丹波市における起業支援環境の課題

 「新しい資本主義と兵庫県のAI未来予測」で、国の政策と兵庫県の起業支援政策の背景について述べました。

 丹波市にとってヒントになる点は何でしょうか?

社会課題を起業支援につなげる

 先の投稿で、「社会課題」と結びつけた起業に期待がかかっていると紹介しました。

 実はこうした取り組みは、近年、自治体において注目されています。

 例えば広島県のサンドボックスの取り組み(「ひろしまサンドボックス」参照)。2018年にスタートし、これまでに100を超える実証実験が行われています。
 高齢者の転倒骨折を無くすといった健康分野から、耕作放棄地対策、観光ナビゲーション、中小企業のものづくり支援など、多彩な活動が報告されています。

 あるいは、神戸市からスタートして全国に広がっている「Urban Innovation JAPAN」の取り組み。
 兵庫県内でも姫路市や豊岡市、川西市で取り組まれました。「科学的根拠に基づいた各部署の人員配置」「保育士の勤怠管理、給与支払いのデジタル化」「空き家のデータベース」「コウノトリ育む農法のスマート化」「食品ロス削減」などの課題が提案されていました。

 丹波市でもぜひ、こうした取り組みに挑戦してほしいと考えています。

 そのためには、まず「課題の設定」ができる分析力と、その解決に向けて挑戦者と伴走できる体制が求められます。
 現在の丹波市の組織体制はそこが整っていないのが現状。プロジェクトの実現に向けて整備していくだけでも、組織の質があがるのではないでしょうか。

起業支援の生態系

 今から20年ほど前になるでしょうか、和歌山県橋本市の起業支援施設の支援委員会の委員を務めたことがあります。JAの跡地を改装し、スタートアップに安価に貸し出す事業。当時は珍しかったインターネットの高速回線もついていました。

 当時はそんな「インキュベーション施設」が注目でした。インキュベーションというのは、孵化っていう意味で、起業家の卵をかえすイメージですね。
 近年そうした施設は廃れたのかというと、そうではない様子。

 たとえば、会津若松市の起業支援施設「SmartCityAiCT」の核企業である「アクセンチュア・イノベーションセンター福島」は、地域産業やまちづくりと連携して、より多面的に展開しています。
 横浜市のスタートアップ成長支援拠点「YOXO BOX」はイノベーション都市・横浜実現をうたっています。

 これらの特徴は、ベンチャー支援そのものだけではなく、スマートシティやイノベーション都市など、まちのあり方を変えていくことを目的としているということでしょう。
 最近よく聞くイノベーションの「生態系(エコ・システム)」という考え方です。

 丹波市には「Bizステーションたんば」という起業支援窓口があります。
 商工会に委託して運営されており、多くの起業実績を生んでいます。

 ただ、目的が「起業」そのものになり、生態系まで視野に入っていません。
 一方で、丹波県民局では先に紹介したように、起業環境を整えていこうとする事業を進めているわけですから、ぜひ連携して、丹波市における「イノベーションの生態系」を整えてほしいと思います。

 そのためには、県の拠点となる「丹波の森公苑」に近い、「柏原いちばん館」を利用するのがいいのではないでしょうか。新規起業家向けのシェアオフィスも整備して、Bizステーションたんばもいちばん館に移す。
 現在まちづくり柏原が運営を担っているチャレンジショップ「あっとかいばら」も近いですし、県民局が展開される起業セミナー等も組み合わせ、ぜひ、連携した起業環境を整えてほしい。

 いちばん館については、地元の方々による検討会でもサテライトオフィスなどの活用要望が出ていましたので、地元要望にも沿う整備になるはずと考えます。

地域おこし協力隊を戦略的に活用

 もう1点、地域おこし協力隊の活用方法についても市の問題点を指摘しておきたいと思います。

 というのは、丹波市の地域おこし協力隊って、現在部署ごとに応募されていて、市が行おうとする事業の応援隊員のようになってるんですよね。
 でも本来地域おこし協力隊って、将来地域に根付くための起業準備を含め、もっと自由に活動すべきもの。

 たとえば遠野市の場合、「遠野ローカルベンチャー事業」として、地域資源を活用した起業に取り組むものとして、地域おこし協力隊を募集しています。「Next Commons Lab」という外部ノウハウを導入しているから、支援も本格的。

 あるいは、丹波篠山市の場合、神戸大学との連携を活用して、やはり「丹波篠山地域おこし協力隊」と窓口を一本化。担当地域を決めてコーディネーターが支援するなど地域に根付くサポート体制が整っています。

 先に紹介した兵庫県のAI未来予測でも、地域おこし協力隊の人数って、重要な要因でしたよね。丹波市の地域おこし協力隊への支援体制について、抜本的な改革の必要性を感じます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください