丹波市農業の現状と課題【2021年版】

担い手の育成をどう進めるか

 丹波市の農業従事者の平均年齢は平成26年度で66.7歳。5年先、10年先に地域の農業をどう継承するか。その将来指針となるのが、「人・農地プラン」です。

 しかし、丹波市内の273の農会のうち、プランの作成を終えた地区はまだ1割にいきません。特に、地域内にアンケートを行って具体的な管理主体を明確にしていく「人・農地プランの実質化」と呼ばれる作業はまだこれからの段階。

 地域内で担い手が明確になってこないと「人・農地プランの実質化」は難しい。ではどう担い手を育成していくか。

 丹波市の総農家数5,598戸のうち、販売農家数は3,470です。このうち主業農家が230、準主業農家が498、副業的農家が2,742

 担い手として期待されるひとつは、認定農業者です。先に述べたように令和2年4月1日現在で111経営体がいらっしゃるのですが、実は、増加の一途ではありません。
 認定農業者の平均年齢も58.9歳と高齢化が進みつつあり、後継者問題が生じることもあるのです。

 期待される担い手のもう一つ、集落営農。現在では農会の構成員の4分の1以上が参加されているものを集落営農と位置づけるそうです。
 実際の作業形態は、地域の事情に応じて「農作業受託型」「機械共同利用型」などの形態がとられていくことになります。課題となるのは、中核となるリーダー。

 集落営農組織は令和2年4月1日で65経営体、少しずつですが増加はしています。でも、目標にはまだまだ遠いですね。

農業の新しい担い手

 では、農業の新しい担い手についてはいかがでしょうか。

 丹波市の農業就業者数11,899人のうち、女性は5,158人と45%近くになります。市内農業の98%が家族経営といいますから、当然かもしれないのですが。
 そのうち40代以下が162人。

 女性の目線を農業に活かすことは、生産だけでなく消費の目線から可能性を開くことにもなり、期待されます。
 丹波市でも、平成26年に農業女子グループが発足、令和元年には「丹波 根っこの会」として、21名の会員でスタートしています。今後が期待されます。

 新規就農はどうでしょうか。

 農地を取得しての新規参入は、平成29年度は2経営体で4.47ha、平成30年度は1経営体0.30ha、令和元年度は2経営体1.21haです。

 45歳以下で就農から5年以内の方は、認定を受けることでさまざまな優遇措置が受けられます。なにより大きいのは「農業次世代人材投資事業」として年間150万円の助成が受けられることでしょう。
 就農の相談は毎年数十件あるのですが、現実的な営農計画をもって準備が進められず、参入に至らないケースが多いそうです。

 丹波市が平成31年4月に開校した有機農業を学ぶ「農の学校」の成果はどうでしょうか。
 1年間週5日制で(受講料51万2,000円/年)、農業経営や栽培技術を学びます。

 1期生は15名(平均年齢41歳)、うち丹波市内で独立して就農されたのが4名(楽しむ農業含む)、雇用就農が3名、半農半Xが1名。市外での独立就農1名、半農半X1名、その他3名、退学2名となっています。
 2期生は12名(平均年齢37歳)、丹波市内での独立就農3名、雇用就農3名、市外での独立就農3名(楽しむ農業含む)、半農半X1名、その他2名となっています。

 新規に農業を始められる方は、それぞれにこだわりを持たれていることが多く、一方的にこういう農業が良いと薦められるものでもありません。だから、地域の農地の担い手としていきなり期待するわけにもいかない。

 農業というのは単にビジネスというだけではなく、ライフスタイルでもある
 そんなところもまた、考えておかなくてはならないことだなとあらためて感じます。

農業経営モデルの具体事例

 では、農業経営の採算モデルはどのようになっているでしょうか。『農業経営基盤の強化の促進に関する基本的な構想(平成28年12月)』をもとにみてみましょう。

 農業経営の目標は段階に応じて違いますが、基本的には他産業並みの労働時間で同等以上の収入を得られることが必要です。

 認定農業者の認定基準を参考にするなら、年間農業所得530万円程度及び年間労働時間2,000時間程度(いずれも主たる農業従事者1人あたり)を確保できる農業者が、丹波市農業生産の相当部分を担うことが期待されます。

 また新規就農においては、認定新規の基準を基にするなら、就農5年後の経営目標として、年間労働時間1,800時間程度、年間農業所得200万円で生活水準を維持できることを目指すとしています。(ここで所得というのは売上ではなく営業利益のことを言います。)

 ではこれを達成するためにはどのような規模が必要か。年間農業所得530万円を目安として、営農類型を抜粋します。
 人員としては主たる従事者1人、補助従事者2人程度として想定されています。

  • 水稲
    自前で水稲8.5haのほか、一貫した作業受託を12.5ha、育苗受託を2.5ha。必要機材としてはトラクター、田植機、コンバイン1台ずつに育苗ハウス400平米、乾燥機3t×4基。その他に軽トラ2台やフォークリフト、トレーラーなど。
  • 水稲と黒大豆及び小豆
    水稲3.0haと黒大豆0.5ha、小豆1.0ha。作業受託は25.0haと育苗受託5.0ha。必要機材は水稲主体とほぼ同じ。育苗ハウスは800平米必要です。
  • 野菜主体(施設型)
    水稲1.0ha、0.1haのハウスを2棟、ひとつは11月~6月に促成いちご、もうひとつで5月~7月半促トマトの後9月~11月きゅうり。必要機材はトラクターと小型コンバイン、乾燥機は3tを1基、軽トラ2台。育苗ハウスは100平米。
  • 野菜主体(露地)
    水稲1.3ha、なす0.1ha、だいこん06ha、キャベツ0.3ha、黒枝豆0.08ha、ひかみねぎ0.3ha、やまのいも0.3ha。必要機材はトラクター1台、育苗ハウス100平米、軽トラ2台など。
  • 花卉
    バンジー0.25haとベゴニア0.2ha。育苗室100平米とビニールハウス2,500平米。機械としてはフォークリフトやポッティングマシーン、暖房機など。軽トラ2台。
  • 果樹
    ぶどう0.25ha、くり0.7ha。ぶどう棚や自走式モア、いがむき機や選果機、軽トラ1台などが必要。

 野菜は相場価格によって左右されるところもあるので、この面積では難しい面があるかもしれません。
 水稲主体だと作業面積20ha。かなりたいへんな印象ですね。実際にこれだけの面積の作業受託をされるケースは稀です。

 一方で、施設型の野菜や花卉や果樹は面積が少なくて済みます。いいじゃん!って思いますし、軟弱野菜用のハウス設置については1/4以内の補助など制度もありますが、現状304棟7.7ヘクタールと少なく、導入は進んでいません。
 初期投資もさることながら、水稲と違って毎日世話をしなくてはならないのが難点ですね。なので、丹波市に多い兼業の方には向かない。

 集落営農等で水稲と並行してハウスを行うことで収益性を高め、雇用を生むことができればと思うのですが、どうなのでしょう。

特産品の振興をどう図るか

 JAでは令和3年度の目標として、丹波ひかみ米3,000ha、丹波大納言小豆320ha(320トン)、丹波黒大豆97ha(51トン)、丹波栗42トン、丹波山の芋8ha(61トン)としています。

 令和元年度の現状は、丹波大納言小豆が283ha(186トン)。単収が想定より悪いですね。高温多雨の影響もあるのですが、規模を大きくすると栽培の手間がかかり品質が落ちるという二律背反が心配されています。安定生産に向けた栽培技術の向上が欠かせません。

 丹波栗は105ha(27トン)となっています。こちらも質を保つことが重要で、放置的に生産されている場合も多いため、栽培管理技術の普及が必要です。

 山の芋は栽培の労力負担が大きく、高齢化と共に縮小傾向にあります。加工用など新たな販路も開拓しつつ、後継者育成が重要です。

 花卉については、若松や花壇苗は後継者育成ができているようですが、それ以外では課題となっています。

 薬草については個々の栽培面積が小さく、栽培の難しさもあって増えていません。指導体制の整備が欠かせません。

 他にも、丹波ブルーベリー丹波黒ごま丹波白雪大納言などが新しく特産品として注目されています。

 畜産については、近年農家数が減っている現状があります。平成18年度から27年度の10年間で、繁殖和牛では1,023頭(94戸)が869頭(45戸)、乳用牛は770頭(24戸)が527頭(17戸)となっています。

 肥育牛では500頭以上の大規模経営が3戸あることから、2,653頭(11戸)が2,704頭(12戸)と比較的安定しています。目指すは最高級ブランド「神戸ビーフ」。繁殖肥育一貫経営への転換を推進する必要があるとのことです。

 養鶏農家は16戸です。プリン加工などされている農家もあり、今後さらに加工品の充実が求められます。

 有機の里としては、環境創造型農業の拡大も期待されるところです。
 平成27年実績で環境創造型農業に従事する農業者は79人うち有機JAS認証取得者は26人となっています。圃場面積にして523ヘクタール、うち40ヘクタールがJAS認証です。
 なお、作付別では、523ヘクタールのうち463ヘクタールが水稲、豆類12.7ヘクタール、野菜33.9ヘクタール、その他13.4ヘクタールとなっています。

消費の促進と農村環境の保全

 直売所の現状はどうでしょうか。

 丹波市内にある直売所は現在11カ所。
 「かいばら観光案内所」「JA丹波ひかみ とれたて野菜直売所」「丹波とれとれ市 四季菜館」「交流会館かどのの郷」「夢楽市場(道の駅あおがき)」「愛菜館おなざ」「道の駅丹波おばあちゃんの里」「いちじま丹波太郎」「元気村かみくげ朝市」「蓬来の郷」「ヒロちゃん栗園 DE 八百屋さん」です。

 年商は数十万円からJA丹波ひかみの直売所のように2億円を超えるところまでさまざま。集計時期がずれますが、平成26年度で総売上3億7千万円といいます。

 これら直売所は、特別な販路を持たない新規就農者にとって重要な役割を果たします。人気の黒枝豆だと、シーズン中に1農家で100万円を超える売上をあげる方も少なくありません。農家の所得向上のためにも期待されるところです。

 学校給食における地産地消の割合は、米では100%ですが、野菜については25%弱です。

 農村環境の保全に関しては、日本型直接支払制度(中山間直接支払環境保全型農業多面的機能支払)」が活用されています。「農村の持つ多面的な機能」に対する認識を図る地域ぐるみの活動として進められています。
 保全管理田を集約して一面のコスモス畑にしたりなどといった活動です。

 また、丹波市内にある農業用ため池255カ所、この防災面、安全面での管理も重要です。子どもたちも一緒になって水抜きをし、生態調査をするなども取り組まれています。

鳥獣害対策

 イノシシやシカ、アライグマ、カラス、サル等による被害総額は平成27年度で2,034万円(17.2ha)と推計されています。

 丹波市内のわな猟免許取得者は近年増加傾向で120名あまりとなっています。一方で、銃猟については減少傾向で50名あまり。

 捕獲計画としては、平成31年度計画でイノシシ300、シカ550、アライグマ150、ヌートリア50、カラス200とされています。「くくりわな団地」を設定して食用になる良質なシカ肉の割合を増やすことがうたわれています。

 丹波市の山際の延長は600キロメートルといいます。柵の設置のほか、最近ではバッファゾーンを設ける対策も。
 毎年金属柵20キロ、電気柵20キロずつ整備していく計画となっていました。

 平成26年にオープンした鹿加工処理施設は、年間1000頭以上の処理能力があります。その有効活用には捕獲段階からの適切な処理が欠かせません。

「丹波市農業の現状と課題【2021年版】」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください