高校生それぞれの…

 先日は母校に応援講師として呼ばれて、いってきました。
 1年生の全生徒が6人程度ずつのグループに分かれて、研究実践するという授業。今回は15名ばかりの社会人先輩が、各自3~4グループを担当して支援するという、1コマの授業でした。

 わずか50分という短い時間でしたが、自己紹介の後、担当する3つのグループが考えているテーマについてヒアリングし、深めていく作業。ケースメソッドの時に使っていたファシリテーション手法を用いて、生徒の考えを引き出しました。

 このディスカッションがぼく自身にとっても刺激的で学びが多いものだったので、ここに記録として残しておきたいと思った次第(板書した内容を写真に撮ることを忘れていました)。

 高校生がどのようなことを考えているか、という記録の一端にもなるかなと思って。

高齢者と産業

 はじめのグループは「高齢者と産業」というテーマをあげていました。
 なぜ高齢者に注目したの? と尋ねると、「高齢者が多くなっているから」と。そこでさらに「どうして高齢者が多くなっていると思うの?」と掘り下げます。
 こういう時、文献等の一般論ではなく、どれだけ「実体験」「実感」に根差していけるかが、テーマに取り組む姿勢に関わると考えています。ですから、そうした立脚点に到達するまで、なぜ? を繰り返します。

 すると、「村の中で高齢者しか見ないから」と。「自分たちのような若い子が少ない」。なるほど、そういう実感が、高校生にもあるわけですね。
 実際のところ、50半ばというぼくでさえ、村の中では「若手」扱いです。そのことを言うと、高校生たちもにっこり笑って、そうそう、という雰囲気。

 もうひとつの「産業」はどういうことでしょうか。
 尋ねてみると、高齢者が元気に暮らすには「産業」が必要なのではないかと。ふむ、ではどういう「産業」でしょうか。
 伝統産業、と答えがありました。「高齢者は伝統的な産業に関わっているのを見ることが多い」と。
 なるほど、高齢者と伝統産業をつなぐことで、村の中に多い高齢者が生き生きと暮らす社会を作れるのではないかと、そう仮定しているわけですね。

 実際の授業ではここまでつながったところで次のグループのヒアリングに移り、3グループの概要を把握した後、個々のグループに戻ったのですが、ここではこのまま続けます。

 そうなるとどんな「伝統産業」がいいのだろう。「伝統産業ってどんなものを考えている?」と尋ねると、ぼくにとって驚愕の回答が!
 有機農業、と来たのです。
 なんと。なるほど、丹波市は有機農業の里として知られています。市立の農学校まで作ったくらい。でも、丹波市における有機農業の歴史って1970年以降のこと。それが「伝統産業」というイメージとなっているのでした。

 いえ、悪いことじゃないんです。むしろ感慨深いことです。
 それで正直に、ぼくにとっての「伝統産業」は、たとえば「檜皮葺」や「丹波布」や「丹波焼」で、有機農業という回答が出てくるとはびっくりだったと言いました。
 檜皮葺って何、と尋ねられたので、ヒノキの皮を剥いで神社の屋根などに葺く、その代表的な企業が丹波市にあることを紹介しました。

 その上で、そうした「伝統産業」は、ある種のプロフェッショナルの世界で、誰もが関われるものでもない。一方でみんなが考えているような「高齢者が関わる産業」というのは、「シニアビジネス」と名付けられたりもして、このところ注目されていることを伝えました。
 一例として紹介したのが、最近地域の中で増えている「コミュニティカフェ」。軽食やコーヒーなどを提供する場ができていて、そういうところでは高齢者が働き、また高齢者が集う場所になっていること。

 さて、そうなると「高齢者と産業」というとき、みんなはどちらの方向で掘り下げていくか。そう尋ねると、「檜皮葺のような伝統産業」と回答がありました。
 そんなわけで、今後に向けた課題として、「いちどそうした伝統産業の現場に行って話を聞いてくること」をあげました。

 授業の終わった後に、グループの一人の子から呼び止められて「高齢者の話を聞くために福祉施設に通っている人たちに話を聞くのはどうだろうか」と声がありました。なるほど、伝統産業の現場より先に、まず一般の高齢者の生の声を聞く。それも課題として良いと思いました。
 ただし、産業と考えると、福祉施設に通っている人は「消費者」ですから、むしろコミュニティカフェなどで働いている「生産者」側の話を聞くのがいいのではないかな、そんな助言をして、終わりました。

 高齢者が「はたらく」場に今後高校生がどのように関わっていくのか。楽しみです。

丹波大納言小豆

 二つ目のグループのテーマは「大納言小豆」でした。なぜ大納言小豆?
 丹波市の特産物だから。それを活かしていくことが大切じゃないかと思うから。
 でも、特産物って他にもあるよね? たとえば黒豆とか、丹波栗など「丹波三宝」と呼ばれているものだとか。そのなかでなぜ大納言小豆なのだろう?

 好きだから、という、これは小さな驚きの回答でした。
 え、そうなんだ。和菓子のイメージだけど、なぜだろう。あんこが好き?
 好き、だそうです。なるほどなぁ。そうか、黒豆は今では枝豆のイメージで、どっちかというとお父さんがビールのおつまみで食べる感じ?(笑) 丹波栗はどうだろう? スイーツとかで使われるけど、あまり食べない? そうか、季節も限られるしね。

 なるほど、こうして考えると、小豆は一定の保存ができるし、調理は大変だけど、折に触れて「あんこ」として口にする機会が確かにあるんだよね。
 ちょっとした発見でした。黒豆のように気軽に(枝豆として)食べられない段階で不利だなぁと思っていただけに、小豆、可能性あるじゃん。

 それで大納言小豆ね。じゃぁ、その大納言小豆をどうしたいの? 尋ねると、「もっと食べられるようにしたい」。
 ふむふむ。生産量を増やすという課題と消費を増やすという課題があるけど、「消費を増やす」ということでいいんだね。

 そこで、まずはひとつ事例を紹介。
 現在、県と市とJAが中心になって行っている戦略会議があって、そこが秋から冬にかけて行っている「丹波大納言小豆ぜんざいフェア」。市内の各店舗でぜんざいを提供するフェアのこと。
 知っている高校生はいませんでした。残念。ともあれ、そうして食べられる場面を増やそうという取り組みをしている。
 ほかに、どんなことをすれば「食べる」場面が増えるかな。

 給食で食べてなかった? という声があって、「え、そんなことあったかな」という会話。
 確かにJAの協力もあって年に1回は、学校給食でぜんざいがふるまわれる日があるんですよね。「そうして子どもたちが口にする機会を増やすのも大切だね」。
 他にはないかな? そもそも、大納言小豆ってどうやって食べるんだろう?

 食べる機会を増やすためには、ぜんざいやおはぎだけじゃなく、小豆を使った食品を増やしていく必要があるんじゃないかな。たとえばJAでは小豆を使ったお茶を作っているよ。
「えー、おいしぃの?」
 これが案外おいしい。他に、食べなくてもいいね。小豆枕なんてのもあるしね。

 このグループには、このような「小豆」を利用した商品にどのようなものがあるか、店頭等で探してリストすることから始めてはどうかと課題を与えました。

経済と過疎化

 3つ目のグループは「人口調査からの考察」がテーマ。ある意味もっとも本格的で、でもそれだけに扱いが大きく難しいテーマです。
 テーマ説明をしてもらうと、「人口減少が進んでいるし経済も元気がない、それを解決したい」という、丹波市が抱えている課題そのまま。

 例によって、質問を重ねます。「人口減少が進んでいる」というけど、どうしてそう感じるの?「自分の村の中でも、人がどんどん減っている」。
 なるほど、たとえば、あそこの家から人がいなくなって空き家になってるとか、そういうこと?「そういうこと」だそうです。

 高校生が肌感覚で人口減少を感じる、ぼくの頃はあまり考えてもいなかったな。今と同じ明日が繰り返されると信じていた気がする。
 教育の影響ももちろんあるだろうけど、それだけ深刻になっているし、それはまだまだ進むことが予測されてもいる。

 じゃあ、経済の方はどうだろう。高校生が経済の衰退を心配するなんて、ずいぶんませた感じだけど(笑)。
 こう問うたことへの回答が驚きでした。ぼくとしては、てっきり近所の工場の人が減っているとか、閉鎖したとか、そういう話と予想していました。

「IT企業とか出てこない」
 おっと、そこに行くか! それってどんな?
 Googleみたいな。
 おお、志高い。
 IT企業のような、これからの成長産業が丹波市に無いことが問題と考えている。この、将来への成長性で経済をとらえる感覚は、ともすると大人は忘れがちで、とても重要なことであると思いました。

 なぜ無いんだろうね。ぼく自身もIT企業を経営していたことがあるけど、地方に立地するときの悩みは「人材不足」でした。プログラマなどの優秀な人材を見つけづらい。

 とはいえ、と、ここで一つ事例を紹介。
 実は、IT企業が次々に立地することで注目されている町もある。徳島県の神山などが代表的。みんな知ってる?

 知らない。
 オーケー、じゃあ、神山町のような先進事例が、どのような経緯でIT企業が集まるようになったのか、調べてみて。そこに何かのヒントがあるかもしれない。ということで、課題を課して、授業は終了。


さて、授業レポートは以上です。
こうして地域と関わっていく授業は、近年高校現場で注目されていますね。人材を育てて都市に送り出すだけの地域じゃなく、将来的に地域に関わる人を輩出したいという思いがベースにあってのこと。
母校では、全6クラスのうち、これまで1クラスが「探究コース」だったのですが、今回の授業は全クラスが関わっています。

これには、「探究コース」の学びを他のクラスでどう活かすか、どう融合させるかという高校としての新しい挑戦が関わっているのでした。
探求コースの生徒たちは、自分たちのテーマを掘り下げ、2年かけて研究論文を仕上げていくのがゴールになります。
一方で他のクラスの生徒は、それぞれのテーマに関連して、地域での実践活動を1年間で行い、その活動レポートを仕上げるのがゴール。

 だから今回の授業でぼくたち講師陣に求められたのは、それら実践につなぐためのヒントを生徒たちに「課題」として与えること。
 そう考えて取り組んだわけですが、いやいや、高校生との対話が楽しくて、いろいろ刺激ももらって、なんか、実践につなぐところまで深められたかと言うとちょっと心もとない。逆にぼくが多く学ばせていただきました。

 ありがとうございました、高校生たち。

 帰り、図書館前に掲げられている、かつてこの高校で講演した講師陣の色紙コーナーに立ち寄りました。
 実は12年前、全校生徒だったかな、を前に話をさせていただいて。その時に認めた色紙です。「田舎を武器に!
 地方にあることを強みにする、そんな社会を作っていきたい。あらためて、初心を確認したことでした。

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