昨年12月の定例会での最終日、民生産建常任委員会で不採択とされた「主要農作物種子法の復活に関する請願書」に関し、もう少しじっくりと審議をしてもらいたいと思い、委員会に対しては失礼なことではあるのですが、再付託の動議を出し、可決されました。
この動議自体は、丹波市議会会議則に次のようにあることに基づいたものです。
第46条 委員会の審査又は調査を経て報告された事件について、なお審査又は調査の必要があると認めるときは、議会は、更にその事件を同一の委員会又は他の委員会に付託することができる。
これを受けて民生産建設常任委員会では、3月の定例会に向けて本件の審議を深めていただくことになりました。
新聞報道によると、再付託は丹波市議会始まって以来2回目とのこと。珍しいケースだったんですね。
廃止された「主要農作物種子法」
主要農作物種子法は、昭和27年に制定されて以降、日本の主要農作物である米、麦、大豆に関し、都道府県に原種・原原種の生産や奨励品種指定のための検査等を義務付けることにより、これらの種子の国内自給の確保、食料安全保障に貢献してきた法律です。
これが平成30年4月1日に廃止されました。民間活力を導入し農業の競争力強化を図るなどが理由です。これを受けて、たとえば兵庫県では「主要農作物種子生産条例」を制定(「兵庫県公報 平成30年3月22日」参照)しています。都道府県単位での取り組みが直ちに後退するわけではありません。
一方で、都道府県の努力だけでは、たとえば財政的な理由から優良な品質の種子を保つことが難しくなるのではないか、民間企業の参入が促進されることが、種子に関する知的財産権の国外流出を招くのではないか、などの心配が農業の現場では生じています。
これらの心配を受けて、国会では種子法を復活させる法案を野党が共同で提出し、いわば与野党の対決になっている現状です。(このあたりは野党による法案提出時の「衆議院農林水産委員会会議録」などをご参照ください。)
この現状が、種子法をめぐる議論をややこしくしている側面があります。
種子法復活をめぐる党利党略を超えて
しかし、実際のところ丹波市の請願はどうでしょうか。請願者に名前を連ねていらっしゃる農家の方々は、有機農業に熱心な方など幅広く、与党野党関係ありません。聞いてみると、題名こそ種子法の復活をうたっていますが、請願の趣旨は種の保全や農業の安全保障であり、種子法の復活が主意ではないと言います。
丹波市議会としては、与野党対決の党利党略を超えて、農家さんの不安に寄り添った議論が求められます。
実は、丹波市内の農家さんが不安に思われていることのすべては、種子法の廃止法案に合わせて参議院で可決された「附帯決議」の中で指摘されています。この附帯決議は、自民党や民進党、公明党及び日本維新の会など与野党を超えた共同提案です。(「参議院農林水産委員会の会議録」をご参照ください。)
国会で議論になっている種子法の復活を求めることは、地方分権の流れに逆行することにもなり、疑問があります。たとえば京都府では米、麦、大豆に加えて小豆も対象に加えた取組を行っています(「京都府主要農作物種子生産基本方針」参照)。このように、地域の特性に合わせて種子の保存を図っていく時代かと思います。
一方で、都道府県が財政的困難などから、種子保存をあきらめるようなことがあってはなりません。そこはまさに参議院での附帯決議にあるように、都道府県の取り組みが後退することのないように、国の努力が求められます。
農業の安全を守り、丹波市の未来につなぐ
民生産建常任委員会での請願審査は、およそこうした背景の中でされました。国会での附帯決議があり、兵庫県では条例化されている以上、重ねての意見書を出す必要はないとの考え方が、請願不採択の理由のひとつです。
党利党略を離れるために、今回の請願をいったん不採択とする方がすっきりしたかもしれません。
しかし、市内の農家さんが不安に感じられているのは事実です。その解消を図るためには、もう少し議論を続けたいと思いました。
全国の地方議会での本件に関する議論を調べると、自民党系の会派から発議して、種子法廃止後の体制充実を求める意見書が出されているところも複数あります。請願が出される前に議員発議で出されているところもあり、ぼくとしては、むしろこの問題に関して、請願が出るまで意識がそこまで高くなかったことを恥じています。
※2019年1月21日、委員会での審査についても伝わるよう、最終段落を中心に一部改稿しました。
請願者の一人として、ご意見に感謝します。種子法が廃止されたことさえ知らない方がまだ大勢いらっしゃいます。私たちの暮らしに直結する大事な農と食の問題を是非この機会に一緒に考えていただきたい。そう願っています。一人でも多くの皆さんの声を聞かせてください。よろしくお願いします。
ありがとうございます。今回の経緯、国における与野党対立の文脈にはまってしまったのが残念に思っていました。おっしゃるように自分たちの暮らしに直結することでもあり、その観点から議論を深めるべきテーマであると考えています。