ナイトタイム・エコノミー考

先の週末は、議案研究を早めに済ませて、北陸方面に視察に出かけました。

目的のひとつが、日本三大朝市のうちの二つを見ること。日本三大朝市というのは、千葉県勝浦の「勝浦朝市」、石川県輪島の「輪島朝市」、そして飛騨高山の朝市(「宮川朝市」「陣屋前朝市」)です。

名神から東海北陸自動車道を経て高山へ。その後北陸道から金沢を経て、のと里山海道を通って輪島へ。途中、翌日からは雪に覆われてしまった白川郷や白米千枚田にも寄ってきました。

今回の目的は、「ナイトタイムエコノミー」の可能性を探ること。

ナイトタイムといいつつ朝市というのが「?」かもしれませんが、木曽崇『夜遊びの経済学』(光文社)には、新宿ゴールデン街(街並み保存)や福岡市の中州(公と民による「共同規制」)の事例とともに、八戸市の「あさぐる(朝ぶろと朝市の組み合わせ)」の取り組みが紹介されています。

ナイトタイムエコノミーというのは、9時から5時の昼間時間以外の時間帯の経済を活性化することが目的です。先の書籍では他にもシンガポールで行われている夜の歩行者天国(「ペデストリアン・ナイト」)やロンドンの「夜の市長」、日本ではカワサキハロウィンなどの事例が紹介されています。夜遊びは苦手なので、ヒントを探しに、まずは朝市をはしごすることにしたのでした。

ナイトタイムエコノミーで雇用を創出する

これからの丹波市の経済を考えると、人口が減少する中、観光消費を雇用に結びつけることが求められます。その際、観光客数を増やすアプローチもありますが、より効果が高いのが、観光客ひとりあたりの消費額を増やすことです。

そのための工夫のひとつが、宿泊を伴って夜の消費を増やすこと。そう考えた時、丹波市内においては、おそらく唯一柏原で夜の経済が成り立つ可能性があるように感じています。

たとえば先の「織田まつり」に合わせて行われた陣屋跡での能楽(メインの写真は開演前の様子です)。夜のカフェで行われるちょっとしたライブ。そんな小さな取り組みがすでにあり、その延長に夜を楽しむ文化を作れないかと考えています。

高山と輪島。ふたつの朝市は、それぞれ対照的でした。

高山はインバウンド(主にアジア系)が多くて、7、8割を占めていた印象です。地元野菜などが並ぶ朝市の会場をひやかしたのち旧市街にいけば、趣のある風情の中に店舗が並んでいて、そちらもにぎわっていました。「飛騨牛」が人気で、串焼きや寿司などの店に行列ができ、地域ブランドとして売り出せるものがあることの強みを感じました。

一方の輪島は、外国人は1割もいなかったと思います。取り扱い商品は海産物が中心。寒い日だったせいもあるのか、お客様はそれほどでもなくて。通りの途中には永井豪記念館がとつぜんあったり、にぎわいは朝市の通りのみ。そしてどのお店も、売込みがなかなか強烈。海に対峙する猟師さんの勢いなんでしょうかね。

まち歩きと交通手段がナイトタイムエコノミーの鍵

朝市の場合もそうだったのですが、ナイトタイムエコノミーの成立に必要なのは、「まち歩きの魅力」です。そぞろ歩きながら、店を何軒かはしごする。バリケードの中を歩くだけの神戸ルミナリエや昨年の渋谷ハロウィンのように、ただ観ること、路上で騒ぐことがメインになってはいけない。多様な趣のある店々を楽しむことが、本当のナイトタイムエコノミーです。

このまち歩きの魅力を作ることができるのが、柏原だと思っています。徐々に店は増えてきていますし、八幡神社に向けて流れる水路をうまく活用すれば、歩くことの魅力を増加させることができます。

能や狂言を楽しんだのち、近くのバーでジャズを楽しむ。あるいはライトアップされた水路を見ながら甘味(大納言小豆ぜんざい)をいただく。そんなオトナの夜遊びができると魅力的です。

それからあとひとつ、ナイトタイムエコノミーに欠かせないのが、「交通」です。ニューヨークやロンドンは、地下鉄を終夜営業にすることで、夜の経済圏を発展させました。

柏原の場合はそこが悩ましいですね。どうしたってJRです。その終電までの時間という制約は仕方ないですね。終電と同じくらいの時間に発車する、青垣や山南方面のバスが一本あるといいかもしれません。

ともあれ、「柏原に夜の経済圏をつくる」という明確な意思を持たないと、こうした文化は育ちません。夜の経済というと、マイナスイメージもあるので、いっそう、それが地域の未来につながるというビジョンが重要になってきます。

地方の都市って、たとえば温泉街にしても、夜は寂しいんですよね。だからあえて、柏原は夜が(も)魅力的なまちにする。そんな思考実験をしてみているのですが、いかがでしょうか。

飛騨高山の「宮川朝市」川沿いの道に店が並びます。

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