ポストコロナ社会へのメッセージとしての水道料金減免

 「新しい生活様式への対応など補正予算を読む」でご紹介した今回の補正予算で、もっとも悩んだのは、水道料金の減免でした。

 いろいろ考えさせられ、仲間とも議論を繰り返し、結果的に賛成しました。

水道料金、too late,too little!

 そもそもなぜ悩んだのか。

 ひとつは、必要とされる巨額の予算に対して政策効果が低いのではないかとの疑念からです。その点を、「too late,too little」と表現して、本会議でも市長に意思決定の妥当性を問いました。

 今回の水道料金の減免、免除されるといっても基本料金(一般家庭では1カ月1,267円)を2か月です。世帯あたりの金額は大きくありません。しかも来年の2月以降と、時期も遅い。それなのにシステム変更料に300万円もかかる。
 予算の総額も8,700万円と、コロナウイルス対策予算としては巨額です。それならもっと必要性の高いところに配分した方が良いのではないか。

 確かに、一部で水道料金減免の要望があることは承知しています。また、兵庫県内では他に水道料金を免除されている自治体があります。

 実はこれにはからくりがあります。
 水道料の免除をしている自治体の多くは兵庫県から水道用の原水を購入しています。そして兵庫県が、3か月分の県営水道料金の免除を行っているのです(参考「兵庫県営水道の料金の免除について」)。つまり自治体としては、水道料を免除した分、兵庫県から免除されるので、負担がなくて良いのです。

 一方で、丹波市は100%自前の水道です。免除分はそのまま水道財政に響きます。

 水道というのは「公営企業会計」として運用されています。これは独立採算制を基本としており、丹波市の一般会計から繰り出すことは原則としてできません(参考「公営企業操出金(総務省)」)。
 つまり、ここで減免すると、その損失分は、将来の水道料金に反映せざるを得ないのです。(今回については、国からのコロナウイルス感染症対策の臨時交付金を充てた上での繰り出しなので、これについては当たりませんけれども。)

 丹波市では現在、コロナウイルス感染症による経済困窮者等を想定して、支払い猶予を受け付けています(参考「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う水道料金・下水道使用料のお支払い猶予について」)。
 資料請求したところ、4月以降、この制度の適用を相談された件数は3件、実際に猶予申請された方は1件でした。
 これからしても、水道料減免の必要性・緊急性が高そうには思えません。

 同じ予算をかけるなら、本当に困られている世帯に全額免除するなど、集中させて行うべきではないか。その方が喜ばれるのではないか。そう思いました。

生活支援よりも未来へのメッセージとして

 それでもなお、賛成したのはなぜか。

 先ほど述べたように、これらの疑問を本会議で市長に問いました。「緊急性、必要性はあるのか、意思決定の妥当性と政策効果はどうか」と。

 答えとしては、「4月以降の水道使用量が2~4%増えていた。これはステイホームの影響と思われ(通常は人口減少の影響で毎年1%ずつくらい減っている)、そこを補てんしたい、これにより生活安定を図る効果を期待する」と。

 ポイントはここかなと気づきました。ステイホーム支援と考えるのであれば、政策的意義はある。
 ウイズコロナ社会、これからもステイホームが求められる場面は多くあります。全世帯に薄く免除する今回の考え方は、生活困窮への支援策としては疑問がありますが、ステイホーム社会を市民と共に生きるメッセージと考えれば、またとない施策です。

 こうした思いを、採決に先立つ賛成討論として、述べさせていただきました。その要旨を以下に掲載しますので、お読みいただければ幸いです。
 複数の同僚議員から「拍手したかった」と言ってもらえたのは、とても嬉しかったです(丹波市議会ではヤジや拍手等は禁止です)。

議案第96号「令和2年度丹波市一般会計補正予算(第7号)」賛成討論

 先立つ委員会で皆さん賛成されたところではありますが、この結論に至るまでの自分自身の葛藤も含めて紹介することで、賛成討論とさせていただきます。

 今回の補正には、新型コロナウイルス感染症対策に関する項目が多く含まれています。なにより注目すべきは、ウイズコロナ、ポストコロナ社会に向けて丹波市がどう取り組むかを示したところです。
 施設における感染症対策やキャッシュレス社会への取り組み、地域活動のオンライン化支援など、ポストコロナ時代の丹波市を築くスタートとなるべき予算と考えます。

 もっとも、一点の曇りもないかというとそうではありませんでした。

 本予算には水道事業会計への8,700万円の繰り出しが含まれています。
 もとより水道事業会計は、公営企業会計として独立予算で組まれています。いくら国庫の裏付けがあるとはいえ、安易に一般会計から繰り出すことは、公営企業会計とした本旨からすれば慎むべきです。水道事業会計の規律を緩めてしまいます。

 加えて今回の水道料の基本料金免除というスキームです。一般的な家庭でおよそ1,300円が2か月分免除されます。実施時期は来年2月以降。本会議質疑でも指摘しましたが、生活支援効果として、これはあまりに遅く小さいのではないでしょうか。
 同じ予算をかけるなら、本当に困られている世帯に、いま全額免除する。それであればともかく、現在のスキームでは、たとえば自動引き落としされている世帯なら、気づかれないまま過ぎてしまう可能性さえ感じます。

 それでもなお、私が本補正予算案に賛成するのはなぜか。

 それは、やはり本会議での質疑で今回の施策の意思決定過程を問うたとき、市長からおおよそ次のような答弁があったからです。

「従来なら人口減少もあって毎年1%程度ずつ減っている水道使用量が、4月以降、逆に2%強増えている。これはステイホームによる影響と考え、その増えた分を還元する思いで決定した。」

 私は、政策決定にあたって、このように具体的な数字、エビデンスを伴って判断することを評価します。
 このエビデンスを示されたがゆえに、今回の施策が、単純に生活支援を行うという意味合いではないことに気づきました。

 本施策は、ステイホームというある種大きな社会実験に参加した市民の協力に感謝する意味合いがあります。
 4月以降の緊急事態宣言に伴う外出自粛は、日本国民に大きな負担を強いるものでした。そうした中にあって、市民に寄り添い、こうした社会実験を耐えてくれた市民に感謝する。
 これから続くウイズコロナ時代においても、ステイホームは新しい生活様式として求められる場面があるでしょう。そうした時代にあって、市民に寄り添い、市民と共に新しい社会を形成する。この丹波市としての決意を示すのが、今回の水道料金免除と考えます。

 そして、こうした丹波市の大きな姿勢を示すものであるがゆえに、その他のポストコロナ社会対策と同じく、一般会計からの繰り出しもやむなしと判断しました。

 冒頭にも述べましたが、本補正予算は、丹波市が今後どのようにポストコロナ社会に向かうかの一歩を記すものです。本補正予算が、新しい未来を築くスタートとなることを期待して、賛成討論と致します。

(2020年9月18日本会議において)

“ポストコロナ社会へのメッセージとしての水道料金減免” への2件のコメント

  1. 素晴らしいです。
    ただ漫然と総論や各論に賛成するのではなく、きちんと首長のアカウンタビリティを引っ張り上げて、明らかにする。これこそが国政にも必要なプロセスだと思います。

  2. ありがとうございます! 国政もそうですが、あげあしとりのようなことではなく、政策決定プロセスを議論できる議会でありたいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください