公益通報と不当要求行為

 「職員倫理基準をどこまで拡げるか」で、丹波市の「法令遵守の推進等に関する条例」の改正について問題点を指摘しました。
 ただ、改正のポイントはふたつあり、もう一つの改正については必要なことと考えています。

 それは、2022年6月の「公益通報者保護法」の一部改正を受けた変更です。

公益通報者保護制度の改正

 公益通報者保護法の法律改正の要点は消費者庁による「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)」に分かりやすいです。次のような要点ですね。

  1. 事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすく
    ・事業者に適切な対応窓口を義務付け(従業員数300人以下の場合は努力義務)
    ・行政措置(公表)を追加
    ・内部調査従事者が秘密を漏らした場合刑事罰
  2. 行政機関等への通報を行いやすく
    ・住所氏名を記せば有効
    ・財産に関する損害などを追加
  3. 通報者がより保護されやすく
    ・退職者(1年以内)や役員も追加
    ・刑事罰だけでなく行政罰の対象事案でも保護
    ・通報に伴う損害賠償責任を免除

 丹波市の条例改正は、「職員等」の定義に関するもので、この3つ目の退職して1年以内の者にも対象を広げるという改正です。

そもそも公益通報って何だ?

 ところで、そもそも公益通報って何でしょう?

 やはり消費者庁による「地方公共団体における公益通報者保護制度の運用について」を参照しながら、要点をまとめます。

 公益通報というのは、勤務先で知った不正行為を通報することを言います。
 改正された公益通報者保護法の第2条の定義の要点は次の通り。

  • 労働者(退職後1年以内まで)または役員が
  • 不正の目的ではなく
  • 勤務先における
  • 刑事罰や行政罰の対象となる不正を
  • 上司や行政機関または報道機関等に
  • 通報すること

 ここにおいて、上司に通報することを「内部通報」と呼称し、行政機関や報道機関等に通報することを「外部通報」と呼称します。

 その上で、こうした公益通報を行った人を保護しようとするのが、公益通報者保護法です。
 具体的な保護の内容は、解雇の無効や、降格や減給、配置転換や嫌がらせなどの不利益な取り扱いを禁止しています。

法律改正を受けて退職後1年以内の人も対象に

 丹波市の条例改正では、以下のように「職員等」の定義の変更が提案されています。

  • ア 職員
    この定義に非常勤特別職も含めたわけですが、その問題点については「職員倫理基準をどこまで拡げるか」で指摘した通り
  • イ 市から事務又は事業を受託した者並びにその役員及び従事者
    →市から事務又は事業を受託した者が行う当該事務又は事業に従事している者
  • ウ 指定管理者並びにその役員及び従事者
    →指定管理者が行う市の公の施設の管理の業務に従事している者
  • エ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律に基づき市の業務に従事している者
    →(法律名が変わったので変更)
  • オ 公益通報の日前1年以内にアからエまでのいずれかの者であった者
    →(追加)
  • カ 受託者の役員及び指定管理者の役員
    →(追加)

 ここに追加された、退職後1年以内の人にあわせ、「通報者」の定義にも、退職後1年以内まで含むなど変更があります。

不当要求行為って?

 丹波市の法令遵守条例は、不当要求行為についても定めています。
 不当要求行為の定義は次の通り。

(11) 不当要求行為等 次に掲げる行為をいう。
ア 暴力行為、恐喝行為その他社会常識を逸脱した手段により要求の実現を図る等の不当な要求をする行為
イ 威圧的又は乱暴な言動により他人に嫌悪の情を抱かせる行為
ウ 正当な理由もなく面会を強要する行為
エ 正当な理由又は手段によらずに寄附金、賛助金等の寄附、機関紙等の書籍若しくは物品の購入又は工事の計画変更、工事の中止、下請の参入若しくは物件等の補償その他の金銭若しくは権利を強要する行為
オ 正当な手続によることなく、作為又は不作為を求める行為
カ 職員以外の者が職員に対し、その職務に関し、特定の団体又は個人を他の者と比べて有利に取り扱う等特別な取扱いをすること(不作為行為を含む。)を求める働きかけをする行為
キ 職員への嫌がらせの電話、誹謗中傷するビラ等の配布、自宅周辺での迷惑行為その他プライバシーを侵害し、又は不当な圧力を与える行為
ク 前各号に掲げるもののほか、庁舎等の公共施設の保全及び秩序の維持並びに職員の事務又は事業の執行に支障を生じさせる行為

丹波市法令遵守の推進等に関する条例第2条

 職員は、これらの行為があったときには、これを拒否するとともに、直属の上司に報告しなければならないと、続く12条で定められています。そして、報告を受けた上司はその記録を法令順守審査会に提出しなくてはなりません。

 なお、新しく追加される特別職(議員除く)については、不当要求行為があった場合は、やはりこれを拒否し、その内容を本人自身で記録した上で、直接審査会に提出しなくてはなりません。

審査会からその後の流れは?

 では、公益通報や不当要求行為の記録を受け取った審査会はどうするのでしょうか。

 公益通報については、受理するかしないかを決定し、その結果を市長及び通報者に通知します。
 受理した場合は速やかに調査し、市長等に報告します。市長等はその結果に基づき、必要な措置を講じることになります。

 不当要求行為の記録提出があった場合は、審査会で調査し、その結果を市長等に通知します。市長等は、事実確認を行い、必要に応じて氏名公表等を行うことができます。

 今回は公益通報と不当要求行為についてまとめました。

 職員倫理の遵守規定と、これらの規定は、条例を分けた方がすっきりしそうな気がしています。
 余談ですが、市長・副市長・教育長や議員についての倫理規定は、それぞれ次の条例で定められています。

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