、新たな産業の振興と魅力ある地域資源の磨き上げ、交流人口の拡大
  • 2040年までに
    健康寿命の延伸、高齢者を含めた全世代が活躍できる社会の構築

 兵庫県の現在の産業政策を見ると、これらデータをもとにした分析が活かされていることを感じます。
 まとめにおいては、「革新技術を最大限に活用し、西播磨、但馬、丹波、淡路など郡部における起業・創業を進める」という記述も見られます。

では、丹波市の取り組みはどうでしょうか。「丹波市における起業支援環境の課題」で述べます。

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